GoogleのIPOに関連してコメントさせていただいております買収防衛策ですが。
資本構成が必ずしも安定的でない企業の経営者にとっては、IPOすることによって買収を防止するために労力を払い続けなければならないというのは非常に苦痛です。
程度問題ですが、経営トップのパワーの(例えば)8割をそのために使わないといけないとすると、どうでしょうか。
社長は何もしないでも毎年どんどん業績が上がっていくなんて会社はそうはないですし、ましてや、非常に競争も激しいネット系企業であれば、他社動向を察知し、事業を拡張する陣頭指揮に注力したほうが、本質的な企業価値は上がるはずです。
例えばIPOで20億円調達して、社長が事業に注力できないことにより年間3億円の機会損失があったとしたら、15%の金利を払ってるのと同じということになります。経済合理性から考えれば、別の資金調達方法を考えたほうがいいかも知れませんわね。
こうした「労力」は、株主(特に大株主)に対して「うちの株を持ち続けた方が得ですよ」と説明することなので、きれいに言えば「IR」ということになります。
しかし、抽象的なガバナンス論では「会社は株主のもの」かも知れませんが、実務的にはインサイダー規制で特定の株主に対して開示できる情報は厳しく制限されてます。(このように、会社の場合、「所有者」に一番キモの情報をしゃべれない、というところが、単なるモノの所有とは全く異なります。)
株主をつなぎとめるためには、開示されてない一番「キモ」の情報をしゃべりたいところですが、その情報を話すことができない。
資本構成が必ずしも安定的でない場合、経営トップはそうした制約の中で、株主をつなぎとめていかなければいけません。
(「きれいごとはいいけど、実際どーすんのよ?」という感じですね。)
ということで、そうしたことに労力を払わずに済む有効な企業買収防衛策があったら、手を伸ばしたくなるところではあります。
今朝の日経朝刊1面下に、西村ときわ法律事務所の武井 一浩弁護士らによる、(ずばり)「企業買収防衛戦略」という本の広告が載ってました。
武井 一浩、太田 洋、中山 龍太郎 (編著) 商事法務(2004/04)
広告によると、「日本型ポイズンピルの導入に向けて実務家必読!」だそうです。(早速、Amazonで発注してみました。)
(以上)
<目次>
第1章 企業買収防衛戦略の必要性と正当性——近時の状況と日本企業の特殊性を踏まえて(武井一浩)
企業買収防衛戦略とは何か/敵対的買収の手法/現在の日本における敵対的買収をめぐる環境/敵対的買収の果たす意義/敵対的買収がもたらす弊害/企業買収防衛策と内容のバランス論/敵対的買収から無防備状態にあること自体の経営非効率性
第2章 企業買収防衛策の法的論点と実務上の諸問題——一連の商法改正と日本型ポイズン・ピルの導入を視野に入れて(武井一浩/太田 洋/中山龍太郎)
企業買収防衛策の種類/ポイズン・ピル(ライツ・プラン)/日本型ポイズン・ピルの設計/ポイズン・ピル導入の日本法上の諸論点/会社利益の判断権者と買収防衛策のバランス論
第3章 米国におけるポイズン・ピルの「進化」とその最新実務(太田 洋/中山龍太郎)
第4章 米国におけるポイズン・ピル以外の企業買収防衛戦略と日本への示唆(太田 洋)
第5章 敵対的企業買収に対する対抗策の基礎(松井秀征)
第6章 企業買収防衛策をめぐる理論状況(森田 果)
第7章 パネル・ディスカッション 日本型ポイズン・ピルの導入に関する法的諸問題
(江頭憲治郎/大杉謙一/手塚裕之/保坂雅樹/内間 裕/太田 洋/中山龍太郎/武井一浩)
[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。