10日も経っていて非常に遅レスで恐縮ですが、ソフトバンクさんのモバイル事業証券化の詳細が17日にリリースされていたので、備忘メモ。
移動体通信事業のリファイナンスに係る取締役会決議のお知らせ
http://www.softbank.co.jp/news/release/2006/061117_0001.html
(出所:同リリース、クリックで拡大ページに飛びます。)
詳細はさておき、ブログ等で、
実態は変わらないのに、スキームを変えただけで金利が安くなるわけが無い。(ソフトバンクは、どこか他の部分で”損”してるはず。)
というようなことを書いてらっしゃる方もいらっしゃるようです。
以下、ソフトバンクさんから離れて一般論として、ですが:
証券化すると(何も失わずに)調達コストが下がるということは非常に一般的に見られる現象かと思います。
細かい説明はさておき、簡単に図示すると、
といったように、返済の優先順位に差をつけた場合、最も優先順位が高い部分は、相当高い確率で資金が返ってくるので、最高の格付けを得ることが出来て、金利は安くなる。
このため、加重平均したコストは、優先順位に差をつけずに「ドンブリ」で(いざ破綻した場合、他の債権者と横並びで)借りる場合に比べて、加重平均で安くなりえます。
つまり、マグロでも、身を全部ミンチにして売るよりは、「大トロ」「中トロ」「赤味」「中落ち」等、部位に分けて販売したほうが、一匹(本)合計で考えると高く売れるのと同じ(と言えるかも)。
例えば、5億円借りるといった(少額の)場合には、「コハダ」みたいなもんで、各部位に分ける手間の方が大変なので、部位に分けて売られることは無いし、買う需要もないわけです。しかし、100億円単位の資金ともなると、話は別。特に、ソフトバンクの場合、1.45兆円という「超巨大マグロ」ですので、「切り分け」の手間は誰でも喜んでやりたいところでしょう。
(事務コスト1.45億円かけて1ベーシス(0.01%)にしかならないわけなので。)
(ではまた。)
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「証券化すると(何も失わずに)調達コストが下がるということは非常に一般的に見られる現象です。」
の、「何も失わずに」の部分ですが、
「表面上は、何も失わずに」です。
ドンブリに比べると、
シニアやメザニンにはcovenantsが入ってくるので、
株主資本コストは上がっているはずですが。
証券化ということは携帯事業が生み出すであろうフリーキャッシュフローはソフトバンクの株主に帰属しないということですよね。
つまりソフトバンクの株主にとって携帯事業の事業価値は0円ですね。
この企業は何考えてるのかさっぱりわかりませんw
>ソフトバンクの株主にとって携帯事業の事業価値は0円
携帯事業を営む会社にソフトバンクが出資していればその投資価値が膨らむわけではないのですか?ナンセンスな質問だったらスミマセン。。
「証券化すると(何も失わずに)調達コストが下がる」
ということも実際あるようですね。
他方、日本では銀行がやたらに安い金利で貸出競争をしている結果、証券化なんかするよりも銀行借入のほうが安い、ということが発生する企業も多数あるようです。銀行の審査の観点で優良に見える一部大企業〜中堅企業などで、そのような現象が見られるようです。
証券化で利益が出るのも、新BIS(Basel2)導入まででしょう。
新BIS後は、証券化をした場合の規制必要資本の合計は、原債権プール全体の規制必要資本より必ず大きくなりますからね。
みなさん、コメントありがとうございます。(いろんな確度から考えるのに非常に参考になります。)
>シニアやメザニンにはcovenantsが入ってくるので、株主資本コストは上がっているはずですが。
covenantsによるオプションバリュー的な隠れたコストが証券化による表面金利コストの唯一の理由、なんでしょうか?
投資家別のリスクとリターンの選好の違いによって、トランシェを分けた方が「ドンブリ」よりもうまい条件になりうるという要因は無いのかどうか。
(このへんを、経済学的、統計的に説明する能力は、私の分を超えるのですが。)
>つまりソフトバンクの株主にとって携帯事業の事業価値は0円ですね。
「一般大衆」さんのおっしゃるように、ソフトバンクさんにとっては、エクイティ部分の投資約2000億円分のダウンサイドリスクがありますが、一方でアップサイドも期待できるわけで、それらの確率的な将来予想の現在価値を考えると、必ずしも事業価値ゼロということにはならないと思います。
>証券化なんかするよりも銀行借入のほうが安い
証券化やってらっしゃる方からも、そういった嘆きは伺います。
「銀行自体が、(出来の悪い)超巨大証券化商品なんじゃないか」てなことをおっしゃる方もいらっしゃったりして。
>証券化で利益が出るのも、新BIS(Basel2)導入まででしょう。
これは、「新BISの影響を受ける銀行等が」、ということでしょうか?一般の企業の資産を証券化する際には、新BISって影響するんでしょうか。(あまり考えたことなかったですが。)
(ではまた。)
ソフトバンクが必死な理由は「財務制限条項」にあった
先週になりますが、週刊東洋経済11月25日号がソフトバンクの借金の条件をスクープしています。旧ボーダフォン日本法人の買収資金、1兆4,500億円の証券化…
有名なモジリアニ=ミラー理論によると、財務構成によって企業価値は影響を受けないはずです。従って、企業全体の資本コストは変化していないはず。ということは、もし負債部分のコストが下がっているならば、
・株主資本コストがその分だけ上がっている
・節税効果など、切り分けによって実は企業収益に影響を与える効果が発生している
・市場が効率的でない
のいずれか(もしくはその組み合わせ)ということになるかと思います。
>有名なモジリアニ=ミラー理論によると、財務構成によって企業価値は影響を受けないはず
これは、書かれてらっしゃるとおり、「市場が完全に効率的であれば」という仮定が付くわけですよね?
現実の世界では、格付け別の資金運用の需給等に、ひずみが存在するので、トランシェを分けることによって、資金調達コストが下がる(ことがある)のではないかと想像してるんですが。(このへん、理論的に説明するのは、前述の通り、私の分を超えてきますけど。)