小規模事業者へのブログの影響力

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うちの奥さんと白金台の裏路地で見つけたレストランでランチをしたお話。
民家を改造して、こじゃれた和風の作りになってるレストランで、内装・外装や小物などもなかなか楽しませていただき、サービスや笑顔もいいし、価格も千円台。自然食な感じで結構おいしかったなあ、と私ら夫婦は思ったわけです。帰ってから店の名前でググって見たところ、検索結果の上から3番目に匿名の食べ歩きブログがあって、そこには、写真や文章で詳細に料理やインテリアを紹介した後、決めぜりふとして、

そんなにおいしくない。
値段ばかり高くて中途半端でアタマに来る。(大意。)

との評が。
値段や味についての感じ方は人それぞれなので、もちろんブログを書いた方を責めているわけではありません。が、大企業ならともかく、ちまたの一個人経営的レストランにとっては、そういう評がGoogleの検索結果で一番上に来ちゃうのは、致命的打撃なのも確かでしょう。
平日の雨上がりで、それほど人通りが多くない道に面していることもあるかも知れませんが、ランチタイムなのにお客さんが他に2人くらいしかいなかったという状況がネットもかなり影響しているのかも知れないと考えると、非常に恐ろしいというか かわいそうというか。
私はそれなりにうまかったと思うし、その評を読む前は、「もう一回、行ってもいいかな」モードだったわけですが、「そんなにおいしくない」と言われてしまうと、実際のところ、もう一回行く気はかなり減退いたします。
結構うまかったとは思いますが、千円台のメシで「人生観が変わるほどうまい」はずもないわけで、ムキになっても理論的な反論はできないですし、他の人もコメントを書きづらいはず。
となると、最初に詳細にコメントを書いた人やGoogleのpage rankの高い人の意見が、ネット上で、いつまでも表示され続けることになる可能性は高い。(特に、客数の多い大通り沿いの店というよりも、レピュテーション勝負の路地裏系の店。)
(また、そうした意見をヘタに「コントロール」しようとすると、ネット上で「炎上」するリスクもあります。)
「そういう、アンコントローラブルかつ事前予測不能なのがconsumer generatedなmediaの特性なのだ。」、と言うのは たやすいですが、有名な料理評論家に酷評されるならまだしも、どこの誰ともわからない人のブログの意見で客足が減るのでは、自分の店を持つのが夢で、こつこつ資金を貯めて多額の投資をして後戻りできないような店主は、泣いても泣ききれないですよねえ・・・・・・てなことを思いました。
(ではまた。)

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19 thoughts on “小規模事業者へのブログの影響力

  1. 掲示板の時点でもそうでしたが、いわゆるCGMにおいて風評被害のようなものはより範囲と破壊力を増しています。おそらくは単一の評価対象に関する記述が多数併存する状況を作り出さないと機能できないでしょうね。あるいは消費者がもっと広範囲に情報を収集するような流れでしょうか。

  2. おっしゃるように、「単一の評価対象に関する記述が多数併存する状況」の場合はいいわけですよね。
    問題は、流動性の低い小型株と同じく、「多数併存」しない状況の場合に、その情報が必ずしも客観的な情報と考えられないような場合・・・なわけで。「うーん・・・」であります。

  3. 判断に個人の主観が伴うので「風評被害」とまで大げさではないかと。ただネガティブ情報のほうが、発信・伝播されやすいのは事実。好感発言は「宣伝だ」と言われたりもする。ネガティブ情報が口コミで伝播するのは今に始まったわけではない。
    見ている人は「不味いお店」より「おいしいお店」の情報を知りたいはず。匿名のネガティブ情報は、自然淘汰されるような気がする。

  4. >kirinさん
    いや、おっしゃる通りなんですが、自然淘汰されるには元々の情報の数が少ないんです。こういったケースの場合。

  5. どんな店でもメニューによって味のばらつきがあるのは仕方のないことでしょう。うまいものもあればそこそこのものもあるだろうし。一つでも「そこそこ」の品があればネガティヴな批評がネットによって拡大されるのも仕方がないとすればこれは残酷な話です。市場が収穫逓減と収穫逓増のバランスによって成り立っていてネット社会はそれをさらに加速するものだとすると、この世界は非常に面白くなると同時に、さらに理不尽な世の中にもなるんだなあと思った次第です。

  6. 小規模事業者へのブログの影響力

     isologue – by 磯崎哲也事務所 に この記事 がありました。
    うちの奥さんと白金台の裏路地で見つけたレストランでランチをしたお話。(…

  7. ブログを書くことの責任

    小規模事業者へのブログの影響力というエントリーより。 値段や味についての感じ方は人それぞれなので、もちろんブログを書いた方を責めているわけではありません。…

  8. これ、普通の感性で考えると、名誉毀損・誹謗中傷・営業妨害ではないですか? 一度通り過ぎてきた議論ですが、インターネットの力が増すにつれ、リアルに影響が出るようになると、捨て置けない問題になってくると思います。

  9. TB元の記事などでも言及されていますが、こういった不特定多数の他者からの代表によるコントロール(ポジティブ、ネガティブどちらでも)とのバランスをとるために自ら積極的に情報を発信していく「必要性」がでてくるのでしょうね。
    情報伝搬においては攻めも守りのひとつってことで。
    >おかしくない?さん
    「名誉毀損・誹謗中傷・営業妨害」はもっともな話なんですが、それで情報流通が硬直化してしまうのもまた問題だと思います。

  10. WEB2.0時代に沈黙は「悪」である

    磯崎さん発の議論に便乗。 web2.0の時代において、はっきりしているルールは、「沈黙は悪」である、と。我々はみんな「参加せよ!」「発言せよ!」「データはすべて

  11. >「そんなにおいしくない」と言われてしまうと、実際のところ、もう一回行く気はかなり減退いたします。
    純粋に疑問なんですが、どこの馬の骨とも分からない赤の他人の評価を見ただけなのに、そんなに強力に感情に影響されるのはどうしてですか?
    もし「その食べ歩きblogの他のエントリーを見て、自分の味覚に近い感覚を持ったので信頼する根拠が有る」などの腑に落ちる理由があれば納得です。
    そうでないとしたら、個人的にはかなり不思議な感覚です。
    だって自分とは違う人が酷評していたとしても、本人が多少は気に入っていたのなら、それは味覚の違いなだけでは? と思うからです。
    その「他人の意見には影響されるもんだ」という前提について知りたい。

  12. 生活上のいろいろな意思決定って、必ずしも「強力に影響され」なくてもブレるんじゃないでしょうか?というのが本稿の言いたいところなわけです。
    白金台って、私はそんなに通らない場所ですし、世の中には他にケチのついてない店がいっぱいあるので、そっちに行ったほうがいい。
    「銀座久兵衛」とか「招福楼」とか「ロオジェ」とかであれば、ムキになって「いや、絶対うまい」とか「おっしゃるように、確かに、そういう面もあるかも」とか考える気にもなるけど、他にいくらでもある程度の店だったら、そもそも、そのためにあまり時間を使って深く考える気もしません。
    人生、すべてのことを熟慮して意思決定をしているわけではないので、ほんのちょっとしたことで意思決定が左右されることはあるでしょう。
    家や車を買う場合には熟慮しても、スーパーで大根を買う場合には、ちょっと曲がってるとか短めだとか、ほんの些細なことで影響されて、ほとんど深く考えずに決めてるんじゃないでしょうか。
    ましてや、スーパーの大根売り場で、隣のオバハン達が、「この間、○○農協の大根買ったら、おいしくなかったのよー」と話していたら、とりあえず、別の大根にしときます。(大根の選択に命賭けてないので。)

  13. なるほど。丁寧にありがとうございました。
    「人間は全ての意思決定に多大なコストをかけていられないので、あるレベルで思考停止して、ささいな情報を鵜呑みにする傾向が有る」という現実があるというのは同感です。
    つまり「ささいな情報」と「ささいな情報」の戦いが、その気軽さと比較したら、深刻な影響を与えがちだよね。という話がこのエントリーの趣旨だと解釈しました。

  14. 逆に言えば、幾つかのSEOされたBlogで過度にほめすぎない程度の好意的な印象を書いていけば自力で風評を作れるという可能性もありますよね。
    個々の飲食店がそこまでやることはないにしても、ぐるなびのような店舗情報掲載代理サービスがあることを考えると、そうした作業自体を商売にする業者が出る可能性も無きにしもあらずかなと思います (blogger割引のある飲食店なんてのも出たら面白いですが)。
    更に本当にこうした風潮が進むと、今度は「信頼できる舌の人による評判」や「十分に多数の評価が集まった情報」が評価されるようになるというローテーションをするのかも知れませんが。

  15. (遅ればせながらこのエントリに気づきました。)
    それはかわいそうなお店ですね。
    それでは是非、逆にここで、その店の名前を出してあげてはいかがでしょう。こちらを見た沢山の人が、検証をしに行ってみることになると思いますが・・・
    情報が流通し始めたら、逆にそこで止めないで流通させることで、収まるべきところに収まってくる、という考え方もあると思います。私は、どちらかというとそちらに賭けてみたい方です。

  16. 超マイナー事象と、wiki、市場メカニズム(小規模事業者へのブログの影響力:その2)

    先日の私のエントリ「小規模事業者へのブログの影響力」については、思いのほか、いろ…