ちょっとレスが遅くなりましたが、Stanfordロースクール留学中のtaka-mojitoさんからトラックバックいただいたVenture Capital Negotiationの授業風景。
Venture Capital Negotiationとマスターズ
http://vosne-romanee.jugem.jp/?eid=162
(いつもたいへん参考になります。ありがとうございます。)
Kliener Perkins Caufield & Byers のJohn Doerr氏がゲストでしゃべったり、ノーベル賞をとったブラック−ショールズ式のScholes氏が講演したりするスタンフォードのロースクールに対して、中大のロースクールで学生のみなさんにベンチャーキャピタル実務やオプションバリューに熱い興味を持っていただくべき担当者が私、というのは・・・・・
なんか私、世界一荷が重いロースクールの教員じゃないかという気がしてきました・・・・。
また、学生のみなさんが司法試験に直結しない実務的な話にどこまで興味を示していただけるものなのか探り探りやっていく必要があると思いますので、とりあえず今のところ、「みんなでexcelのワークシートまわして、Full Ratchetの破壊力にびっくりしていただく」といったことまで授業でやる予定もないですが・・・。
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さて、上記のtaka-mojitoさんのエントリに出てくるような、Liquidation PreferenceやAnti-Dilutionなどの条項がたんまりついたPreferred Stock(種類株式)による「欧米か」的ベンチャー投資スキームを日本で最初に行ったのは、私の知る限りでは渡辺千賀さん(というかネオテニーさんというか西村ときわさんというか)じゃないかと思ってまして、私、渡辺千賀さんを「日本のpreferred stockベンチャー投資の母(もとい、姉)」と心の中でお呼び申し上げているのですが、
2000年前後には、「ああ、日本もシリコンバレー的なVCや実務がガンガン増えていくんだろうなあ」と思っていたら、なぜか、今でも証券系、銀行系等のVCさんのシェアが非常に大きいですし、「4X Participating Liquidation Preference」といったコッテリした条項がついた投資も非常に少ないんじゃないかと思います。
これは、日本でベンチャー企業が大企業をも出し抜ける確率の問題(相対的なベンチャーの数と質)や、founder側VC側の「ややこし系ファイナンス」に対する理解度、それをサポートしてくれる法律実務家の層の薄さと結果としてのリーガルフィーの高さ、株式市場における資金の出し手の違いやそれによる資本政策的配慮の違い、等、いろんな要因があると考えておりまして、
結果として日本では、一つ一つの投資案件にドカンと張ってそれに対するリスクヘッジを詳細に設計しハンズオンするよりも、比較的少額の資金を多数のベンチャーに分散投資する戦略の方が成功することになってしまったからじゃないかと思っております。
でも、ベンチャー界における種類株の実務も(案件は多くないですが)それなりに定着してきたし、普通株であっても投資契約はそれなりにきっちり締結されるようになってきたので、母(姉)など先人達のご尽力もあって、この数年で日本の実務もそれなりに前進はしていると思います。
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ちなみに、スタンフォードのこってりした授業に比べるとお恥ずかしい限りですが、私が2001年ごろに「INTERNET MAGAZINE」でネット系の人向けに書いていた「コーポレートファイナンス入門」という連載のVenture Capital Negotiation的なお話。
http://www.tez.com/corporatefinance/CF_3.htm
今見ると、「当時の日本の一般的な実務」と「将来日本もこうなるに違いないという願望」が(半分意図的ですが)ごっちゃになってる面がなきにしもあらずですが。
(ではまた。)
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母でございます。いやぁ、アレは大変でした。投資先がなまじ英語ができる人だったんで、
「full ratchet」
というニュアンスが伝わりまくってしまい。最近シリコンバレーは、景気も回復してきたので、さすがに一時期のこってりぶりはなくなってきているようです。
アメリカで最近破綻してきてるのが、sub-prime mortgage(クレジットスコアが悪い人向け住宅ローン)。2割がデフォルト、なんていうすごいことになってきてます。ベンチャーとは全然関係ありませんが。
日本のベンチャーキャピタルはどうなのか(調査中)
日頃は閑古鳥が鳴いている自分のブログのアクセス数がガッと上がったので、何があったのかと見てみると、どうやらIsologueからのお客様が大量にいらっしゃっ…
磯崎さん、記事とトラックバックどうもありがとうございます。
トラフィックを通じて、フルラチェットの破壊力ならぬ、Isologueの影響力を感じさせていただきました(笑)。
新たに別の関連記事をアップしましたので、ご笑読いただければ幸いです。
「コーポレートファイナンス入門」の記事については、実はこっそり拝読しておりました。最近、ネットで調べものをすると、磯崎さんや千賀さんのブログに行き着くことも多く、しかもぼくが今になって「ふむふむ」などと思っていることを随分前に書かれていたりしていつもすごいなあと思っております。
全然関係ありませんが、以前ブログにも書いたように、先日一時帰国時に羽田から成田の移動の途中で東京駅で途中下車して桜を見に行ったのですが、そのときに、磯崎哲也事務所はこの辺かななどと郵船ビルの3階付近をじろじろと眺めてみました。実は2000年から2001年にかけて、某所から日本郵船さんに出向(研修?)に行ったことがございまして、しばらく横浜にいたのですが、本社ビルにも1か月いました(もちろんまだ磯崎事務所は郵船ビルにはなかったわけですが。)。ちょうど丸ビルは建て直し中で、骨組みができたところでした。ということで、郵船つながりという点でも勝手に親近感を感じていることのカミングアウトでした。
母さま、taka-mojitoさま、どうもです。
>郵船ビルの3階付近をじろじろと
2階の屋根がルーフバルコニー的になっているので、私の区画は地上からは見えにくいんです。
先日、「勇午」というマンガで和田倉橋?あたりから郵船ビルを見ているシーンがあったんですが、その角度からが一番見えやすいかも知れません。
>本社ビルにも1か月
そうでしたか。
郵船さん、もーかってらっしゃるので、ブルーンバーグさんがごそっと抜けたのを機に、現在うん十億円かけて、内装や水周り、エレベータなどを大改修中です。
先日、4月からリプレースされたエレベータが一部稼動しだしたんですが、速いこと速いこと!
全米不動産協会(NAR)が・・
ぐっちーさんところにトラックバックしようとしましたが、受け付けてらっしゃらないのかな。 いや、何って、全米不動産協会(NAR)が「今年の一戸建て住宅の価格…