日本のロースクール版Venture Capital Negotiation

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

中大ロースクール(中央大学法科大学院.)で講義している「ベンチャービジネスと法」。
今回は、「投資家との交渉、ファンドの実務」というお題。


日米のベンチャーキャピタルの業態や投資行動の違いなど、まさにtaka-mojitoさんのエントリにあったリンクの資料を最大限に活用させていただきました。どうもありがとうございました。
加えて、昔撮影したシリコンバレーの風景やベンチャーキャピタルの集積地Sand Hill(スタンフォードのすぐ横ですが、まるで長野の高原のよう)の風景、
P427s.jpg
こんなんや
P432s.jpg
こんなんなどをプロジェクターでお見せしたりもして、学生のみなさんになんとか日米のベンチャービジネスのイメージを持っていただこうという、日本のロースクールの授業としては、ちょっと変わった授業にしてみたんですが。
・・・ある程度予想はしてたものの、結果として出席数は過去最低の模様。いつもは寝ている人ほとんどいないのに、今回は寝ている人も続出でありました。
授業後に学生に聞いたところ、「今日の授業ほど、温度差の激しい授業はなかったんじゃないでしょうか。興味ある学生はメチャクチャ興味あるけど、興味ない学生は全く興味なかった模様。」とのことです。
今までは、司法試験に直接関係ない内容にしても、会社法の条文と関連付けたりしてたんですが、今回は思い切って全くそのへんを意識せず(スタンフォードのロースクールでは、こんな感じでやってるのではないの?という妄想を込めながら)授業してみたんですが、ちょっとハイブロー過ぎましたでしょうか。
いや、むしろ、「日本の会社法の種類株式で、4倍の参加型残余財産優先分配権(4X Participating Liquidation Preference)を実現するとしたら、どういった内容の要項にしますか?」といった問題を出したほうが、食いつきがよかったかも知れない。
−−−
当日朝9:00から、ちょうど大手VCの方々とのミーティングがあったので、VECさんの統計にあった、「日本のVCの種類株式の利用率は金額ベースで2割程度」という数値について、「そんなに使われているようには思えないんですが?」と聞いてみたんですが、
「いやー。多くて5%くらいでは?もしかしたら当社でも金額の大きな案件は優先株で投資しているのかも知れないが、私の回りではほとんどやってない。」
とのこと。
「やはり種類株式にすると手間がかかる。ハンズオン型のVCなら、一件の案件に時間をかけられるが、一人で何十件も担当する日本の大手VCでは、案件ごとに種類株式の条件を細かく詰めていくのは相当困難。また、種類株式の内容は、定款(&登記簿)にも記載されるので、万が一書いていることと違ったことをやってしまった場合、二者間の投資契約と違って治癒するのも大変。そういったモニタリングもハンズオン型でないと難しいので、かえって公開できないリスクを高めてしまうことにもなりかねない。」
とのことであります。
なるほど。
投資の圧力とベンチャーの資金需要のバランスとか、優先株で投資する場合のリーガルフィー(弁護士さんの層の薄さ)の問題かと思っていましたが、(ま、それと表裏一体とも言えますが)、
ハンズオン型の投資が増えないと、優先株での投資は増えないんですね。
2割という数字は、トラックバックいただいたグロービスさん等、ハンズオン型VCさんとの加重平均で、ということでありましょう。
(ということで、授業では、Liquidation PreferenceとかFull RatchetのAnti-Dilution Provisionとかは、「そんなんもあります」程度のお話にとどめておきました。)
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

1 thoughts on “日本のロースクール版Venture Capital Negotiation

  1. あー、よく見ている風景ですね。ちょっと先に行くと280のインターがあるとかいうところまでイメージできます(笑)。
    ロースクールの授業で生徒さんを惹きつけるのは大変そうですね。こういう話は現状ではビジネススクール向けかもしれませんね。
    VECの優先株式2割という数字は、ぼくも見たのですが、どうも今ひとつ鵜呑みにできないなあという感覚です。金額ベースでの20%で、件数ベースだとどれくらいというのが掴めないですしね。
    で、件のペーパーを書くために(無事提出済)、昨年度のマザーズ新規上場会社40社の新規公開時目論見書をざっとさらったのですが、40社中、公開直前に大株主上位10位にVC又はVCファンド(と合理的に判断できるところ)が入っている会社が25社(投資額は様々で、本当にちょっとしか投資していないところも含む。)、そのうち優先株式を使っている会社は1社(Gaba Corporation)、残り24社は優先株式を使った形跡がない(公開直前は普通株のみであり、増資の経緯を見ても(登記簿までは見ていませんが)開示書類から分かる限り過去にも優先株式を発行していない)という感じです。Gabaについても、無議決権、転換権なしの優先株でしたので、VCでいう優先株というのとはちょっと違いました(銀行が発行した優先株のイメージ)。
    ヘラクレス、JASDAQは見ていませんし、M&AがExitだった場合についても把握していません。加えて、IPOには数年かかることを考えると、昨年のIPOは数年前の仕込み分なわけで、最新の動向(現在の投資)とはずれがあるかもしれません。
    以上の留保付きですが、ぼくの感覚も「優先株は、ほとんど使われていないんだなあ」という感じです。
    現在、卒業をかけての試験期間中なのであれですが、ペーパーを書く過程で調査して分かったこと、感じたことについては、そのうちブログにアップすることにいたします。
    取り急ぎ。