先日、予告させていただきましたとおり、優先株式での投資が多そうなVCさんの投資先の登記簿をインターネット登記情報提供サービスで片っ端から閲覧して、どのくらい優先株式で投資されているものなのか、またどういった内容の種類株式が使われているのか、日本ではまだ多いとは言えない種類株式によるベンチャー投資の実務を垣間見てみたいと思います。
(本日の中大ロースクールの授業[大杉先生の回で、テーマはズバリ”種類株式”]の復習と、次回の私の回の授業の準備を兼ねさせていただいております。)
ちなみに、今回取り上げるのは、ネットワーク関係の機器を作っている会社で、
- 非累積・非参加型の優先配当権
- 参加型の残余財産分配権
- 種類株主総会で2名の取締役選任権(普通株主の種類株主総会では7名。)
- 一般的(特別決議事項など)な拒否権
等が付いているケース。
以下、登記簿の「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」の欄の記述(インターネット登記情報提供サービスの登記簿の画像データからOCRで読み取っている文字なので、誤字脱字はご指摘いただければ幸いです。)と、それについてのコメントです。
(登記簿に載っているので公開情報なわけですが、個別の会社について論ずるのが目的ではないので、社名は伏せさせていただきます。)
1.優先配当金
(1)当会社は、定款に定める剰余金の配当を行うときは、A種優先株式を有する株主(以下「A種優先株主」という。)又はA種優先株式の登録株式質権者(以下「A種優先登録株式質権者」という。)に対し、普通株式を有する株主(以下「普通株主」という。)又は普通株式の登録株式質権者(以下「普通登録株式質権者」という。)に先立ち、それぞれの事業年度ごとに、分配可能額のうち、1株につき、A種優先株式の取得価額(当初金 5万5000円。但し、A種優先株式につき、株式分割、株式併合、株式無償割当て又はこれに類する事由があった場合には、適切に調整される。)に年3%を乗じた金額に取得と引換えに交付すベき普通株式の数を乗じた金額を上限として剰余金を金銭により配当する(配当される金銭を以下「A種優先配当金」という。)。
(2)ある事業年度においてA種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対して配当する剰余金の額が 1.(1)に定めるA種優先配当金の上限額に達しないときは、その不足額は、翌事業年度以降に累積しない。
( 3 )A種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対しては、A種優先配当金の上限額を超えて配当は行わない。
いわゆる「非累積」「非参加型」の優先配当権がついてます。
ベンチャー投資の場合、基本的に「配当目当て」ということはまず無いので、ここは基本的には「あまり重要でない」項目ではあると思います。
「累積」(優先配当を決められた額支払わなかった場合には、翌年にその不足額を累積させる)の場合、配当は「義務」ではないはずなのに、ベンチャー経営者側は、なんか負担が毎年積み重なっていくような重苦しい気分になるんじゃないかという気もしますので、ベンチャー投資の場合、「非累積」は正解だと思います。
一方、この優先株式の場合、当初取得価額の5.5万円の3%まで優先配当を払えば、それ以上、優先株主に払わなくていい「非参加型」になってるんですが、これは「?」ですね。
(創業者が投資額の5%の配当をもらってるのに、ベンチャーキャピタルが3%で我慢する必要はないはず。)
公開前に配当するベンチャーというのもイケてない気がするので、どーでもいいかも知れません。
2.残余財産の分配
(1)当会社は、残余財産の分配をするときは、A種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対し、普通株主又は普通登録株式質権者に先立ち、A種優先株式1株につき金5万5000円(但し、A種優先株式につき、株式分割、株式併合、株式の無償割当て又はこれに類する事由があった場合には、適切に調整される。)を支払う。
( 2 ) (1)の分配が完了した後、なお残余財産が存する場合には、A種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対しては、 2 (1)の分配のほか、普通株主とともに残余財産の分配を行う。
いわゆる「参加型」の残余財産分配権がついてます。
ベンチャー投資なので(銀行への公的資金投入などとは違うので)、当然と言えば当然であります。
また、「4X Participating Liquidation Preference」といったシリコンバレー風のアコギな条項にはなっていないところも要チェック。
ただし、完全に「お人よし」というわけではなくて、まず投資額の5.5万円を回収して、さらにその残りを普通株主と分け合うことになってます。(優先株式と普通株式をそれぞれ1株とカウントするのか、調整が入るのか、やや具体性を欠く記述のようにも思えますが、優先株式を普通株式に転換した株式数で分配したりするんでしょう。)
VCの持株比率が仮に3分の1だとすると、VCは、元からあった自己資本とVC投資後に増えた自己資本の3分の1ももらえるわけです。
ベンチャー投資の場合、ツブれて清算するような場合には何も残らないことが多いので、残余財産分配権はどうでもいいケースがほとんどではないかと思います。
ただし、たとえば別の企業にバイアウトを行うことになった場合に、単純に株式を売却するのと、事業譲渡して会社を清算するのだったら、VCとしては事業譲渡+清算の方が取り分が多くなっちゃいます。
このへん、税の関係で買収側としては合併・会社分割・株式交換など別のスキームを取りたいのに、VCとして事業譲渡を選択したい、というような場合、利害が分かれて困るので、優先株式の普通株式への転換条項あたりで「スキームに対して(極力)ニュートラル」な調整条項などを工夫する必要が出てくると思われます。(後述。)
上記の図は、資本金1000万円の会社にVCが5億円投資して34%の議決権を取ったという仮設例ですが、会社の事業が正味12億円で売れた場合に、普通株だけで投資していたらVCには4億円しか行かないので1億円損するわけです。
しかし、上述のような優先権が付いていた場合には、まず5億円はしっかりと回収し、残りの8億円も2:1で山分け、ということになれば2.7億円の儲けということになりVCも投資した甲斐があった、ということになります。
もうちょっとマイルドにするなら、
「出資比率で分配しましょう。ただし、優先株主の取り分が5億円を切る場合には、5億円まではVCにくださいね。」
という参加型の条件も考えられます。
ただ、それだと上記のケースではVCは出資した同額の5億円しか回収できなくて、創業者等普通株主が7.9億円も儲かるわけですから、VCは慈善事業になっちゃいます。
(創業者もVCも儲かる可能性があるバイアウトのケースなのに、もしそういう条件だとすると、VCは「もうちょっと売るのを伸ばそう」と、拒否権を行使したくでしょうね。)
逆に、ここで仮に3倍のParticipating Liquidation Preferenceがついていた場合には、15億円まではVCのモノになりますから、上記の例だと創業者には1銭も金が行かないことになります。
3.議決権
A種優先株主は、普通株主と同様に、株主総会においてA種優先株式1株につき1個の議決権を有する。
優先株式で投資するようなVCはハンズオンしたいに決まってますから、当然、議決権制限株式のわけは無いです。
4.種類投票株式
(1) A種優先株主は、その種類株主総会において、2名の取締役を選任することができる。
(2)普通株主は、その種類株主総会において、7名の取締役を選任することができる。
(読んで字のごとく。)
5.拒否権
当会社が以下の事項を行うためには、取締役会又は株主総会の決議に加えて、A種優先株主の種類株主総会の決議を得るものとする。
a )会社の目的、商号、本店所在地、発行可能株式総数の変更又はその他定款の変更
b )資本金の額の減少
c )自己株式の買受
d )株式の分割、併合、無償割当て又は種類変更
e )剰余金の配当
f )合併、株式交換、株式移転、会社分割、買収又は資本提携
g )営業若しくは事業の全部若しくは重要な一部の譲渡、譲受、休止若しくは廃止、又は新規事業の開始
h )解散又は清算
i ) 事業年度の変更その他会計方針の変更
j ) 当会社の取締役又は当会社の取締役が総株主の議決権の過半数を保有する会社との間の取引
k )当会社の運営、財政状態、経営成績又は信用状況の点で当会社の存続に重大な影響を与える契約の締結又は変更
「f」項の「買収」に注目。(定義がちょっとはっきりしない。)
この会社は当然株式の譲渡制限がついてますので、「買収」に該当する株式の譲渡を行う場合に、取締役会決議だけでなく、A種優先株主の種類株主総会の決議が必要になってくると考えられます。
「種類株式でboard sheetについて定める場合と投資契約で定める場合との違いを述べなさい。」というような問題を考えてみるのも面白いかも。
ちなみに、この優先株式の要項は、会社法が施行された18年5月1日付けで変更されて登記されてます。(それまでは、登記簿上、「種類株主総会の決議を要する事項に関する定め」という項に登記されてました。)
6 .株式の併合又は分割、募集株式の割当てを受ける権利等
(1)当会社は、株式の分割、併合又は無償割当てを行うときは、普通株式及びA種優先株式の種類ごとに同時に同一割合でこれを行う。
(2) 当会社は、株主に募集株式の割当てを受ける権利を与えるときは、普通株主には普通株式の募集株式の割当てを受ける権利を、A種優先株主にはA種優先株式の募集株式の割当てを受ける権利を、それぞれ同時に同一割合で与える。
これ、銀行の公的資金投入のときの優先株式や新株予約権など、議決権の無いものの要項を見慣れた方は「おやっ?」と思うかも知れません。
株式の分割や併合などは、普通株式への転換数で調整すればよくて、分割で種類株式の株式数を増やす必要があるのか?という気が一瞬する方もいらっしゃるんじゃないかと思いますが・・・違います。
ベンチャーキャピタルの場合には、ハンズオン(口出しする)ことが重要ですので(というか、そう考えるVCさんが種類株式で投資されることが多いでしょうから)、経済的な持分は調整されても議決権が減ってしまうのではダメなわけです。
下記7は、旧商法時代は「転換予約権」として定義・登記してあったもので、会社法施行にあわせて「普通株式を対価とする取得請求(プット・オプション:ただし条件付)」と定義・登記しなおしたものです。
7.取得請求権
(1)取得請求によって交付すべき株式の内容
A種優先株主は、当会社に対し、発行に際して取締役会の決議で定める取得を請求し得ベき期間中、当該決議で定める取得の条件に従い、A種優先株式の取得を請求(以下、本要領中において「取得請求]という。)することができる。
この場合、当会社は、A種優先株主に対し、かかるA種優先株式の取得と引換、当該時点において有効な取得価額で除して得られる数の普通株式を交付する。
(2) 第1回A種優先株式の取得の条件
a) 当初取得価額
取得価額は、当初、1株につき金 5万5000 円とする。
b) 取得価額の調整
I.A 種優先株式発行後、以下に掲げる事由が発生した場合には、それぞれ以下のとおり取得価額を調整する。
� 株式の分割により当会社の普通株式を発行する場合、以下の算式により取得価額を調整する。但し、以下の算式においては、当会社の保有する当会社の普通株式(以下「自己株式」という。)の数及び株式分割により自己株式に割り当てられる株式の数を含まないものとする。
調整後取得価額=調整前取得価額 × 株式分割前発行済株式数/株式分割後発行済株式数
調整後の取得価額は、株式分割のための基準日の翌日以降これを適用する。
� 当会社の普通株式の株式併合を行うときは、株式併合の効力発生の時をもって以下の算式により、取得価額を調整する。但し、以下の算式においては、自己株式の数は含まないものとする。
調整後取得価額=調整前取得価額 × 併合前発行済株式数/併合後発行済株式数
(併合の場合には、「調整後の取得価額は、株式併合のための基準日の翌日以降これを適用する。」と入っていないのはなぜでしょうか。)
� 株式の無償割当てにより当会社の普通株式を発行する場合、以下の算式により取得価額を調整する。但し、以下の算式においては、自己株式の数を含まないものとする。
調整後取得価額=調整前取得価額 × 株式無償割当て前発行済株式数/株式無償割当て後発行済株式数
調整後の取得価額は、株式の無償割当てのための基準日の翌日以降これを適用する。
� 2004 年 11 月1日以降、調整前の取得価額を下回る金額をもって当会社の普通株式を発行又は自己株式を処分する場合、かかる発行又は処分における1株当たりの払込金額又は処分価額をもって調整後の取得価額とする。なお、調整後の取得価額は、払込期日もしくは出資の履行をした日の翌日以降、又は株主割当日がある場合は、その日の翌日以降これを適用する。但し、本�による取得価額の調整は、A種優先株式の発行済株式数の過半数を有するA種優先株主がかかる調整を不要とした場合には行われない。
この�項は、よく見る既発行株式との加重平均による調整ではなく、増資時の株価まで下げられてしまうという「full ratchet」だという点に注意。
「但し、本�による取得価額の調整は、A種優先株式の発行済株式数の過半数を有するA種優先株主がかかる調整を不要とした場合には行われない。」とありますが、怖い条項です。
会社が最悪の状況になって、A種優先株式で投資したVCは「追加支援はしない(やーめた)」と匙を投げた場合に、別の投資家Bが「A種優先株主がこの権利を行使せず、希薄化を受け入れるなら投資する」というような場合を想定すると、自動的には調整されない道(「A種優先株主がかかる調整を不要とした場合」)を作っておくことは重要。
� 調整前の取得価額を下回る価額をもって当会社の普通株式の交付と引換えに当会社に取得される株式を発行又は処分する場合、かかる株式の払込期日もしくは出資の履行をした日に、又は株主割当日がある場合はその日に、発行又は処分される株式全てが当会社に取得されたものとみなし、かかる株式の1株当たりの取得価額をもって、調整後の取得価額とする。調整後の取得価額は、払込期日もしくは出資の履行をした日の翌日以降、又は株主割当日がある場合は、その日の翌日以降これを適用する。但し、本 � による取得価額の調整は、A種優先株式の発行済株式数の過半数を有するA種優先株主がかかる調整を不要とした場合には行われない。
種類株式を発行する場合もケアしてるわけですね。
� 新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを含む。以下同じ。)の行使により交付される普通株式1株当たりの払込金額(会社法第 236 条第1項第 2 号に規定される。以下同じ。)が調整前の取得価額を下回ることになる新株予約権を発行する場合、かかる新株予約権の発行日に、又は株主割当日がある場合はその日に、発行される新株予約権全てが行使されたものとみなし、当該交付される普通株式1株当たりの払込金額を、調整後の取得価額とする。調整後の取得価額は、その発行日の翌日以降又は割当日の翌日以降これを適用する。但し、本�による取得価額の調整は、当会社又は当会社の子会社若しくは関連会社の取締役、監査役、従業員又は顧問に対してストック・オブション目的で発行される普通株式を目的とする新株予約権を発行する場合には適用されないものとする。また、本�による取得価額の調整は、A種優先株式の発行済株式数の過半数を有するA種優先株主がかかる調整を不要とした場合には行われない。
新株予約権の場合もケアするけど、ストックオプションの場合は適用除外としているところが、ちょっと「やさしい」ですね。
通常は、税制適格ストックオプションにするため時価以上の行使価格にすると思われますが、VCが投資したときより時価が下がる可能性はあるわけです。
VC側に立てば、「企業価値 下げといてストックオプション発行してんじゃねー」という考え方もあるでしょうから、他の条項と同様、「A種優先株式の発行済株式数の過半数を有するA種優先株主がかかる調整を不要とした場合には行われない。」としておくだけでもいいような気がします。
一方、経営者側に立つと、ストックオプションの発行量というのは、(気が確かなら)発行済株式数のせいぜい20%まで(通常、追加的には数%程度)でしょうから、full ratchetで、下がった時価までA種のすべての取得価額が下がるというのは、インパクトも大きく、恐ろしすぎるかも知れません。
II .上記1に掲げた事由によるほか、次の � ないし � に該当する場合には、当会社はA種優先株主及びA種優先登録株式質権者に対して、あらかじめ書面によりその旨並びにその事由、調整後の取得価額、適用の日及びその他必要な事項を通知したうえ、取得価額の調整を適切に行うものとする。
� 合併、株式交換、株式移転、会社の分割、若しくは資本金の額の減少のために取得価額の調整を必要とするとき。
� � のほか、当会社の発行済普通株式数(但し、当会社が保有する当会社の普通株式の数を除く。)の変更又は変更の可能性を生ずる事由の発生によって取得価額の調整を必要とするとき。
� 上記I.� に定める株式の取得請求可能期間が終了したとき。但し、当該株式すべてが取得された場合を除く。
� 上記I.� に定める新株予約権の行使期間が終了したとき。但し、当該新株予約権すべてにつき行使請求が行われた場合を除く。
�の組織再編等の場合ですが、前述のとおり、「持株比率に応じた単純な組織再編だとVCの取り分が少なすぎるじゃん!」という場合、この条項を使えば、取得できる普通株式の数を調整してVCの取り分を多くできるような気もします。
ただ、清算の場合と同様に調整する場合、普通株式数を当初の4倍にしないといけない、といったようなことも起こる可能性があるわけですが、投資契約等、他にどこにもそういったことが書かれてないと、常識的に「取得価額の調整を適切に行うものとする」の「適切に」の範囲に収まるのかどうか微妙な気も。
また、(なぜか)こちらには「買収」というのが入っていません。単純に株式を売ってバイアウトする場合には、前述のデッドロックが発生する可能性があるかも。
組織再編は、A種優先株主(総会)に拒否権があるわけですから、VCにゴネられたら結局売り時を逃がす可能性も出てくる。アコギな条件にシブシブ従わざるを得ず、「あんなにがんばったのに創業者の取り分はスズメの涙(トホホ・・・)」といったことも考えられます。
別途投資契約で考え方を定めておくのでもいいかも知れませんが、修羅場でのトラブルを避けるために「残余財産分配の場合と同様の効果が得られるように」といった「考え方」を優先株式の要項に書いておいたほうが親切な気がします。
また、優先株式の要項にボンヤリとしか書いてなくて、VCと経営者で合意した額に恣意的に調整した場合、所得税法上、相続税法上の問題もちょっと心配。
VCに投資しているのが法人等だけならどうでもいいかも知れませんが、優先株式で投資をしたのが個人または個人が出資しているファンドだったり、創業者から投資家への無償(低額)譲渡などとみなされると話がややこしいかと。(要詳細検討。)
III.取得価額の調整に際して計算が必要な場合は、円位未満小数第 2 位まで算出し、小数第 2 位を四捨五入する。
IV.取得価額の調整に際し計算を行った結果、調整後取得価額と調整前取得価額との差額が1円未満にとどまるときは、取得価額の調整はこれを行わない。但し、その後取得価額の調整を必要とする事由が発生し、取得価額を算出する場合には、調整前取得価額はこの差額を差引いた額とする。
V.取得価額の調整が行われる場合には、当会社は、関連事項決定後、A種優先株主又はA種優先登録株式質権者に対して、その旨並びにその事由、調整後の取得価額、適用の日及びその他の必要事項を通知しなくてはならない。
c )取得と引換えに交付すべき普通株式数
I.A 種優先株式1株の取得と引換えに交付すべき当会社の普通株式の株式数は、次のとおりとする。
A種優先株式1株の取得と引換えに交付する普通株式数=A種優先株式の1株当たりの払込金額/取得価格
但し、A種優先株式の1株当たりの払込金額は、A種優先株式につき株式分割、株式併合、株式無償割当て又はこれに類する事由があった場合には、各比率に応じて適切に調整される。
「無議決権型」の場合と異なり、前述のとおり例えば3分割したらA種の株式数も3倍に増えているわけですから、分母が3分の1になるだけでなく分子も「適切に」調整しないと、3分割しただけなのに株数が9倍になっちゃうわけです。
II.取得と引換えに交付すべき株式数に1株に満たない端数が生じた場合には、会社法に定める株式併合の場合に準じてこれを取り扱う。但し、1株の100 分の1未満の端数が生じた場合には、これを切り捨てる。
( 3 )第1回A種優先株式の取得を請求し得べき期間
2004 年 5 月 6 日以降とする。
8.取得条項
(1)当会社は、A種優先株式の発行日から 2 年以上経過した日であって、当会社が当会社の発行する普通株式につき証券取引所への上場申請を当会社の取締役会において決議した日において、その前日までに取得請求のなかったA種優先株式をすべて取得する。この場合、当会社は、A種優先株主に対し、かかるA種優先株式の取得と引換えに、当該時点において有効な取得価額で除して得られる数の普通株式を交付する。
(2) 8.(1)に定める普通株式の数の算出に当たって、1株の 100 分の1未満の端数が生じた場合には、これを切り捨てる。
(3) 8.(1)における取得価額は、株式分割、株式併合、株式無償割当てその他A種優先株式の発行に関する取締役会決議において定めた事由が発生した場合には、当該決議において定める算式により調整することができる。
8は、会社側からのコールオプション(「公開するから普通株式に変えさせてくれ」)ですね。
(ご参考まで。)
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