今年2004年は、ネットと金融のクロスオーバーする領域が熱い年になるはず、と思います。
前回、「ネット×金融」の領域が盛り上がったのは、もちろん1999年の証券ビッグバンの年で、この年に、現在の主要なネット証券各社が続々とオンライン証券事業に参入しました。
前回は、インターネットの普及が本格的になってきたことを背景にしながら、証券業が免許制から登録制に変わり手数料が自由化されるという大きな制度の変更が変革の引き金となりましたが、今回は、ブロードバンドの普及という背景を背負いながら「証券仲介業制度」が導入されるというところが大きいかと思います。
証券仲介業制度は、証券会社でない個人や法人が証券仲介業の登録を受けることにより証券会社の仲介業者となり、証券取引の勧誘や証券会社顧客の証券取引の仲介をすることが可能になる制度です。
証券仲介業となるのは、いわゆるFP(フィナンシャルプランナー)的な人(FPの他、会計事務所や保険代理店など)が、まずイメージされますが、実際どうでしょうか?
このインターネット時代に、顧客が税理士事務所や保険代理店の人に「この株を買って」と指示を出すというのはちょっとイメージしにくい・・・ですよね。実際には、発注は顧客がインターネットで直接するけど、手数料の一部が「アフィリエイト(紹介)フィー」的に証券会社から仲介業者にキックバックされる、というイメージの方がしっくり来るかと思います。
やはり、一番証券市場にインパクトを与えうるのは、700兆円の資金を顧客から預かっている「銀行」が証券仲介業に参入することでしょう。銀行窓口で株を買うというのはあまりイメージわきませんが、オンラインバンキングの画面であわせて株や投信なども買えるようになれば、顧客にとっては非常に便利ではないかと思います。
そして、もう一つの目玉が「ネット系企業の金融参入」かと思います。
楽天がDLJディレクトSFG証券を買収したり、ライブドアがイーバンク銀行に出資し日本グローバル証券をTOBで買収したり、という動きがすでに始まっています。(となると、当然、「最大手ポータル」と「取引量最大級のオンライン証券」の組み合わせなんてのが注目されるわけですが。)
証券仲介業制度をうまく利用すれば、ネットのページビューの多いところから金融サービスにうまく顧客を誘導できる可能性がありますし、また、資産家や高額所得者に対してクロスセルで金融以外の高額商品等を紹介するチャンスが増えます。
現在、ネットをよく使う層と金融サービスをよく使う層は、年齢層や所得層がかなりズレています。また、ネット証券の手数料は既存の証券会社に比べれば激安ですが、それでもネットのECなどでの客単価や購買頻度に比べれば、ネット証券の客単価や取引頻度は格段に高いので、ネット系企業の収益性を大きく跳ね上がらせる可能性があります。
(でも実際やってみたら、まったくの水と油だったということもあるかも知れません。)
もうひとつ、意外に勝敗に影響するのが、金融業としての「コンプライアンス対応」のノリをネットビジネスのノリと融合させられるかどうか、ではないかという気がします。
実際、ネット証券の大手はすでに年間数兆円から十数兆円の証券を取引する存在になっています。手数料率はだいたい各社0.1%前後なので、売上として損益計算書に記載されているのは数十億円から百数十億円のオーダーですが、実際にその背後にある取引や金の流れは、その千倍もの量があるわけです。となると、何かちょっと間違いがあるだけで非常に大きな影響が出ますので、当然、それに対する法令などのレギュレーションも厳しく、監督官庁の検査もきついことになります。
例えが適切かどうかはともかく、ネット系の企業というのは、車で言えば走り屋が峠でレースをしているようなところがあって、よく言えば「自由競争的」、悪く言えば、あまりルールがどうこうというところから考える習慣が(一般には)ないわけですが、
一方の金融業界というのは、公式レースのようなもんで、まず法令・レギュレーションありきで、エンジンの排気量からガソリンタンクの容量まで厳しくチェックされ、走行の過程もすべてオフィシャルに監視されてます。よく言えば法令順守感覚がしっかりしているが、悪く言えば「共産主義国家的」というか、ルールを離れた自由な発想をするという習慣が(一般には)なかったり、そのわりに峠の走り屋を軽く見てる人も(中には)いたり。
(どなたとは申しませんが)もともと公式レースで実戦経験がありながら峠の走り屋に転進された方とか、峠の走り屋出身で公式レースに参戦される方とかが、このまったく対極の「ノリ」をどう融合していくかが、今年のレースの最大の見所じゃないでしょうか。
この領域、年明け早々から火花散ってます。
(あんまり書くと、あちこち差し障りが出るので、このへんで。:-)
ではでは。
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