先日、ベネチアに行った際にサンマルコ広場を通りかかったら、たまたま「ベネチアとイスラム展(Venezia e l’Islam 828-1797)というのをやってました。
これがなかなかすごい。公式パンフレットは、ちょっとした地方中核都市の電話帳くらいの厚さがあります。準備の研究のコストと時間もハンパじゃなさそう。ただ、イタリア語でそんな分厚い本を買ってきても読めないので、上記の薄め(32ページ)の英語版を買ってきましたが。
タイトルにも入っている「828年」というのは、ベネチア人たちがアレキサンドリアに埋葬されていた(という)聖マルコの遺体を盗み出して、ベネチアに持って帰って来ちゃった年。
ティントレットの作品「聖マルコの遺体を盗み出すヴェネチアの商人たち」(下図、1562年頃)にも、このシーンが描かれてます。上記の英文パンフレットの説明でも、「Appropriation by the Venetians of the presumed relics of St Mark, stolen from Alexandria, Egypt」と書かれていますが、堂々と「盗んできました」というものが、その都市の最も中心に据えられているというのもスゴいセンスですな。
「そんなこと言ったら、他のヨーロッパの都市の美術館だって略奪品だらけじゃないか。」とおっしゃるかと思いますが、「1人殺せば犯罪者だが100万人殺せば英雄だ」じゃないですけど、戦争や植民地支配でごっそり略奪してくるより、1つだけ盗んでくる方が、なんとなくナニな感じがするので不思議なもんです。
というわけで、昔はイスラムとキリスト教が今より仲がよかったなんてことは申しませんが、会場には、ベネチアの使節団がイスラムを訪問する絵などもあり、イスラムとイタリアはビジネスベースで深い付き合いがあったということが伺われます。
(メディチ家が栄えたのも、当時誰も使ってなかったアラビア数字を複式簿記に採用したからだ、という説があります。確かに、ローマ数字だと「MCMLXXXIII」のように桁がバラバラになってしまうので、足し算する気もおきない・・・。)
中でも最も感動的だったのが下記の椅子。
St.Peter’s Throne(聖ペテロの玉座)と題されてます(11〜12世紀のもの、とされているので、使徒のペテロが座ったわけではなさそうです)が、よく見ていただくと、装飾にアラビア文字が使われているだけでなく、中心に描かれているのは(ユダヤ教の)ダビデの星のように見えます。つまり、この椅子1つにキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の要素が仲良く同居しているわけですね。
宗教や国家の違いによる暴力的関係を排して、人々がビジネスベースで行き来できる世界が実現することを願ってやみません。
(ではまた。)
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ここは酷いイカリングですね
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