やっと出た!「三角合併」(と、日本企業の未来)

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本日、日経1面。

米シティ、日興を完全子会社化、来年1月にも上場廃止、初の三角合併方式。
 米シティグループは二日、傘下の日興コーディアルグループを完全子会社化すると発表した。(中略)
子会社化の手法では日興株主にシティ株を割り当てる株式交換方式を採用。五月に外国企業に解禁された三角合併の事実上、初の事例となる。シティは本体が東証に上場する計画も明らかにした。(中略)
 三角合併は国境をまたいだM&A(合併・買収)をする際に、合併や買収の対価として現金ではなく、株式を使う手法。

(国境をまたがなくてもいいですけどね。)
「初の事例」に、「事実上」、が付くというのがどういう意味なのか、というところですが、未公開企業などで今年5月以降、三角合併を使ったところはあるんでしょうか?


 
最近、日本のベンチャー企業のマインドもグローバル化が進んできまして、
「日本で起業したが、やっぱり世界を目指してアメリカに本拠地を移して、アメリカのVCから投資を受けたい。」
てな相談を受けることもポツポツ出てきました。
(いいぞ!Boys, be ambitious!)
自分ひとりでコツコツ何かやってただけなら、「移せば?」というだけの話なのですが、すでに、そこそこのキャッシュフローを生む事業が立ち上がっていたり、valuationの違うラウンドで既にベンチャーキャピタルから資金調達しちゃってたりすると、法人にも創業者にも投資家にも税金がかからないように海外の法人に実質的にその事業を移すというのが難しくなってきます。
そういうときに、
「ジャーン!今年5月からは三角合併が使えるようになって、一定の要件を満たせば、税務上も適格になるんですよ。」
と言いたいところではありますが、弁護士さんも税理士さんも司法書士さんもやったことが無いということは、作業時間がその分増えるということでして、作業時間が増えるということは、フィーも高くなるということで。日本とアメリカでそれぞれ数人ずつ弁護士や税理士が付いて何ヶ月も作業、といったことになると、とても駆け出しのベンチャー企業が払える金額ではなくなって来ますので、結果として、「他の方法を考えるほうが現実的だ」、ということになります。
今後は、シティさんや日興さんから出るプレスリリース等をつぶさに読み込むことで、どのへんがコツなのか、どういう問題が発生するのか?等が徐々にわかってくるでしょう。
そうした「スキーム構築コスト」が下がれば、日本でそこそこ育ってきたベンチャーが、アメリカのVCから投資を受けて世界で羽ばたく、てなケースもちょっとは出てくるかも知れませんね。
ま、実務が定着してくるのは少なくとも1年以上先になるでしょうし、外国の会社になったから必ず成功するというわけでもない。
マスコミや世間はそういうケースが出てくると、「優秀な企業の『国外流出』」てなことを言い始める気もします。
でも、「流出」じゃなくて「グローバル化」であって、「世界に羽ばたく」ってことですよ。
「日本の中だけでしか商売する気なし」なんて企業しか出てこない世の中だったら、北○鮮とさして変わらないわけでして、どっちにしろ21世紀に残れる国にはなるわきゃない。
(ちょっと気が早いですが)今後は、ガチンコで「制度間競争」して、より使いやすい会社法、証券法がある国、より企業が仕事しやすい仕組みがある国が生き残る、ってことじゃないかと思います。
買収防衛策を導入するのに株主総会決議をとらないといけない国、次々に新しいことをやる活気のある会社ほど自社株買いやストックオプションの株を売却がインサイダー取引になっちゃう国、何百ページの法律を読み込まないとファンドも作れない国・・・・というのが、はたして生き残る国になるんでしょうか?
(ちなみに私、うちの小学生の息子2人は、ぜったいアメリカの大学に行ってもらうつもりでおります。昨今の日本の状況を見るにつけ、「孫の代」まで幸せに暮らしてもらうには「外の空気」を吸ってもらうことは不可欠だと思われるので。)
(ではまた。)

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4 thoughts on “やっと出た!「三角合併」(と、日本企業の未来)

  1. 三角合併ではなく単なる株式交換なので、「事実上」とこじつけたのではないでしょうか。

  2. 「合併等(合併、会社分割、株式交換)の対価の柔軟化」の利用ということで、
    合併ではないにもかかわらず、一般に分かり易い「三角合併」の用語を使った
    ものと思われますが、正しくないと思われます。
    それで、いくらか良心的な新聞社は(笑)「事実上」をつけたのではないでしょうか。
    ちなみに4日の東京新聞の記事を見ますと「三角株式交換」との用語も使われています。
    「三角合併」のミスリードよりはいいのかも。

  3. コメントありがとうございます。
    でも、日本語として素直に読むと、「事実上」というのは、「合併」じゃなくて「初の」にかかるんじゃないのかなあ。