週刊isologue(第318号)全米ベンチャーキャピタル協会契約ひな型(役員補償契約編その1)

今回は、9つある全米ベンチャーキャピタル協会の契約ひな型集の最後の文書、役員補償(免責)契約についてです。ついに雲の切れ間に山頂が見えてまいりました。

今の日本ではまだ、投資家の代表がベンチャーの社外取締役になるケースは少ないし、なったとしても、ベンチャーとは良好な関係にあることが多く、訴訟などの形で紛争が表面化する事例はほとんどゼロではないかと思います。しかし、コーポレート・ガバナンス、コンプラ、セクハラといった他の社会規範と同様、ベンチャーの領域においても今後、日本も徐々に米国の様相に近づいていくと思いますし、「そもそもベンチャーの役員になるということによって、どういったリスクや負担が生じうるのか」といったことについて整理するためにも、この契約書のひな形は参考になるのではないかと思います。 

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目次とキーワー

  • ひな型作成者によるイントロダクション
    • 取締役就任者個人の補償と派遣元ファンドの補償
    • デラウエア州会社法145条(取締役、執行役員、従業員、代理人等への補償に関する規定)
    • デラウエア州会社法102条(b)(7)項(取締役を金銭的な責任から保護する定款の規定)
    • 補償契約を締結する意味
    • 取締役に対する補償と執行役員に対する補償の違い
    • 取締役と執行役員を兼務する(CEO)などの場合
    • 会社による補償とD&O(役員責任)保険の意味
      • 会社の意思決定との関係
      • 会社が支払不能になった場合
      • 法や行政(SEC)が認める補償の範囲との関係
  • 契約書冒頭部(WHEREAS Clause)
    • なぜこの契約書で補償を定める必要があるのか
      (人材確保とインセンティブ、リスク、株主の利害)

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スタディプラスに出資いたしました

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フェムトグロースキャピタルから、朝日新聞社さんといっしょに、スタディプラス株式会社に合計1.85億円を投資させていただきました。

(ご参考: TechCrunch記事CNET記事THEBRIDGE記事

学習管理プラットフォーム「Studyplus(スタディプラス)」は、(ほとんど広告等を行っていないにも関わらず)現在の利用者は110万人超、大学受験を希望する高校3年生の3人に1人が利用しており、高校生がよく使う勉強系アプリのNo.1 (リクルート進学総研「高校生価値 意識調査 2014」調べ) に成長しているサービスです。

社長の廣瀬さんは、小さいころから起業に興味があり、日本テクノロジーベンチャーパートナーズの村口さん、レオス・キャピタルワークスの藤野さん等と2010年に行った「起業を増やさナイト!」というイベントに、大学生時代に参加してくれまして、その後仲間と一緒に私の事務所も訪問してくれた時からの、ご縁があります。

教育系サービスは非常にcompetitiveで、一般にはなかなかスケールすることが難しい領域だと思いますが、同社は、学習コンテンツ自体を提供するのではなく、学習の管理をしたり、学習法にアドバイスをするという”立ち位置”なので、「プラットフォーム」としてイケてるんじゃないかと思いました。(公開されているAPIで、教材アプリからStudyplusに学習の記録を自動的に投稿できるようになっており、連携している教材アプリも増えています。)

また、「起業のファイナンス」「起業のエクイティ・ファイナンス」にも書かせていただいたとおり、今後も巨額化していく資金調達やM&Aでのexitの増加などを想定して、経営者や投資家がどんなときも足並みをそろえられるように、フェムトグロースキャピタルでは優先株式で投資をすることを原則としておりますが、今回は特に、IPO前後の経営者の負担を低減し、新規投資家が優先株式で入ってくることによって権利が非常に弱くなってしまう既存の投資家のみなさんとのバランスもうまく取れる、なかなかいい感じのスキームで投資が行えたのではないかと考えています。

経営陣のみなさんや既存の株主のみなさんと一緒にがんばってまいりたいと思いますので、応援(受験や資格試験にチャレンジされているみなさんは、Studyplusのご利用も)よろしくお願いいたします!

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週刊isologue(第317号)上場前後の資本政策(2015年第1四半期:後編)

今回も、2015年第1四半期から4月末までにIPOしたベンチャーを中心とする会社の資本政策です。

今回は何といっても、設立から約2年半で上場したため、設立以来の資金調達や株式の移動がすべて開示されているGunosyが大変勉強になりますので、このケースを詳細に見てみました。

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取り上げた企業

  • プラッツ
  • モバイルファクトリー
  • 日本動物高度医療センター
  • sMedio
  • サンバイオ
  • 海帆
  • Hamee
  • シーアールイー
  • 日本スキー場開発
  • 三機サービス
  • レントラックス
  • ジグソー
  • Gunosy
  • リンクバル
  • デザインワン・ジャパン
  • テラスカイ

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週刊isologue(第316号)上場前後の資本政策(2015年第1四半期:前編)

今回は、2015年第1四半期(+α)にIPOしたベンチャーを中心とする会社の資本政策の前編です。

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1月は上場がなかったので社数は少なめかと思いきや、結構ありましたので、今週と来週の2回に分けてお届けします。また、この後にリンクバル、ジグソー、Gunosy、デザインワン・ジャパン、テラスカイの上場も控えていますので、後編ではそちらも取り上げる予定です。(「第1四半期」を逸脱しておりますが。)

 

取り上げた企業

  • KeePer技研
  • ファーストブラザーズ
  • ファーストロジック
  • ALBERT
  • シリコンスタジオ
  • コラボス
  • ショーケース・ティービー
  • ヒューマンウェブ
  • エスエルディー
  • RS Technologies
  • ファーストコーポレーション
  • イード
  • ハウスドゥ
  • シンデン・ハイテックス
  • Aiming

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週刊isologue(第315号)全米ベンチャーキャピタル協会契約ひな型(定款編その6)

今回は、全米ベンチャーキャピタル協会の投資契約のひな型の定款編の最終回です。

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目次とキーワー

  • 償還(6. Redemption)
    • 償還の一般条項
    • 償還の通知
    • 株券の提出
    • 償還後の権利
    • 償還その他の理由で取得された株式の扱い(7. Redeemed or Otherwise Acquired Shares) 
  • 権利の放棄(8. Waiver) 
  • 通知(9. Notices)
  • 第5条 附属定款(Bylaws)の変更 
  • 第6条 取締役の定員数
  • 第7条 取締役の選任 
  • 第8条 株主総会の開催場所、帳簿の保管場所
  • 第9条 取締役の免責
  • 第10条 取締役等の補償
  • 第11条 ビジネス機会の提供
  • 第12条 合意管轄
  • 第13条 カリフォルニア州法
    • 別添A(第10条 会社に対して強制力のある補償版)
    • 取締役と執行役員が補償を受ける権利
    • 取締役と執行役員に対する支払い
    • 取締役と執行役員からの請求
    • 従業員及び代理人に対する補償
    • 従業員及び代理人に対する支払い
    • 権利が非排他的であること
    • その他の補償
    • 保険
    • 補償規定の変更または廃止

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週刊isologue(第314号)全米ベンチャーキャピタル協会契約ひな型(定款編その5)

今回も、全米ベンチャーキャピタル協会の投資契約のひな型の「定款」について取り上げます。
今回は、「転換」の後編です。 

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目次とキーワー

  • 任意転換(4.Optional Conversion)続き
    • Series A転換価格の修正(ブロードベース・バージョン)
    • Series A転換価格の修正(フルラチェット・バージョン)
    • 設例(ブロード、ナロー、フルラチェット)
    • 対価の決定 
    • 複数の取引日がある場合 
    • 株式分割、株式併合の場合の調整 
    • 株式配当等の修正
    • その他配当や分配時の修正
    • 合併や組織再編による修正
    • 修正結果の通知
    • 基準日の通知
  • 強制転換(5.Mandatory Conversion)
    • トリガーとなるイベント
    • 手続き上の必要事項
  • 「pay-to-play」条項がある場合の強制転換(5A. Special Mandatory Conversion)
    • pay-to-playのトリガーとなるイベント
    • pay-to-playの手続き上の必要事項
    • 定義 

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日本ベンチャーキャピタル協会会長の尾崎一法氏のご冥福をお祈りいたします

アント・キャピタル・パートナーズ株式会社代表取締役会長で一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会会長の尾崎一法氏が平成27年4月7日に逝去されました。

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(日本ベンチャーキャピタル協会ホームページより)

尾崎さんとは、昨年10月から今年1月にかけて開催されたファンド規制に関する金融審議会ワーキンググループにおいて、傍聴者を含め100名以上は出席者がいるんじゃないかという超アウェイな雰囲気の会場の中、ベンチャーキャピタル側の委員として一緒にベンチャーキャピタルの重要性を説いたご縁がありました。

今年1月19日の審議会WGの最終回は事前には、体調が悪く入院していて来られない予定と伺っていたのに出席されていたので、「あれ?入院されていたのでは?」と伺ったら、「今日来ないわけには行かないからね」と、ベンチャーキャピタルの立場からの発言をされて最後を締めていかれました。WG終了後の立ち話で、「いや実はガンでね」という話を初めて伺って驚いた次第です。

(実際に具体的な法案を見るまでは、まだ予断を許しませんが)、他の委員や事務局のみなさん、その他の方々のご理解やご尽力にも恵まれて、この金融審議会「投資運用等に関するワーキング・グループ」の報告書は、冒頭でベンチャーキャピタルの必要性がうたわれ、悪徳業者の活動は困難にしつつも、真面目に活動をしている普通のベンチャーキャピタルへの影響は最小限に抑えられた、大変素晴らしいものになったと思います。(もしこの金融審議会ワーキンググループが開かれず、昨年5月のパブリックコメント案のまま法案が通ってしまっていたら、独立系ベンチャーキャピタルの1号ファンドや、海外ファンドから出資を受ける国内のベンチャーキャピタルは、全滅しかねないところでした。)

4月7日、青山のカフェで雑誌の取材を受けていて、尾崎さんのご活躍の話をしているちょうどその時に、テーブルに置いたiPhoneの画面に、尾崎さんが亡くなられたというFacebookのメッセージの通知が表示されたので大変驚きました。最後に私なんぞにもお別れの挨拶に来ていただけたのかと思って涙が込み上げてきました。

文字通り、命を削って日本のベンチャーキャピタルの発展にご尽力されたと思います。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。 

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週刊isologue(第313号)全米ベンチャーキャピタル協会契約ひな型(定款編その4)

今回も、全米ベンチャーキャピタル協会の投資契約のひな型の「定款」について取り上げます。

今回は「転換」についての規定(優先株の規定の第4条)の前半部分までです。 

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目次とキーワー

  • 任意の転換(4. Optional Conversion)
  • 転換の権利
    • 転換比
    • 転換権の終了
  • 転換時の端株の取り扱い
  • 転換の手続きルール 
    • 転換に関する通知
    • 発行可能普通株式数の維持
    • 転換の効果 
    • 転換自体に関連しては転換価格の修正は行わない
    • 税金の取り扱い
  • 希薄化防止条項
    • 転換に関する定義
      • オプション
      • Series A当初発行日
      • 転換証券
      • 追加発行普通株
    • Series A転換価格を修正しない場合 
    • みなし発行

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週刊isologue(第312号)全米ベンチャーキャピタル協会契約ひな型(定款編その3)

今回も、全米ベンチャーキャピタル協会の投資契約のひな型の「定款」について取り上げます。

今回は定款の議決権についての定めを見てみます。
ひな型の各契約書でも、(経済的な権利ではなく、会社の運営や意思決定に関わる権利である)「コントロール権」について触れてますが、定款での定めが、このコントロール権のうち最もベーシックなものになります。

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目次とキーワー

  • 議決権(3.Voting)
  • 取締役の選任
  • 優先株主の保全規定 
    • 会社の清算等 
    • 定款の変更 
    • 新しい種類の株式の発行
    • 株式の内容の変更 
    • 株式の償還 
    • 社債等 
    • 子会社の異動 
    • 取締役会の定足数の変更

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週刊isologue(第311号)全米ベンチャーキャピタル協会契約ひな型(定款編その2)

今回も、全米ベンチャーキャピタル協会の投資契約のひな型の「定款」について取り上げます。

特に今回は、ベンチャーのM&Aの際のアーンアウト(将来の業績に応じた支払い)や、話が違った場合の補償のためのエスクローされた金額と、優先株の関係はどうなんだろ?と今まで思っていたのですが、そのへん、このこの形の脚注の解説がマニアックで萌えましたw。

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目次とキーワー

  • 2. 清算や合併の場合
    • 「非参加型」の場合の残余財産優先分配権 
    • 「非参加型」の場合の普通株主への分配 
    • 「参加型」の場合の残余財産優先分配権
    • 「参加型」の場合の残りの財産の分配 
    • 清算とみなす事象(Deemed Liquidation Events)
    • 「みなし清算」の定義
    • みなし清算事象の有効化 
    • 分配額の評価
    • エスクロー利用や条件付き対価の場合

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