「眼の誕生」と現代社会

ツイッターのTLで見かけて、ついタイトルで衝動買いして読んだ本;

 

眼の誕生——カンブリア紀大進化の謎を解く
アンドリュー・パーカー
草思社
売り上げランキング: 27729

 

結構面白かったです。

読み終わってから奥付をみると、原著が2003年、日本語版が2006年でさほど新しい本でもないので、軽いネタバレを含みますが、以下、この本を読んで考えた事を書いてみたいと思います。

 

軽いネタバレと言っても、この本は、タイトルが「出オチ」というか、結論になっております。

ご存知の通り、今から5億数千万年前の「カンブリア紀」には、三葉虫をはじめとするものすごく多様な生物が現れて「カンブリア爆発」と呼ばれているわけですが、

この本の重要な指摘の一つは、実は、生物の体内の体制の違い(34の「」)は、先カンブリア紀までに既に出来上がっており、この「爆発」は、あくまで堅い外皮という外見の「形」が多様化した現象である、という点ですね。
(体内のしくみは多数の遺伝子を必要とする複雑なしくみであるのに対し、外観は相対的に少ない遺伝子数で生み出されるので、その分、より短い期間で変異しやすい、とのこと。)

それも、一つの生物種だけでなく、地球上すべての門においてほぼ同時に、この形態の爆発的多様化が発生したとのことです。

 

結論を言ってしまうと、この変化を引き起こしたのが、「眼の登場」だった、というわけです。

つまり、それまでの生物というのは、他の生物を化学的に探知したり、そばに近づいて来た生物を食ったりと、すぐ近くにまで来ないと相手を捕食できなかったわけですが、「眼」ができると、遠く離れた生物をもターゲットにできますし、直接、そのターゲットを目指して移動もできて、餌を取る効率も飛躍的に増大するわけです。

 

「よくわからないのでガンダムで説明してくれ」というご要望に答えるとw、先カンブリア紀まではミノフスキー粒子が散布されていて遠くのものをレーダーで探知できないのでモビルスーツで接近戦をしていたわけですが、カンブリア紀に入るとニュータイプが登場して、遠くにいる敵をも察知できるようになり、戦いの様相が全く変わって来るわけですね。

 

 

さて、ここ10数年の現代社会においても、まさにカンブリア紀と同様のことが発生しているのではないかと思います。

検索エンジンやSNSなどが発達して、ついこの間まではごく限られた知り合いどおしの間でしかやりとりできなかった情報が、地球の裏まで見渡せるようになってしまいました。

こうした社会では、一見、強者が弱者を食らって、ごく少数の強者しか残らないようにも思えます。
実際、現在、アップルやフェイスブック、グーグルといった巨大な企業が、マイクロソフトやアマゾン、ヤフーといった既存の巨大企業と戦っているので、一般庶民は搾取され、勝ち組と負け組の差は広がるばかりという気もしてしまうかも知れません。

 

生物の世界でも、こうした競争の激化が発生すると、弱い種がどんどん食われて極めて少数の強い種だけが勝ち残り、格差は広がって、多様性は減少していくような気もするかも知れません。

しかし、少なくともカンブリア紀においては、逆にそれまで「門」に関わらずどれも似たような柔らかいミミズのような似た形態をしていた生物が、外皮を堅くしたり、色を周囲に溶け込みやすくしたりといった変化を短期間の間に成し遂げ、結果として、極めて多様な種類の生物が出現して「爆発」となったということですね。

 

現代の状況はカンブリア紀とまったく同じではないので、もちろん単純なアナロジーでは判断できませんし、現代の「眼」の登場によって、滅びる種(ビジネス)もたくさん現れるでしょうが、必ずしも大企業の寡占が進行してデストピアに繋がるという未来と決まった訳ではなく、新しい競争のルールを身につけたビジネスが現れて、多様性の「爆発」が発生するのかも知れないですね。

 

(ではまた。)

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週刊isologue(第97号)フェイスブックは「バブル」なのか?(企業価値編)

さて、今週はいよいよ、フェイスブック(Facebook)の企業価値が、実態をかけはなれて高いのか、それとも適切な範囲と考えられるのかについて考えてみたいと思います。

 

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目次とキーワード:

  • 企業価値評価方法についてのおさらい
  • そもそもフェイスブックとは何か?
  • Googleのビジネスモデル
  • フェイスブックのビジネスモデル
  • 「ソーシャル」と「検索」
  • フェイスブックの広告のターゲット設定
  • 「マイノリティ・リポート」との比較
  • インフラ化するフェイスブック
  • GDP上位20カ国のアクセスから考える
  • なぜSNSのアクセスが国で1位になるのか?
  • 日本の人だけまだ「本当のSNS」のイメージが涌いてない?
  • 2006年のGoogleの企業価値分析は当たっていた?
  • フェイスブックの将来キャッシュフロー
  • フェイスブックの企業価値500億ドルはバブっているのか?

 

(ではまた。)

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週刊isologue(第96号)LinkedIn(リンクトイン)のIPO

今週はいよいよフェイスブックの企業価値について取り上げよう・・・と思っていたのですが、先週27日にLinkedIn(リンクトイン、ビジネス向けのSNS)が上場申請書類を提出し、(領域や規模は違いますが)同じSNSとして、フェイスブックIPOの前哨戦になるとも言われていますので、このリンクトインのIPO関連書類を見ていきたいと思います。

201101311702.jpg

 

目次とキーワード:

 

  • LinkedInの概要
  • Form S-1の概要(添付資料等)
  • リスクファクター(Risk Factors)
  • リンクトインのビジネスモデル
  • 地域別売上(米国国内、海外)
  • 損益構造
  • 資本政策
  • まとめと今後のネットの世界のビジネス

 

(ではまた。)

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Quora、その第一印象

専門家が非常に高いクオリティで質問に答えてくれるというので、日本でも一部でちょっと盛り上がりつつあるSNS「Quora」。

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専門性の高いことをやってる人なら誰でも、

世界中の一流の専門家が、さっと自分の質問に答えてくれたらなあ。

という夢を持っているんじゃないかと思いますが、Quoraが盛り上がっているのも、もしかしてそういう夢を叶えてくれるサービスになるかもしれない、という期待があるからじゃないかと思います。

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週刊isologue(第95号)フェイスブックは「バブル」なのか?(類似会社編)

今週は世界各国のフェイスブック(Facebook)の類似会社を探して、その財務データからフェイスブックの企業価値について考えてみます。

 

201101241821.jpg

 

目次&キーワード:

  • 企業価値の評価とは
  • 純資産、清算価値
  • 他社比で考えるということ
  • 類似業種比準、類似会社比準
  • 世界各国のSNS
  • QQ
  • V kontakte
  • Orkut
  • CyWorld
  • Friendster
  • LinkedIn
  • MySpace
  • Plaxo
  • StudiVZ
  • モバゲータウン
  • GREE
  • mixi
  • まとめ

 

(ではまた。)

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フェイスブックの「ファンページ」作ってみました

Facebookが日本でブレイクするかどうかまだピンと来ませんが、
(現在の客観的状況としては先日のループス 斉藤さんの「mixi, Twitter, Facebook 2010年12月最新ニールセン調査 」という記事がいいと思います)、

遅ればせながら、とりあえず「ファンページ」なるものを作ってみました。

 

http://www.facebook.com/isologue

 

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まだ、何をどうすればいいものやら、ブログやツイッターとどう使い分ければいいのやら、よくわかりませんが、ボチボチ使い込んで行きたいと思います。

 

(ではまた。)

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週刊isologue(第94号)フェイスブックは「バブル」なのか?(「映画に学ぶ」編)

昨日、フェイスブック(Facebook)社について描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」を見てきました。

この映画、ベンチャー企業が気をつけるべき論点がてんこもりなので、ベンチャー企業(特にネット系)に関わっておられる方は、見に行かれると非常にタメになると思います。
また、いっしょに見に行ったうちの奥さん(ビジネスに詳しくもないし、フェイスブックも利用してない)も「おもしろかった!」と言ってましたので、映画としても楽しめるんではないかと思います。

 

本日の週刊isologueは、フェイスブックの企業価値の話にしようと思ってたんですが、企業価値を考える前提にもなりますので、まず、映画「ソーシャル・ネットワーク」のエピソード等をもとに、ベンチャーの参考となるファイナンス面の論点について、話をさせていただきたいと思います。

 

また、日経BPさんから送っていただいた下記の本:

 

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
デビッド・カークパトリック
日経BP社
売り上げランキング: 5

 

も、フェイスブックの具体的かつ詳細な事実や数値等についてまとまっていて、非常に参考になりました。
この本の中からも、いくつかキーになる数値や事象を参考にさせていただきたいと思います。

 

というわけで今回は、映画のネタバレを含みますが、よろしかったらどうぞ。

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「老」とは何か(「老中」の研究メモ)

本日「不惑」を迎えられた方がいらっしゃったので、ちょっとイタズラ心がわいて下記のツイートをしてみました。:-)

 

初老とは、人の一生で、老化を意識し始めるとされる年代である。かつて男性の大厄である数え年42歳(満40歳)に「初老の賀」で祝ったことから、40歳の異称とされる。(Wikipediaより)

 

私も40になった時に「初老」なんだと知って、かなりガックーンと来た覚えがあります(笑)。

 

思えば、役職にも「年寄(相撲)」「老中」「大老」など、「老」が付くものは多いですよね。

30代の人が老中に就任していたり、井伊直弼が大老に就任したのも42歳と聞くと、昔の「」の概念というのは、ずいぶん低い年齢なんだなあ、という気がします。

 

Wikipediaの「老中」の項目を見てたら、歴代の幕府の老中とその就任期間一覧が掲載されていたので、生年とともにExcelに切り貼って全体のトレンドを見てみました。

 

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週刊isologue(第93号)フェイスブックは「バブル」なのか?(序章)

フェイスブック(Facebook Inc.)が、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs Group Inc. )を介して、5億ドルのファイナンスを行おうとしていると報じられています。

株価から考えたフェイスブックの時価総額は、既に数千億円から数兆円になっているといった報道もあり、「フェイスブックはバブルではないか」という見方も出ているようです。

このため、今週より、フェイスブックのファイナンスや企業価値、「バブルなのかどうか」等について考えてみたいと思います。

 

今回は、「そもそも、フェイスブックのような未上場でのファイナンスが日本でできるのか?」ということについて、規制をおさらいしておきたいと思います。

  • 問題意識「ベンチャーの資金調達をプロに手伝ってもらえないのか?」
  • 日本の証券会社は「原則」未公開株を扱えない
  • 例外
  • ファンドや法人を介在させた調達スキーム

 

次週は、
「フェイスブックの企業価値はどのくらいなのか」
「そもそもフェイスブックの企業価値を考える場合に、どのような論点があるのか」
といった本論に入っていきたいと思います。

(ではまた。)

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週刊isologue(第92号) 謹賀新年(2010年の「週刊isologue」総集編)

あけましておめでとうございます。

今週は一年の最初なので、昨年の記事を一覧する「総集編」をお届けします。

(リンクはブログでの紹介にリンクしています。)

引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

一覧:

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