本日の日本経済新聞朝刊4ページに「売掛債権などの電子的な売買、登録制で二重譲渡防ぐ——経産省、新手法で流動化促進」という記事が。
経済産業省はインターネットを通じた売掛債権などの電子的な売買について、二重譲渡によるトラブルを防ぐため、第三者機関への登録を義務づける制度を創設する方針だ。ネットによる債権の流動化は一部金融機関が始めているが、現行法では第三者に対抗できる債権譲渡の手続きに難点があることを重視した。登録制を通じて不正を防ぎ、債権の流動化を促し、企業の多様な資金調達を後押しする。
新制度の創設は産業構造審議会(経産相の諮問機関)が二十八日に公表する報告書案に盛り込む。審議会は法務省や財務省、金融庁も傍聴しており、新制度をつくる方針は大筋で一致。今後は法務省などが民法や商法などとの整合性を検討、二〇〇六年の通常国会に「電子債権法(仮称)」の提出を目指す。
新法の対象は電子商取引などで発生し、電子的な形態のまま売買する債権。手形を使った従来型取引などは現行のままで、対象外とする。
新制度では電子債権の発生や譲渡、債務支払いにより消滅した場合などその都度、インターネットなどを通じ自動的に第三者機関のサーバーに登録される。債権者や金額などを登録機関で一元的に管理することで債権の二重譲渡を防ぐ。登録するデータの内容や登録機関をどこに置くかなどは今後検討する。
売掛債権は目に見える物がなく、手形などに比べ二重譲渡がされやすい。現行法では売買する際、不正を防ぐために譲渡契約書を公証人役場に持ち込み公証を受け、第三者に対する「対抗要件」を得る。しかし手間や手数料がかかり、利用が進まず、トラブルが生まれやすかった。
今でも、公証人だけではなく、法務局の債権譲渡登記制度
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji13.html
ってのはあるようです。
債権譲渡登記制度の趣旨
民法467条は,債権を譲渡した場合,その債権の譲受人が債務者に対して自分が債権者であることを主張するためには,譲渡人から債務者に対して債権譲渡の事実を通知するか,債務者の承諾を得なければならないこととしています。
また,その債権譲渡の事実を債務者以外の第三者,すなわち,債権の二重譲受人,差押債権者,破産管財人などに対して主張するためには,この債務者への通知または承諾の手続は,確定日付ある証書によって行わなければならないとしています。
このように,債権譲渡の事実を債務者や第三者に対して主張するための法律要件が債権譲渡の対抗要件といわれるものです。
(2 ) 債権譲渡登記制度による対抗要件の特例
債権流動化などの目的で,法人が多数の債権を一括して譲渡するような場合には,債務者も多数に及ぶため,すべての債務者に民法所定の通知などの手続をとらなければならないとすると,手続・費用の面で負担が重く,実務的に対抗要件を具備することは困難となります。
そこで,債権譲渡の第三者対抗要件に関する民法の特例として,法人がする金銭債権の譲渡等については登記をすることにより債務者以外の第三者に対する対抗要件を得ることができるとしたものが,債権譲渡登記制度です。
(中略)
債権譲渡登記の効果は,債務者以外の第三者との関係で<注>,民法上の確定日付ある証書による通知があったものとみなされるというものであって,この登記により債権の存在や譲渡の有効性を証明するものではありません。
(中略)
<注> 債権譲渡登記をしても,債務者に対しては,債権譲渡の事実を主張することはできません。債務者に対しては,登記をしたことを証する登記事項証明書の交付を伴う通知をしてはじめて,債権譲渡の事実を主張することができるとされています。
これも一応、「オンライン申請」もできることになってますが、経済産業省が提唱しているのは、「電子商取引などで生じた債権」の場合(だけ?)であって、「譲渡時だけでなく、残高管理もする」というところが新しい、ということでしょうか。
経済産業省のホームページ等も見てみたのですが、それらしきリリースは載っていないので、詳細はよくわかりませんが。サービサーなど、債権譲渡のプロの人はこういうスキームを欲しているのでしょうか?(欲しているのでできたのだとは思うのですが。)
(とりあえず、本日はこれにて。)
日経続き
(中略)中小企業が持つ資産の内訳を見ると、売掛債権は二〇〇三年三月末時点で七十八兆円と、八十一兆円の土地とほぼ同水準。経産省は不動産担保に依存しない新たな資金調達の手段として活用できるとみて、債権譲渡の円滑化へ対応を急ぐことにした。
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