頭髪ビジネスネタ、その2

7月4日のエントリーに続いて、(期せずして)頭髪ビジネスネタ、その2となりますが。
前から気になっていたのですが、横浜駅東口三越の前に「UNIX」というヘアサロンがありまして。(写真)
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気になっていた、というのは、例えば「プログラマをやっている女の子とか慶応SFC出身の女性(男性も)とかがヘアサロンに行こうかというときに、”UNIX”という名前は親しみを感じるのか、それとも仕事や勉強の延長線みたいでなんか和めな〜いと思うのか?」てな、しょーもないことでありますが。
ヘアサロンビジネスにSEOが必要かどうかはともかく、サーチエンジン対策の観点から考えた場合に、これほどSEOに向かないブランド名もないなあ。(苦笑)・・・と思って、苦心してホームページを探し出してみると、URLはなんと「www.unix.co.jp」。(携帯用に「unix.jp」も。うーん、すごい。一生忘れられない・・・。)
会社概要を見てみると、売上高20億円、従業員300名で、店舗が16店舗。(うち5店舗は埼玉中心のmod’s hairブランドの店舗。)
平成7年から「2005年に株式公開を目指す」という目標を立てているようです。
会社沿革を拝見すると、
昭和50年:資本金200万円で創業。
昭和57年:増資して、資本金2000万円に。
昭和60年:増資して、資本金4600万円に。
昭和63年:増資して、資本金9200万円に。
平成12年:増資して、資本金1億円に。
平成13年:東京中小企業投資育成が引き受けてワラント債発行。
増資して、資本金1.1億円に。
という形で、ちょっとづつ増資されてきてます。
増資時の、経営者の方と経営者以外の方の比率がどうかにもよりますが、昔は株価に差を付けて外部から増資というような習慣もなかったので、経営者の方の持株比率がどうなっているのか、というのは、公開に向けた資本政策としてちょっと気になります。
資金調達しても、店舗の設備や敷金などの投資が重そうですから、投資家から見るとあまりおもしろい資金使途ではないかも知れないですし。今後の売り上げや利益の伸びにもよりますが、さほど高いPERが付く業種とも思えず、経常利益5億円出ても時価総額30億円〜50億円ということも考えられるので、一般的な公開時の時価総額としてはマージナルな部類になるかも知れません。
(生まれてから美容室に2回くらいしか行ったことないのでよくわかりませんが)、ヘアサロンは床屋よりさらに「規模のメリット」を出すのが難しそうなので、「スケーラビリティ」をどうアピールできるかというところがポイントかも知れませんね。
なんといってもブランドとURLが「強烈」なので、もしかしたらすごいポテンシャルがあるかも知れないですね。unixユーザーのコミュニティ中心にネットの世界とコラボレーションするとか、美容院でありネットビジネスでもあるというような画期的なビジネスモデルにするとか。(・・・って、どうやるかはともかく・・・。)
ではまた。

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委員会等設置会社に移行して正解だったか?

昨日は、日本監査役協会で開催された「監査委員会懇談会」に出席させていただきました。
この会は、委員会等設置会社に移行した20数社の監査委員会のメンバー(監査委員または監査委員会室長など)が、委員会等設置会社の法令、その他、運営上の問題点等について情報交換するという会。
委員会等設置会社に移行された会社というのは、日本の中でもかなりコーポレートガバナンスに熱心な会社さんばかりですので(参考はこちらのエントリーなど)、見識も高い方ばかりで非常に参考になりました。
個別の会社さんの情報をここで開示するのは適当でないと思いますが、一般論的で差し支えないと思われるものをいくつか。
委員会等設置会社に移行してよかったか?
監査役設置会社から委員会等設置会社に移行してよかったと思うかどうかについてですが、これは、どの会社さんも一致して「移行してよかった」というご感想。
「デメリットはない」というのもほぼ一致した意見。
アンケートだと顔が見えませんが、監査委員の方々のお顔を拝見して、本当によかったと思ってらっしゃるようだというところが実感できたところが収穫でした。
何がよかったか?−議論の活性化
日経に掲載されていたアンケート結果とほぼ同様で「経営のスピードアップ」「事業活動の透明性の向上」等があげられましたが、「取締役会の議論が活性化」を評価するご意見が多かったです。
ベンチャー企業の取締役会は経営の重要事項についてちゃんとディスカッションしている例を結構見かけますが、大企業の取締役会というのは、「シーン」としている例が多いのでしょうね。
「委員会等設置会社になると、執行役へ権限委譲して取締役会の決議事項が少なくなるので、その分、ディスカッションの時間が増やせる。」
「決定を行うのはあくまで取締役会。(商法上、会社の機関は取締役であり、一人一人の取締役は機関ではない。)だから、執行部門は個々の取締役の言うことをいちいち聞く必要はない。その分、社外取締役も思う存分好きなことをしゃべれる。」
というご意見があり、なるほどーと思いました。
監査役設置会社でも取締役個人は「機関」ではなかったので同じと言えば同じなわけですが、社外取締役が義務付けられたので社外取締役が入ってきたことが大きいということでしょう。
逆に言えば、個々の取締役がいい意見を言っても、言いっぱなしでは執行役に(理論上は)伝わらないわけですから、取締役会議事録的に書くと、
「○○取締役の『△△△△△△』という意見を取締役会として□□代表執行役に申し伝えることにつき議場に諮ったところ、出席取締役一同異議無く、これを承認可決した。」
的な形で決定しておく必要があるのかも知れません。
株主総会での質問
6月の株主総会ラッシュを終えたばかりでもあり、委員会等設置会社移行後初の定時株主総会となったため、「株主総会でどのような質問があったか?」という話題に。各社とも「質問が来るだろうと思って張り切って万全のリハーサルをしていたが、まったく質問がなく、肩透かしを食らった。」ということのようです。
「業績が悪い」とか「株価を高くしろ」というのはわかりやすいが、コーポレートガバナンスがどうかというのは、質問としては難しすぎるんではないか、というご意見が多かったです。
株主総会の運営
委員会等設置会社では、決算も利益処分も退職慰労金も、すべて取締役会等のレベルで決まってしまっているので、株主総会での決議事項は取締役の選任くらいになってしまっています。このため株主総会でやることが無くて「手持ち無沙汰感」が高まっているようで。
「質問もあまり出ないし、もうちょっと”IR”的な要素を取り入れ、会社側から積極的にアピールするような株主総会にする必要があるんじゃないか。」
というご意見が多かったです。
監査役と監査委員の違い
監査役設置会社においては、監査役は取締役会に出席しても基本的に黙って聞いているだけでしたが、委員会等設置会社においては商法特例法で監査委員会の活動等を取締役会で報告することが求められるため、取締役会のかなりの部分は監査委員会の報告で費やされることになる。ということで、「取締役に、監査って大変なんだねえ、と活動の大変さが伝わるようになった。」「監査委員になって監査役時代よりも社内でのステイタスが確実に上昇した。(笑)」といった、監査に対する取締役の注目度の改善が見られたという意見が多かったです。
常勤の監査委員について
監査役設置会社で常勤監査役が必要とされたのに対し、委員会等設置会社においては常勤の監査委員の設置は求められていませんが、どの会社でも社外取締役の監査委員から、「従事時間的に、常勤の監査委員が必要」という意見が多いようです。
ただし、アメリカのコーポレートガバナンスの識者には「常勤の監査委員?何それ?」といぶかしがられることが多いそうで。
常勤になると(給料の大半もその企業から支払われることになり)独立性が損なわれる可能性がある。時間を長くするよりも、独立性を重視することのほうが大切、という「オーバービュー的な」考え方が強いのでしょう。
私の想像ですが、もしかすると訴訟対策という観点からも、いつでも自由に社内を見て回れる常勤の人がいると、「ここまでわかっているべきだった」という責任範囲が広くなり、内部統制組織との責任分界点もあやふやになる。責任を提出された資料だけに限定する意味でも「オーバービュー型」の方を好むのかも知れません。
ではまた。

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横浜銀行が公的資金完済

磯崎@今朝4時まで「冬ソナ」見てました(眠い・・・)、です。ピュアな愛の世界にひたった後ですが、再びドロドロしたゼニの世界の話に戻りたいと思います。
本日の日経7面「公的資金、横浜銀、来月にも完済、市場売却は550億円」という記事が出てます。

預金保険機構は八日、横浜銀行に優先株の形で注入している公的資金七百億円のうち、五百五十億円を普通株に転換して投資家向けに売り出すと正式発表した。早ければ七月中に売却を完了する。銀行が市場売却で公的資金を返済するのは初めて。残り百五十億円は売り出し終了後に横浜銀が買い入れて、八月にも公的資金を完済する。

とのこと。

市場売却方式は普通株式数が増加するため株価下落を招くリスクがある半面、公的資金が民間資本に入れ替わるだけで自己資本比率は下がらない利点がある。

ということで、市場の調子がよければ優先株を普通株に転換して、それを市場で売却する方がいい方法とも言えます。
以前のエントリー(「公的資金」とは何ぞや)にも書きましたが、この横浜銀行の第一回優先株式の転換条件は、以下のようになってます。

� 転換価額
優先株式の普通株式への転換価額は505円40銭とする。
また、転換価額は、平成11年7月31日とその後平成20年7月31日までの毎年7月31日に修正される。
ただし、今後時価を下回る払込金額をもって普通株式を発行する場合や株式の分割により普通株式を発行する場合等、一定の事由が生じた場合には転換価額を調整する。

横浜銀行が転換社債を額面で繰り上げ償還しようとして普通株式への転換を促したことについても以前のエントリーでご紹介しましたが、このときには、転換価額の下方修正条項は、かなり投資家に有利になってました。
上記に掲げた第一回優先株式の転換条件は有価証券報告書ベースのものなので、発行時の公告等ではより詳細な条件が記載されているのではないかと思ったのですが、1999年とかなり以前で、日経の公告検索でも出てきません。
(特に、転換社債と同様、「ラチェット」的に一度転換価格が下がったら二度と上がらないような条件になっているのか、株価が回復してきたら転換価格は再び上昇する条件なのか、が重要ではないかと思います。)
いずれにせよ、昨日の終値が588円、本日は今時点(10:38)で610円(22円高)と、流通株式数が増えて嫌気されるというよりは、「公的資金を完済してスッキリ」というのが好感されたようで、当初の転換価格が転換価額505円40銭よりは上がってますので、この第一回優先株式を保有する株式会社整理回収機構は20%ほど売却による利益が出ることになります。
公的資金が投入されたときに、世論は「銀行に国民の血税を”あげちゃう”なんて!」と、ずいぶん拒否反応を示しましたが、公的資金投入も優先株式による「投資」であり、再生ファンドの投資と同様、企業が回復してくれば公的資金で国が「儲かる」こともあるのだ、という実例が出てきた、ということですね。
ではまた。

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「冬のソナタ」と外国語学習

奥さんに引き続いて私も「冬ソナ」にハマってしまって見るのに忙しいので、本日は手短に。(現在、15話目/全20話)
奥さんは、昨晩夜なべして日本語版で全部見終えて、今度はDVDをハングル語(+日本語字幕)モードにして見ているので、私もつき合ってハングルで第1話から見始めてしまいました。
なんか、15話くらい見ると、すでにハングルの単語100語弱は聞き取れるようになった気が・・・。(主に、日本語の単語から類推しやすい系の単語ですが・・・。)
DVDセット買ってシャドーイングしながら10回くらい見たら、ハングルの日常会話くらいできるような気がしてきました。(気のせいかも知れませんが。)
ホント、DVDって語学にはすごい効果がありますね。
と思ったら、(案の定、というか)こんな関連商品も。
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Amazon: 冬のソナタで始める韓国語

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Amazon: 「冬のソナタ」で学ぶハングル(7/22発売予定)

ではまた。

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「冬のソナタ」と曽我ひとみさん

奥さんが「冬ソナ」にハマってビデオ屋で全巻借りて見まくっているのを横からチラ見している磯崎です。

仕事柄、「どっちが経済的に有利か」てな思考パターンの中にドップリつかって暮らしていることもあり、この「10年前に死んだ恋人を想い続ける」とか「金持ちでない方の恋人を選ぶ」とか「28歳にもなって、おでこにチューだけ」といったピュアな世界は、非常に新鮮で。
「オープンな社会」、「市場メカニズム」といった言葉につられて自分の倫理観の足場がぐらついてないか、再チェックの必要性を(ちょっと)考えさせられます。ドラマであることを割り引いても、「(IMF後の)韓国でもまだ『そう』なんだ」というところが、ちょっとした驚きでした。
本日の日経朝刊社会面「曽我さん『必ず帰ってきます』」という記事も、普段であれば、「帰ってくるに決まってんじゃん」(なぜなら日本で暮らした方がいい生活ができるから)と思って読み飛ばしてしまうところですが、冬ソナを見た後だと、「家族と北朝鮮に帰ってしまうという選択肢も、実はかなり可能性アリなのかも・・・」という気がしてきてしまいます。
改めて、「拉致被害者の方々から日本の現在の社会がどう見えているのか」について、考えさせられました。
(ではまた。)

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情報のハブとバベルの塔

彼らは、「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。
主は降ってきて、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、
言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。
我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」
主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。
こういうわけで、この町の名前はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
(新共同訳聖書 創世記11.4-8)

94年ごろ、奥さんのイスラエル出張につきあって、経由地のニューヨークで今は無きワールドトレードセンタービルの展望台に上ったことがあります。で、思わず二人でプッと吹き出してしまったのが、ワールドトレードセンターの名前の通り、その展望台には世界各国の「お上りさん」がひしめいていたこと。ロシア、インド、中国といった各国の民族衣装の観光客がそれぞれの国の言葉で話していて、何しゃべってんだかさっぱりわからない。
そのとき思ったのは、旧約聖書のバベルの塔の記述も、古代のそうした「国際都市」の姿を素直に記述したものなんだろうなあ、ということ。
高い塔というのは必ずその時代の建築技術の粋を尽くしたもののはずであり、そうした塔を建てるためには、その高度な建築技術があることはもちろん、その技術を育み莫大な建築資金を捻出するための高い超過収益力がある必要があります。
そうした「ハブ」となる場所では、いろんな国からいろんな人が集まり、モノや情報が交換されることになる。
また、(名前を忘れましたが)以前読んだ建築関係の本で「都市は飢えたことがない」ということが書いてあって、なるほどなと思ったことがあります。有史以来、人類は何度も飢饉に見舞われてきたが、餓死者が出るのは必ず食料を生産している田舎であって、都市が飢餓に見舞われたことは無かった、というパラドクス。なぜなら、都市には「情報」が集まり「権力(金)」があるので、食料は都市に流れ込むからだ、という説明。
地方の漁港町に行ってうまい魚が食えると思って楽しみにしてたら、「いい魚は全部築地に行っちゃうんだよね〜」と言われてがっかり、みたいなもんでしょうか。
CNET Japanの「情報化社会の航海図」で渡辺聡さんが「コンテンツがこのまま増えたら、私たちはどうやって価値のあるコンテンツを見つけるのか。」という問題を取り上げておられます。が、「心配ご無用」と考えることもできます。
一つには、人間の生み出す情報は、同じくCNETで江島健太郎さんが取り上げておられる「バベルのコンピューター」が生み出すテキストのように全くランダムなものというわけではなく、相互に関連しあって「自己組織化」するものだから。つまり、「ハブ」ができればそのハブに合わせて自分を変化させるものだから。
検索エンジンというものが「ハブ」となって来たとなったら、「SEO(Search Engine Optimization)」という概念が出てきて、自分の作成した情報が、「ハブ」で処理されやすいように自らを変化させるのがいい例かと思います。
もちろん、多くの人の一番の関心事は「それがどういう技術によって実現するのか?」ということでありましょうし、それを言い当てるのは難しいとは思います。ただし、「ハブ」の取るべき戦略は明確で、自らの「権力」(株式会社なら例えばmarket cap.)をより強固なものに保ち続けること、です。「塔」を作る技術は時代とともに変化するが、「ハブ」であり権力を持つ限り(買収や合併と言った方法で)、「塔」を建てる技術は手に入るし、世界中から人も集まってくるわけです。
聖書のバベルの記述も、「もともと単一の言葉をしゃべっていた人間が言葉を乱され全地に散らされた」と考えると不安になりますが、(十万年単位の昔の記述ならともかく、数千年前の記述だとすると)、実際は世界各地にもともと別の言葉をしゃべる様々な民族がいて、それが「ハブ」であるバベルに集まって来ただけでしょう。
インターネットでもそれは同じで、60億人それぞれのもともと多様な考え方や情報が、インターネットにちょっとづつ乗ってきている。それは一見カオスのようですが、実は「ハブ」に情報が集まることで、「本当の」世界の様々な情報は探しやすくなりこそすれ、探しにくくはなっていないと思うわけです。
ただし、「ハブ」どおしの権力争いはありますよね。また、人類の歴史でいろんな都市が滅びてきたように、情報の「ハブ」もマネジメントやガバナンスの問題で滅びる可能性があるかと思います。
ハブが滅びる原因は、一言で言うと、「ネットワーク外部性に支えられた巨大な超過収益力を有するが故に生まれる慢心」でしょうか。新たな権力の芽が出てくるのをウォッチして、それを潰すか自らに取り込むかをし続けることが「ハブ」の宿命で、鉄器が出てきたら鉄の製造技術を習得し、検索技術が鍵となれば他社のサービスに依存せずに独自の検索技術を構築する必要があります。
そのマネジメントに失敗したときに、「互いの言葉が聞き分けられぬように」なっちゃうのかも知れません。
(それではまた。)

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河合楽器のデットエクイティスワップ

小学校3年生の時にピアノを習いたいとダダをこねたことがありまして。
同じクラスにピアノをやってる女の子がいたので私からライバル宣言をしたものの、その子は父親が国内某有名オーケストラのコンサートマスター、母親もピアニストで、本人も3歳からピアノの練習をしているというツワモノでして、ピアノを習い始めるにはいささか遅すぎるスタートを切った身の程知らずの私は、勝負を挑むところまで到達することもなく、数年後みごとに挫折して、普通の男の子としてゴロベースやドッチボールに明け暮れる生活になるのでありますが。
始めてしばらくはどっからか持ってきたボロいオルガンで練習してたんですが、ある時、親が「ホンモノのピアノを買ってやる」というので「うちにそんな金があったのか」と大変びっくりした記憶があります。
で、家にやってきたのが「KAWAI」のアップライトピアノ。
毎年、河合楽器から調律に来るおにいさんが、調律が終わった最後に「ポロロロロロン」と難易度の高い曲をさらっと弾いて帰るのを「すげー」と思って見ていました。
私がやめた後しばらく続けていた妹もそのうち弾かなくなり、それでも嫁入りするときに「将来子供の情操教育に使う(かも)」と言って持って行ったはずですが、使ってるのか知らん?
・・・という話となんも関係ございませんが、本日の日経25面に株式会社河合楽器製作所の優先株式発行の公告が載っています。
総額20億円。割当先は全額、三菱信託銀行です。東京の新聞には載っていなかったようですが、6月30日の静岡の地方面に、DESであると書かれています。
(注:DES=デット・エクイティ・スワップ。債務の株式化。この場合、銀行からの貸付金[負債]を、株式[資本]に振りかえること。)
条件
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買受(会社側および株主が合意して会社が買い取り)を行うことは当初からできるようですが、優先株主から償還を請求することは、平成26年(10年後)以降(しかも毎年7月中だけ)しかできません。会社側が強制的に償還を行うのも10年後以降です。
また、優先株主が普通株式への転換を請求できるのが平成21年4月(5年後)以降となります。
三菱自動車工業の優先株(特にB種優先株)に比べると、ずいぶんのんびりした条件ですね。連結有利子負債も約220億円あるようですが、DESの額が20億円というのも、ビミョーな金額ですね。
EDINETで有価証券報告書を見ると、筆頭株主は「合名会社河合社団」(6.63%)
・・・古風なお名前です。
次の株主が三菱信託で4.93%。
社長の河合氏は、26歳のときから2年ほど三菱信託銀行に勤めていたようですね。
他の株主も明治安田生命、東京海上などで、かなり三菱色の会社のようです。
昨年6月に新経営体制をスタートさせたとのことですが、社長は平成元年10月から今の方のままのようです。
売り上げも下落の一途ですが、それでもまだ昨年で約700億円の連結売上があるので、ちょっとびっくりしました。
3月に新中期経営計画を発表したようですが、三菱自動車のようなノリにならずに無事浮上することをお祈り申し上げます。
(ではまた。)
参考:
新中期経営計画の策定について
http://www.kawai.co.jp/ir/pdf/disclo_20040330_01.pdf
資本準備金および利益準備金の取り崩しに関するお知らせ
http://www.kawai.co.jp/ir/pdf/disclo_20040521_02.pdf
第三者割当増資(優先株発行)に関するお知らせ(36KB)
http://www.kawai.co.jp/ir/pdf/disclo_20040629_01.pdf

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バリカンのIRR

以前、「不況でバリカンが売れている」というニュースを聞いて、「これだ!」と思って買いに行って自分で髪を刈るようになって早4年ほど経ちます。
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(出所:National家庭用散髪器具ホームページ
確か5,000円程度で買ったと思いましたが、これで私も2人の息子も全く毎月床屋さんにいかなくなっちゃったので非常に利回りのいい投資。(床屋さんすみません。)
試しに内部収益率(Internal Rate of Return: IRR)を計算してみたところ、以下のように年の利回りが約1300%!に。(今どき、こんな利回りのいい投資もなかなかありまへんで。)
bari001.jpg
たまの休日に混んでる床屋に行って待たされなくていいのもナイスです。
注1:
床屋代父月3000円、息子一人1200円として。今4年目ですが、あと1年計5年もつとして計算。
注2:
あまりに利回りが良すぎて、ExcelのIRR関数ではいくらやっても計算が収束しないようなので、NPV(Net Present Value:現在価値)関数を使って、現在価値が0になる利回りをゴールシークしてます。
(ではまた。)

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インターネットとアズカバンの囚人

ハリーポッター見てきました。
で、改めて思いましたが、よく考えてみると、ここ10年弱で「魔法」が驚きの対象じゃなくなってることに非常に驚かされますね。
水晶玉よりGoogleの方がよっぽどクリアにいろんなことがわかるし。
Amazonや楽天で呪文を唱えるだけで、好きなモノが手元に届く。
(ただし、届けてくれるのはフクロウではなく、ペリカンだったり黒ネコだったりしますが。)
いつの間にかインターネットが魔法よりもすごい存在になってしまっているのではないかと。
(ではまた。)

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オプションの費用計上−「株主様」のご意向は明確だが

「供給者側の」ストックオプション阻止の論理
krpさんが「米国ストックオプション会計の実施が遅れるかも」で、米国でのストックオプションの費用計上が遅れるかも知れない要因について紹介されてます。
ここで紹介されているのは、
・FASBが7000ものコメントを評価するのに時間がかかりそう
・企業サイドからも適用の延期を求める声がある
・反対意見が根強いハイテク業界と中小企業のロビー活動を受けて、下院でFASB案を骨抜きにする法案が承認されていること
等、主として「供給者側の論理」からの要因ということになるかと思います。
投資家側の論理では
これに対して、日経ビジネスの最新号(7月5日号)では、「需要者(投資家)側の論理」からは、費用化の流れは変えられないという事例を紹介しています。
強烈なのは、春以降のハイテク大手でのストックオプション費用化の株主提案が、インテルのグローブ会長やIBMのパルミサーノCEO等の熱弁にもかかわらず、軒並み早期導入せよという議案が可決されていること。
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(出所:日経ビジネス2004年7月5日号、%は賛成票の割合)
技術的な問題はともかく、「導入せよ」という株主様のご意向はもはや止められないようです。
同誌では一方で、「多額の選挙資金を要する大統領選挙を目前に控え」(つまりは企業側からの献金で)「議会がどう動くかは無視できない。」という、「供給者側の論理」も紹介しています。
「一度導入したらおしまい」
krpさんは、「評価方法は実務指針のようなものに任せて、基準を確定し、適用を開始するようにして欲しいと思います。」と希望されてますが、「フレキシビリティのある基準」というのは、以下のような理由から、結果として「最も厳しい基準」と同じになると考えられるので、「供給者側」としては、とにかく導入自体に大反対してくるんでしょうね。
というのも。
昨日もある会社に監査法人さんをご紹介して、どういう会計処理(当然ストックオプションではないですが)にするかを検討していたのですが、その会計士さんは、私が知る限り最もフレキシブルな頭を持つ会計士の一人であるにもかかわらず、久しぶりに議論をしてみると非常にガードが固い。
聞けば、「最近は、監査法人内の審理が非常に厳しくて・・・」とのこと。
金融庁→会計士協会→監査法人(審理部門)→各社担当の会計士
という厳格な「ガバナンス」体制が構築されてきたため、現場の会計士の裁量で「それで、いいっすよ」と言えるマージンが極めて小さくなってきているようです。
「Aという方法が簡便だから、Aにしましょうよ」と言っても、
「原則はBという方法。Aという方法もアリだが、それが採用できるのは、あくまで原則であるB法と簡便法A法での結果の差異に重要性が無いということが証明できる場合のみ。」
というような論法で押してきます。
差に重要性がないことを証明できるということは、結局、原則のA法とB法の両方を計算しなきゃいけないので、簡便法の意味がないじゃないっすか・・・。
ストックオプションの場合、ブラックショールズ式は、付与期間の最後に1回だけ行使できる「ヨーロピアン」オプションのvalueの計算式なので、「1年クリフで半年ごとに1/8づつ行使可能になる」というようなベスティングの条件がついた通常のストック・オプションの場合、ブラックショールズでの計算式されたvalueよりは、国際会計基準の案のようにlattice model等で計算した「本当の」価値の方が高くなるかと思います。
krpさんがご紹介されていたRubinstein 氏やIntegrated Finance Ltd.が提案した簡便法というのがvalueをどう計算するのかよく存じませんが(←要チェック、メモメモ・・・)、「低く」計算する手法である限り、投資家からは、「もっとちゃんと費用計上しろ」という要求が突きつけられます。
「高く」計算する手法だとすると、経営者は「めんどくさくても、複雑な方法を使え」と言うでしょう。
また、「計算しないとどちらが高く出るかわからない方法」だったら、結局、投資家対応、経営者からの指示等を考え合わせると、会計基準で許容されていたとしても、結局両方を計算することになるのではないかと思われます。
Sarbanes-Oxley法(企業改革法)施行以降、米国でも会計士の態度はかなり硬化してると思いますので、それを見ている企業としては、一旦導入してしまうと、結局一番キツくてめんどくさい方法で計算させられるハメになるのは目に見えていると考えると思います。「トロイ」で門を開けられたトロイがあっという間に全面火の海になっちゃうような恐怖があるんではないかと。
で、「そもそも費用に計上するのがおかしい」という「城外」で必死に防戦してるんでしょうね。
ではまた。

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