インボイスの転換社債と自己株式(第2回)

昨日に引き続き、インボイスさんの一連のファイナンスを教材に勉強させていただこうと思います。
2月16日
第1回無担保転換社債型新株予約権付社債発行に関するお知らせ
http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20040216-2.pdf
全株主へのストックオプションの付与を決議をした直後の2月16日に無担保転換社債(型新株予約権付社債)を発行しています。
この転換社債型新株予約権付社債は、「(同日に)Merrill Lynch International との間に設定した総額100 億円の転換社債型新株予約権付社債購入プログラムに基づき発行するものです」とのこと。コミットメントラインのように100億円の「枠」を設定しておくものだと思いますが、そのうち35億円分だけ発行しています。
各社債の金額(額面)は1億円、全部で35枚<50枚、ということで、私募扱いで、

13.社債管理会社の不設置
本新株予約権付社債は、商法第297 条但書の要件を充たすものであり、社債管理会社は設置されない。

ということになります。

参考:第二百九十七条(社債管理会社の設置)
 社債ヲ募集スルニハ会社ハ社債管理会社ヲ定メ社債権者ノ為ニ弁済ノ受領、債権ノ保全其ノ他ノ社債ノ管理ヲ為スベキコトヲ委託スルコトヲ要ス但シ各社債ノ金額ガ一億円ヲ下ラザル場合又ハ社債ノ総額ヲ社債ノ最低額ヲ以テ除シタル数ガ五十ヲ下ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ

転換価格修正条項は付いてますが、下方のみ修正とかラチェットがかかってる(アブない)ものではなくて、下方にも上方にも変更されるものです。

� 転換価額は、当初76,200 円とする。(注:11分割後の6,927円相当)
� 転換価額の修正
本第22 項第(11)号�に定める本新株予約権の各行使請求の効力発生日(以下「修正日」という。)まで(同日を含む。)の5連続取引日の株式会社東京証券取引所における当社普通株式の普通取引の終値の平均値の94%に相当する金額の1円未満の端数を切り上げた金額(以下「修正日価額」という。)が、当該修正日の直前に有効な転換価額を1円以上上回る場合又は下回る場合には、転換価額は、当該修正日以降、当該修正日価額に修正される。但し、かかる修正後の転換価額が152,400 円(以下「上限転換価額」という。)を上回ることとなる場合には転換価額は上限転換価額とし、かかる修正後の転換価額が38,100 円(以下「下限転換価額」という。)を下回ることとなる場合には転換価額は下限転換価額とする。(以下略)

3月24日:
第1回無担保転換社債型新株予約権社債の株式転換行使終了に関するお知らせ

http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20040324.pdf
ということで、下記の表のように転換を進め、社債を発行して約1ヶ月後には早くもすべての転換社債が株式に転換されてしまいました。
Merrill_CB_conversion.jpg
転換した株式数は50,828株。(11分割前)
これらの株式の平均転換価格は68,860円。(現在の11分割後換算で6,260円相当。)
この普通株式への転換と前後して、
昨年12月5日:
自己株式の市場買付休止に関するお知らせ

http://www.invoice.ne.jp/ir/pdf/9448_20031205.pdf

現在、平成15 年11 月20 日に公表しております「ファストネット株式会社テレコム事業部門買収」の件につきまして、買収価格算定のための監査中であるため、本件が終結するまでの間、自己株式の買付を行うことができません。
つきましては、本件終結まで(最長、平成16 年2 月2 日まで。)の間、自己株式取得の休止期間であることを、ここにお知らせいたします。

と、15年6月の株主総会で決議したにも関わらず休止していた自己株式の買付を、
3月22日:
自己株式の買付けに関するお知らせ

http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20040322.pdf
下記の表のとおり、期末近くになってから、(4,060株、3億円程度ですが)、株主総会で設定した枠一杯に、ドドッと一気に買い付けます。
invoice_treasury_stock2004.jpg
インボイスは期初に既に自己株式2,919株(その後11月19日に21分割してますので、(今年の11分割前で)61,299株)1株4,312円の非常に簿価の安い自己株式を持っていました。
自己株式の単価を移動平均法で計算していると思われますので、上述のように取得日と転換日が入り乱れて、単価の計算が複雑になりますが、期末の貸借対照表の資本の部に計上されている「自己株式処分差益(その他資本剰余金)」に計上された30億円超は、主としてこの自己株式の簿価と転換した転換社債の額の差だと考えられます。
(他に、以前発行したストックオプションの行使の一部も自己株式を交付しているものと考えられます。)

注:「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」
11. 「自己株式処分差額」とは、自己株式の処分の対価から自己株式の帳簿価額を控除した額をいう。
12. 「自己株式処分差益」とは、自己株式処分差額が正の値の場合におけるその差額をいう。

Merrillさんは、35億円を転換した株式を、仮に7月くらいまで保有していたとしたら、5〜7倍程度になってますので、200億円前後(!)儲かったかも知れませんね。
また、インボイス側の処理ですが、転換社債の転換で発行される株式を「新株」にしてしまうと、35億円は資本金および資本準備金になります。資本金および資本準備金をこの7月から行われた怒濤の自己株式買付けの原資とするには、減資と資本準備金の取り崩しが必要で大変手間ですが、新株でなく「自己株式の交付」という形にしてますので、(実態は同じなのに)、「その他資本剰余金」に入って、すんなり自己株式の買い付け原資にできるという、非常にビューティフルなことになってます。
もちろん、簿価の低い自己株式が大量にあったからこそできたことなわけですが。
image002.gif
ところで、インボイスの第1四半期(6月)末のキャッシュ(短信3ページ)を見ると、連結でも29億円しかキャッシュがなく、「四半期純利益+減価償却費+連結勘定償却額」で3.6億円程度のプラス、営業活動によるキャッシュ・フロー全体では10.4億円のマイナスです。
これを、短期借入金の増加28億円でまかなってます。
ということで、キャッシュフローは必ずしも盤石とは言えないし、この後、36億円分の怒濤の自己株式買い付けを行うにもかかわらず、6月上旬にはこのMerrillとの転換社債プログラムを解約しています。
6 月7 日
無担保転換社債型新株予約権付社債購入プログラム解約に関するお知らせ

http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20040607.pdf
解約事由として掲げられているのは、

本転換社債(額面35 億円)は、財務基盤の強化を目的とし、保有しておりました自社株式の資金化の手段として発行したものですが、同時に本プログラムを組成し、将来の市場金利上昇時における金利負担増を回避すべく、直接金融による資金調達手段の確保を図ったものであります。
しかしながら、当社は、平成16 年9 月30 日付の株主名簿および実質株主名簿に記載されている全株主に対し、1 株につき1 個の新株予約権(ストックオプション)の付与を決議しているため、直接金融による資金調達手段は十分に確保される状況にあり、他の潜在株式発行要因は不必要であると判断したため、本プログラムの解約を決議した次第であります。

ということで、そもそもこの転換社債を発行したのは自己株式の資金化が目的だったことがここで明かされてます。転換社債の発行は全株主へのストックオプションの付与を決議した後なので、ストックオプションの付与の決議を解約の理由とするのはちょっとシラジラしい感じもしますが、それはさておき、
転換社債の35億円が自己株式の量と概ね合致することを考えてみても、この解約も(相場の推移が予想通りいったケースにおける)当初から想定されたスキームの一部だったのでしょう。
(いやー、すばらしい・・・というか・・・。)
(まだ続きます・・・。)

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インボイス、全株主にストックオプション(第1回)

これを取り上げないわけにいかないと思いますので。
株式会社インボイスの一連のファイナンスのスキームについて、です。
8月27日の日経朝刊に「インボイス、全株主にストックオプション——資金調達手法に賛否両論」という記事がありました。

同社はまず六月末(権利付き最終売買日は六月二十四日)現在の株主に対し、一株を十一株にする大幅分割を実施した。ただ、十株の新株(子株)が投資家の口座に入り、売却可能になったのは、多くの証券会社で八月二十三日からだった。
 そこで親株だけしか上場していない七月七日から八月十九日にかけ、大規模な自社株買いを実施した。自己資本五十四億円(三月末)のうち三十六億円強を振り向け、流通する親株の一三・六%を吸い上げた。三十一日間の立会日のうち買わなかったのは二日だけ。
 八月二十日にはかねて申請していた東証第一部昇格が認められ、市場では九月一日の昇格日に向け、指数連動型のファンドの買いが入るとはやされた。九月末(権利付き最終売買日は九月二十四日)現在の株主には、一株について一個のストックオプションを受け取る権利を付与する。
 オプションは申し込めば無償でもらえるが、権利行使時に二万二千三百円を払い込む必要がある。子株還流後の発行済み株式数は八百二十万株だから、全株主が払い込めば、千八百億円強が集まる計算。ただ、権利行使が可能になる十一月十二日以降、株価が二万二千三百円を上回っていなければ、巨額調達のもくろみはふいになる。(以下略)

invoice_stockoption.jpg
(出所:日本経済新聞)

非常に「クリエイティブ」な施策ですね。
非常にいろいろなアクションが関連しますので、今年に入ってからのインボイスのファイナンスに関するアクションを整理しながら、その全貌の意味を探ってみたいと思います。
参考:
同社プレスリリース一覧
同社株価チャート(Yahoo!Japan Finance)
2月10日:
当社の株主に対するストックオプション(新株予約権)付与に関するお知らせ

http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20040210.pdf
一連のスキーム上は一番最後になりますが、一番最初に、株主へのストックオプションの付与のアナウンスがありました。

1.当社の全株主に対し新株予約権を1 株につき1 個発行する理由
当社は、平成14 年2 月のJASDAQ 上場来、株主の方に対する利益還元を経営の重要課題と認識し、期末時の株主の方に対し、当期利益の50%を配当することを継続しておりますが、中間期末時におきましては、当該期の利益が未確定であるため、不本意ながら、中間期末時の配当を実施しておりません。
しかしながら、当社は、中長期に渡り継続して株主となっていただける方に対し、期末時のみに配当させていただくことが妥当であるか否かという議論を重ねる過程において、中間期においても配当に代わる株主優待制度を実施するべきであるという結論にいたり、このたび、株主平等の原則の下、当社株式1 株につき1 個の新株予約権を発行することを決議し、平成16 年9 月末日の株主の方に対し、ストックオプションを無償にて付与させていただくことといたしました。

つまり、(上記を読む限りでは)「中間配当の代わりです」という説明です。
同社の有価証券報告書(P55)によると、今年3月末の同社の利益剰余金は838,590千円しかありませんが、その他の資本剰余金(資本準備金減少差益および、大半は自己株式処分差益)として3,791,949千円もの額が計上されています。
商法の中間配当の規定(商法293条ノ5�)を見ると、このその他の資本準備金を原資とすれば必ずしも中間配当が行えないわけではないと思いますし、取締役の責任が問われるわけでもない(同条�)と思いますが、その後、10万株の自社株買いを行って36億円を使っちゃっているところから考えると、この時点ですでにその自社株買いを想定して中間配当はしない、ということにされたのかも知れないですね。
(追記:2004/9/2 16:46)
このストックオプションの条件は、その後の株式分割で行使価格が246,000 円→22,300 円に変更されてます。[6月24日]
http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20040624.pdf
また、譲渡制限もはずされることになりました。[6月28日]
http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20040628.pdf(/追記)
先が長いので、とりあえず、本日はこのへんで。
(to be continued)
(以下、参考資料)

第二百九十三条ノ五
営業年度ヲ一年トスル会社ハ定款ヲ以テ一営業年度ニ付一回ニ限リ営業年度中ノ一定ノ日ヲ定メ其ノ日ニ於ケル株主ニ対シ取締役会ノ決議ニ依リ金銭ノ分配ヲ為スコトヲ得ル旨ヲ定ムルコトヲ得
� 前項ノ決議ハ同項ノ一定ノ日ヨリ三月内ニ之ヲ為スコトヲ要ス
� 第一項ノ金銭ノ分配ハ最終ノ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ第一号乃至第四号ノ金額ヲ控除シタル残額ニ第五号乃至第七号ノ金額ヲ加算シタル額ヲ限度トシテ之ヲ為スコトヲ得
一 最終ノ決算期ニ於ケル資本及準備金ノ合計額
二 最終ノ決算期ニ関スル定時総会ニ於テ積立テタル利益準備金及金銭ノ分配ノ時ニ積立ツルコトヲ要スル利益準備金ノ合計額
三 最終ノ決算期ニ関スル定時総会ニ於テ利益ヨリ配当シ若ハ支払フモノト定メ又ハ資本ニ組入レタル額及第二百十条第一項又ハ第二百十一条ノ三第一項ノ決議ニ依リ定メタル株式ノ取得価額ノ総額ノ合計額
四 前三号ニ掲グルモノノ外法務省令ニ定ムル額
五 最終ノ決算期後減少シタル資本準備金又ハ利益準備金ノ額ヨリ其ノ資本準備金又ハ利益準備金ノ減少ニ係ル第二百八十九条第二項各号ニ定ムル額ヲ控除シタル額
六 最終ノ決算期後減少シタル資本ノ額ヨリ其ノ資本ノ減少ニ係ル第三百七十五条第一項各号ニ定ムル額ヲ控除シタル額
七 前二号ニ掲グルモノノ外法務省令ニ定ムル額
� 会社ハ其ノ営業年度ノ終ニ於テ貸借対照表上ノ純資産額ガ第二百九十条第一項各号ノ金額ノ合計額ヲ下ル虞アルトキハ第一項ノ金銭ノ分配ヲ為スコトヲ得ズ
� 営業年度ノ終ニ於テ前項ノ純資産額ガ同項ノ合計額ヲ下リタル場合ニ於テハ第一項ノ金銭ノ分配ヲ為シタル取締役ハ会社ニ対シ連帯シテ其ノ差額、若シ分配シタル金銭ノ額ガ其ノ差額ヨリ少ナキトキハ分配シタル金銭ノ額ニ付賠償ノ責ニ任ズ但シ取締役ガ前項ノ虞ナキモノト認ムルニ付注意ヲ怠ラザリシコトヲ証明シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
� 第一項ノ金銭ノ分配ハ第二百九条第一項、第二百二十二条第一項、第二百二十二条ノ六第一項但書(第二百二十二条ノ十ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第二百八十条ノ二十第二項第十一号及第二百九十三条ノ規定ノ適用ニ付テハ利益ノ配当ト看做シ、第一項ノ一定ノ日ハ第二百二十二条ノ六第一項但書(第二百二十二条ノ十ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)及第二百八十条ノ二十第二項第十一号ノ規定ノ適用ニ付テハ営業年度ノ終ト看做ス
� 第二百六十六条第二項第三項及第五項ノ規定ハ第五項ノ取締役ノ責任ニ、第二百九十条第二項ノ規定ハ第三項ノ規定ニ違反シテ金銭ノ分配ヲ為シタル場合ニ之ヲ準用ス

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誕生日

数日前に誕生日を迎えました。(はい、つまりロマン追求型の乙女座です。)
GREE上の知り合いの方々からGREEの「よせがき機能」でお祝いの言葉をいただきました。この場をお借りして、お礼の言葉を述べさせていただきます。ありがとうございます。
8月(夏休み)生まれの悲しさで、小学生以来、家族以外に誕生日を祝っていただいたことがほとんどないのですが、なんか、誕生日パーティやってもらった気分。
ほんと、どうもありがとうございます。
GREEにも感謝します。
ではまた。
birthday2004.jpg

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会計参与制度と訴訟対応、ブランディング

昨日のエントリーの追記、です。
会計参与制度は、万が一、訴訟されたときの対応という点でも結構、リスクがあるんじゃないでしょうか、というお話。
そもそも企業のリスクが高そう
中小企業が、わざわざコストを払って会計参与制度を導入しようというからには、当然、銀行融資などを引き出しやすくしたい、などの「目的」があるはずです。どう見ても優良な会社は、ほっといても銀行が金を出したがるでしょうから、会計参与のお墨付きをもらいたがる企業というのは、一定以上のリスクがある会社が多いということになるんじゃないでしょうか。
元データの信頼性が弱そう
また、会計参与制度を利用しようというのは未公開の中小企業でしょうから、内部統制制度もちゃんとしていないことが多いでしょう。最終的な財務諸表の「表示」だけをちゃんとするという責任しか無いのならまだしも、財務諸表を作るための元データがそもそも怪しい可能性も大です。
「人のせい」にできない
さらに、監査であれば、財務諸表の作成に関する責任は経営者にあり、監査意見に関する責任は監査人にあるという「二重責任の原則」があります。
また、最終的に経営者から「経営者確認書」をもらって、「財務諸表の作成責任が経営者にあること」「内部統制を構築・維持する責任が経営者にあること」「監査の実施に必要なすべての資料が監査人に提供されたこと」等を経営者に確認して、「あんたが、一次的責任を負うんだからね」というのを納得してもらった上で、監査というのはあくまで「サンプリング」だから、専門家としての注意義務を払って一生懸命監査したけどわからないものがあっても、それはしかたないでしょう、というロジックが一応確立しています。
これに対して、会計参与はまさに「財務諸表を作る本人」だから、経営者に確認書をもらうというのもヘンですし、社長に確認書をもらおうとしたとしても、中小企業の場合、「財務諸表の作成責任が経営者にある、つっても、その財務諸表の作り方がわかんねーからあんたに頼んでんだろ?」と言われそうです。
対訴訟ノウハウが未蓄積
(幸か不幸か)監査は世界的にそうした訴訟に関するノウハウや、訴訟が発生したときのため(というだけではないですが)のエビデンスの保存などのノウハウが確立されてます。
会計参与は「世界に類を見ない」制度だし、判例もまだ無いので、訴訟されたときに、どこまでのことをやっていれば「セーフ」なのかという線引きが非常に難しい。
フツーの中小企業の会計担当の取締役であれば、裁判で「簿記とかよくわからなくて・・・」ということで、払うべき注意義務のハードルは低そうですが、税理士等がやるからには「よくわかりませんでした」とはいいづらそう。
企業が倒産したときにも、管財人は金のありそうなところを狙ってきます。社長や従業員などはスッテンテンのことが多いでしょうから、税理士さん等はターゲットにされやすそうですね。
ブランディング
公認会計士とか税理士であれば、それぞれ業界団体があり、その「ブランド」を維持・発展させるために、教育制度やら懲戒制度やらいろいろやっているわけです。手弁当の人件費も入れれば、年間十億円単位がブランド維持のコストにかかってるかも。
しかし、会計参与制度はどちらの業界団体にとっても「本丸」ではないので、「会計参与」というブランドを積極的に守ろうとする力はあまり働かないかも知れません。
一旦、「会計参与制度を利用するのは怪しげな会社」というような「ブランドイメージ」が付いちゃった日には、負のスパイラルに入っちゃいますので、それを挽回するのはすごく大変かも知れません。
(ではまた)

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会計参与制度はビジネスとして成り立つのか?

この会計参与という制度も、「絶句・・・コメントが思いつきません」という感じで、今までコメントしていませんでしたが、他の方のblog等を読ませていただいているうちに頭がだんだん整理されて来ました。
本日はこの会計参与制度が(法律的にはともかく)経済的に成り立つのかという点について考えてみたいと思います。
会計参与とは
今の段階で考えられている会計参与とは、次のような会社法上の「機関」です。
・公認会計士や税理士等のみが会計参与になれる
・会計参与は、会社または子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人または支配人その他の使用人を兼ねることができない
・株主総会で選任し、任期や報酬等については、取締役と同様の規律に従う
・計算書類を作成し、株主総会において説明義務を負い、計算書類作成に必要な権限を有する
・会社および第三者に対する責任について、社外取締役と同様の責任を負う。
税理士マーケットの法的な構造
まず税理士の仕事をビジネスとして考えた場合の構造ですが、税理士法では、

(税理士業務の制限)
第五十二条  税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。

となっています。この「税理士業務」とは何かというと、

(税理士の業務)
第二条
 税理士は、他人の求めに応じ、租税(略)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一  税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法 (昭和二十八年法律第六号)第二章 の規定に係る申告、申請及び不服申立てを除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
二  税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十四条において同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
三  税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法 (昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号 イからヘまでに掲げる事項及び地方税に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)

の3つの業務と定義されています。
先の第52条をよく読んでいただくと、「”業として”行ってはならない」とは書いていないので、「税務代理」や「税務書類」の作成はもちろん「税務相談」についても、たとえ「一回きり」「タダ」であっても行ってはならない、ということになります。
これは、極めて「強い」規定で、この3業務に関しては税理士の絶対的な「独占」を定めているわけです。
比較として、弁護士法における同様の規定を見てみても、

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
第七十三条  何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。

というように、「金目当てや商売としては」弁護士業務をやっちゃいけないよ、とは書いてありますが、「タダでやるのでもダメ」とまでは言ってません。
つまり、借金問題でモメている知り合いを親切で仲裁してあげたり、一回だけ知り合いの借金の回収を代行してあげてちょっとお礼をもらったりするのは、別にかまわないわけです。
これに対して、税理士業務の場合には、たとえ、親切で知り合いの税金の相談に乗ってあげる、とか、知り合いの会社の節税の方法の相談に「タダ」でのってあげたとしても税理士法違反、ということになります。(・・・・・・・・・というのが、税理士会の見解です。)
「記帳代行」マーケット
もうひとつ、税理士法第2条の規定として、前述の第1項の他に、

2  税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。(以下略)

とあります。
この「記帳代行」については法律で税理士が独占を約束された業務ではないということですが、実際、戦後、税理士法ができて以降、昔はこの「帳簿の付け方がよくわからないので代わりにお願いします」というニーズは、かなり大きかったのではないかと思います。
ところが、この業務は税理士以外が行ってかまわないため、最近では、激安で帳簿をつけてくれる(税理士でない)業者もたくさんこの「市場」に参入してきました。
従来、税理士さんにお願いすると3万円とか5万円とかかかっていた業務が、1万円以下で処理できてしまう、ということになると、当然、税理士業務の収益性は圧迫されてきます。
日本の会社は3月決算が多いなどで、税務申告業務等は季節変動が極めて大きいため、月次で安定的に収入がある記帳代行業務があってはじめて、ビジネスとして季節的なバランスがとれるのではないかと思います。月次の収入がほとんどなくて、申告シーズンだけに業務が集中し、そのピークにあわせた設備投資や人員確保をしなくてはならないとなると、事業として成り立たない、ということなんでしょうね。(よく存じませんが・・・。)
また、以前はコンピュータで帳簿を作成しようとすると、何百万円もする会計専用のマシンが必要でしたので、一般の企業が帳簿作成をコンピュータ処理しようとすると大きな障壁がありましたが、最近のパソコン用会計ソフトは(「ERP」を名乗るくらい)10万円前後でも非常に出来がよくなってきてますので、かなり誰でも(転記ミスや貸借が合わないということもなしに)帳簿を付けられるようになってきてしまったわけです。
つまり、経済学的に考えると、税理士の仕事も、確実に「デジタル」によるコンバージェンス(代替・浸食)が進んできている、という状況かと思います。
会計参与制度は、こうした「税理士ビジネス・マーケットの変遷」という視点から考えた場合、「新たな独占(寡占)領域を設定」し、「月次の収入を増加させうる」制度だ、ということが言えるんじゃないかと思います。
監査論の立場から見た会社法制の現代化
JICPAジャーナルの6月号で、「会計法制の現代化に関する要綱試案をめぐって」という座談会が載っているのですが、その中で青山学院大学経営学部の監査論の八田進二教授が、

一連の会計法制の改革の流れを見ている限り、非常に残念ではありますが、どうも監査論といいますか、監査の理論的な枠組みという視点、もっと具体的にいうならば、会社のモニタリングシステムといった大前提に関わる議論が十分にされていないのではないかと思われます。少なくとも近時の一連の商法改正において監査論の研究者とか学者が参画したということを耳にしておりません

とおっしゃってます。
そう言われてあらためて考えてみると、確かに、監査論の立場から見た場合、会計参与制度によって、なぜ企業の財務諸表の質が向上するのか、という理論付けは難しいような気がします。
会計参与は、なぜ財務諸表の信頼性を高められるのか?
会計参与は「作る側」であって、「検証する側」ではないので、会計参与は明らかに「独立した第三者」による財務諸表の質の向上とは違いますね。
委員会等設置会社でいうと、計算書類を作成するよう指定された執行役(商法特例法第21条の26)に相当する役目ということでしょうか。
取締役や監査役などからは独立しているので、運用によっては「内部監査部門」的な位置づけは可能かも知れませんが。
また、法律論としてはそれでいいとして、「ビジネス」として見た場合、「これで月にいくらくらいの収入になって、どのくらいのリスクと手間があるのか」というのが重要ですよね。
ニーズ(裏返せば何をもって計算書類の質を高めるかという根拠)別に考えてみると:
まず「計算書類を作成する特命社外取締役」(社外CFO)としての高度なニーズと考えた場合、月に50万円でも70万円でもニーズはあるかも知れないですね。ただし、上場企業の経理経験者など、計算書類がちゃんと作れる人は税理士や会計士以外にも世の中にいっぱいいるわけで、何も資格で制限しなくていいような気がします。
「監査」「内部監査」としてのニーズで考えた場合には、作業量としては年間最低でも200〜300万円くらいかかるボリュームがあるのではないかと思います。つまり、ちゃんと銀行や取引先に「確認状」なども送付したり、内部統制状況が正確な財務諸表を作成できる状態になっているのかどうか、というようなところまでチェックするというイメージですが。
「監査マニュアル」って、最低でも厚さ10cmくらいにはなるので、そういう項目をひととおり調べるだけでもすごい手間がかかります。
しかし、これだけのニーズがあるなら、そもそも会計参与ではなく、本当の公認会計士による監査にしちゃったほうがいいですよね?
会計参与は「作る側」の人間なので、「独立性」がありません。「自分で作った財務諸表」をいくら自分で「正しい」と言ってみても信用力には限界があるわけで。
次に「レビュー」程度のニーズがあるとした場合には、作業量から考えた必要人件費は、(少なくとも)100万円から200万円でしょうか。
これも「作る」人じゃなくて、「独立性のある人」がやったほうがより信用は高まるのではないかと思います。
また、「そもそもちゃんと財務諸表が作れないので、正しい会計基準でちゃんと作って」という(レベルがあまり高くない)ニーズだとすると、月に数万円程度のフィーを得るのがせいぜいではないかと思います。
こうなると逆に、会計参与を受ける側として、その程度のフィーで、単なる記帳代行に比べてはるかに大きい法的な責任とリスクを背負い込んでしまっていいのかという供給者側の問題が生じると思います。
手続きを省略してコストを安くすることはいくらでも可能でしょうけど、「確認」や「現金等の実査」もしないで、「この財務諸表はOK」と言えるのでしょうか?
この会計参与制度、「供給曲線」と「需要曲線」がちゃんとクロスしないような気もします。
世界的にも類を見ない「機関」なので、今後のグローバル化の流れの中で、どういう議論になっていくのかについても・・・興味深いですね。
(ではまた。)
(ご参考)
会計参与報告書
http://krp.web.infoseek.co.jp/mt/archives/000206.html
報告書利用者の視点から、制度について言及されてます。
会計参与?
http://krp.web.infoseek.co.jp/mt/archives/000148.html
中小企業に「会計参与」 税理士台頭に警戒感も
http://koh.cocolog-nifty.com/blog/2004/08/819.html
kohさんが紹介されていた、公認会計士協会の
「会計プロフェッションのあるべき姿と今後の対応(中間報告)」
http://www.jicpa.or.jp/technical_topics_reports/999/999-20040115-02-02.pdf
も、公認会計士・税理士間の縄張り争いの考え方についてよくまとまっていると思います。

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監査法人の有限責任化と(ご自分の)ディスクロージャー

企業の会計監査を行う監査法人は、パートナーと呼ばれる出資者(「社員」)が「無限責任」を負うことになってます。
株式会社や有限会社など有限責任の法人では、出資者(株主など)は、会社がいくら債務超過になろうが出資以上の責任を負うことはありません。つまり、株を買っていた会社が倒産しても、最悪、株券が紙くずになるのをあきらめれば済むわけで、「債務超過で債権者に返す金が無いので、株主として責任を取ってあと100万円出してくれ」というようなことは、商法上は言われないことになってます。
これに対して、監査法人は法人の金で債務が払いきれないとなれば、パートナーが個人の金をつぎ込まなければなりません。(弁護士法人、税理士法人、司法書士法人なども同様。)
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本日の日経朝刊「会計ビッグバン、苦悩する会計士2」(15面)の記事にも、

ある大手監査法人の幹部は自宅を妻との共同名義にしている。「たとえ賠償金を支払って破産しても、家だけは残したい」。心のどこかに、そんな思いがあるという。

という、涙ぐましい話が載ってます。
上記の記事には、

二〇〇六年度にも施行される新会社法では、代表訴訟の対象に会計士も加わる見通しだ。米国のように賠償請求を担当会計士に限定する「有限責任パートナーシップ」(LLP)制度は、まだ日本に導入されていない。直接かかわった会計士以外も連帯責任を取るケースが多いとみられる。

とありますが、LLPではないものの、すでに本年4月から施行された改正公認会計士法において、「指定社員制度」(公認会計士法第34条の10の4)という、監査法人のパートナーの責任を一部限定する制度が導入されてます。

第三十四条の十の四
監査法人は、特定の証明について、一人又は数人の業務を担当する社員を指定することができる。(本条、以下略)

第三十四条の十の五
監査法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、各社員は、連帯してその弁済の責めに任ずる。
(中略)
4 前条第一項の規定による指定(注:指定社員制度の指定)がされ(略)ている場合(略)において、指定証明に関し被監査会社等に対して負担することとなつた監査法人の債務をその監査法人の財産をもつて完済することができないときは、第一項の規定にかかわらず、指定社員(指定社員であつた者を含む。以下この条において同じ。)が、連帯してその弁済の責めに任ずる。(以下略)

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つまり、上図のように、指定社員が上場企業などの監査をして、その会社から「監査のやり方がまずいために損害を被ったので損害賠償してくれ」等の損害賠償請求が行われた場合、今までは監査法人の財産で払いきれない場合には、全パートナーが自らの資産を売っぱらってでも賠償しなければならなかったのが、新しい「指定社員制度」を使えば、監査を行った「指定社員」だけが無限責任を負い、他のパートナーは有限責任という形になります。
(ちなみに、監査した会社等以外の第三者から訴訟された場合などについては、全員無限責任のまま。)
監査法人自体のディスクロージャーは?
有限責任化が進むことが監査法人にとって結構なことだというのはよくわかるのですが。
監査法人は、いわば「ディスクロージャーの総本山」にもかかわらず、よく考えると、ご自分の財務状況を公開してないですよね。(法的には内閣総理大臣(金融庁)には開示しなければならないですが。[公認会計士法第34条の16])
どこの監査法人の若手に聞いても、「いや、財務内容を知ってるのはパートナー以上だけで、僕たちもウチの財務内容は知らないんです・・・」という答えが。
一般に、企業が他の会社等と取引する際には、相手の会社の財務内容を審査します。
監査法人は今までは無限責任だったので、さすがに何百人も会計士が集まっている大手監査法人であれば、それなりの担保能力があると考えてもよかったかも知れませんが、有限責任の法人+パートナー2人程度の個人財産、ということになると、(さすがにパートナー個人の方の個人資産を開示してくれと言うわけにもいかないでしょうから)、法人としての財政状態は開示していただく必要があるんじゃないでしょうか。
大手監査法人の信用情報も一社分見てみたのですが、貸借対照表は載ってませんし、損益計算書も前々期までしか載ってません。(前々期までは黒字ではありましたが。)
パートナー制だと、利益は配当しちゃって内部留保が少ないかも知れませんし、もし仮に債務超過ギリギリだったりしたら、指定社員制度を導入すると、頼りになるのは指定社員2名程度の個人資産だけ、ということになります。
実際には賠償責任保険もありますし、資産だけではなく、監査の質や内部的な審査や教育体制なども評価すべきなのでしょうけど、それにしても「ディスクロージャーの総本山」がディスクローズしない、というのも、ちょっとナニですよね?
(海外の会計事務所でも、ホームページ等での財務内容の開示が見あたらないのですが、開示しないのが「当然」なのでしょうか?)
少なくとも今回の改正で、契約を指定社員制度に改訂するというような場合には、監査される側の会社にとっていいことは直接には何もありません。監査法人との契約は、取締役や監査役会や監査委員会等の責任になるわけですが、「指名社員制度?いいんじゃない?」と、よく考えずに簡単にOKしちゃうと、いざというときに、「注意義務を欠いた」と言われることになりかねないんじゃないか、とも思いますが、どうでしょうか?
(では。)

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社外取締役とパフォーマンスの相関

「社外取締役の調査結果に愕然・・・」に対してLaw Maniacのminoriさんにトラックバックいただきました。

「公開企業全体では、まだ3社に2社もが社外取締役がいない会社だったとは・・・。」
と、驚いて(呆れて?)いらっしゃっていて、「え、そこで驚くんですか」と、私もびっくり。

すみません・・・不覚にも(あたりまえのこと?で)驚いてしまいました・・・。
ガバナンスがどうのこうのという話でなくとも、社長のご意見番とか、業界の識者とか、そういう外部のアドバイスのできる人を取締役会に加えている企業というのは、もうちょっとあるんじゃないかなという気が(漠然と)してたのですが、日本の公開会社というのは取締役を本当に「内輪」だけで固めてるんですね。
この日経の調査でいう「社外取締役」というのは、minoriさんがあげておられる厚生年金基金連合会の独立性がある社外取締役の定義ではなく、単純な商法上の社外取締役のことでしょうから、なおさらビックリ。
つまり、(その会社に勤務したことのない)大株主の役職員とか、顧問弁護士とか、主要取引先、メインバンク、VCからの派遣の人が社外取締役になっているのを含めても1/3しかいないということですので。
(そういう「元、外の人」もいるのでしょうけど、単に「経営の監督」だけをやってるのではなく、「業務を執行」しちゃってるんでしょうね。)
ちなみに、同じくminoriさんが書かれている「まだ、謎−社外取締役と企業パフォーマンスの相関」についてですが。
「社外取締役の導入=株主価値の重視=企業パフォーマンスの向上」という図式は、理論上、必ず成り立たつわけはないのは明らかかと思います。
(以下、統計として処理するのは難しそうですし、学術論文にはなりにくいと思いますが)、極論すれば、その辺を歩いているオッサンを取締役に据えても、定義上は「独立性の高い社外取締役」になっちゃうわけで。
社長が「商法等の取締役の要件を満たしていれば誰がやってもパフォーマンスは同じ」でないのと同様、社外取締役も「誰がやるのか」が重要だと思います。
オリックスの宮内氏とかが社外取締役に入ったら取締役会がピシーっとしそうですし、そこらへんのオッサンを取締役会に連れてきても、あんまりピシーっとはしなさそう。
また、どのくらい経営にinvolveしてるか、というのも重要なはず。
時間が長ければいいというものではないです(フルタイムなると、逆に精神的、経済的な独立性が損なわれる場合も考えられます)が、3ヶ月に1回1時間くらいしか来ない社外取締役というのが、パフォーマンスに大きな影響を与えるとも思えません。
最も重要な要素として、(ここまで来ると、まったく統計とか学術的な処理が不可能そうですが)、社長との相性というのもあるかと。
同じこと言われても「なるほど、一理ある」と思える人と「けっ」としか思えない人っていますよね。
「上場会社、または、売上げ○百億円以上の会社の社長経験者か?」
「コンサルティング会社等で、経営指導に携わっていた経験があるか?」
等のフィルターをかけてみたら、ちょっとは相関が出てくるような気もしますが。
(出なかったりして・・・)。
(ではまた。)

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証券会社がバイオガス発電事業

本日の日経新聞13面の記事で、三菱「証券」がマレーシアでバイオガス発電をやっているという記事が・・・。

三菱証券のバイオガス発電、温暖化ガス削減、国連事業認定へ。
 三菱証券がマレーシアで手掛けるバイオガス発電が、京都議定書の温暖化ガス排出権取得制度「クリーン開発メカニズム(CDM)」の事業として国連から認定される見通しとなった。同社が認定を得るのは二件目。事業開発での実績をもとに、事業投資仲介や排出権取引仲介へも展開したい考え。

三菱「商事」の間違いでしょ?あはは、ひどい誤植もあったもんだ、と思って調べてみたら・・・なんと、ホントに証券会社がクリーン開発に取り組んでらっしゃるようです。
三菱証券:クリーン・エネルギー・ファイナンス委員会の活動
http://www.mitsubishi-sec.co.jp/kojin/kouken/cef.html

クリーン開発メカニズム(CDM)に関する業務内容
CDMとは、京都議定書に定められた温室効果ガスの削減目標が課された先進国が、ホスト国(発展途上国)の『持続可能な発展に寄与』する『温室効果ガス削減』プロジェクトを実施し、実施されなかった場合に比べ、追加的な排出削減があった場合、削減量に対しCertified Emission Reduction(CER)と呼ばれる証明(炭素クレジットとも言う。)を発行し、先進国の削減達成に利用するものです。
クリーン・エネルギー・ファイナンス委員会では、CDMの実現可能性の検討やプロジェクト設計書(PDD)の作成をはじめ、炭素クレジット取得のための手続きのアドバイス・代行等、総合的な支援を行うことにより、発展途上国の持続可能な発展と温室効果ガスの削減に貢献しています。

検索してみると、今まで、日経金融や日経産業などでは報道されていたものの、日経本紙ではほとんど取り上げられていなかったので、あまり目に付かなかったようで。

新しい波(2)三菱証券——温暖化ガスの排出権ビジネス(動き出す金融CSR)
2004/04/22 日経金融新聞3面
 三菱東京フィナンシャル・グループの証券拠点として傘下の四証券を統合して、二〇〇二年九月に発足した三菱証券が、地球温暖化対策の排出権ビジネスで“独走”している。
 京都議定書で合意した二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出量を減らすメカニズムは、排出権取引、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)の三種類。このうち、CO2排出権を商品取引のように売買する排出権取引に金融界の関心が集まるが、三菱証券が手掛けるのはCDMビジネスだ。

この記事によると、この委員会の波多野委員長は三菱銀行出身で、一九八〇年代に米バンクオブカリフォルニア出向中、企業の社会的責任を求める環境団体の人たちと応対し、金融と環境の接点に目覚めた、とのこと。
前記の業務案内では、

元来、証券会社は、資金調達はもとより、ベンチャー企業を育成し、その株式上場を実現する為の各種支援を行う機能を有しています。クリーン・エネルギー・ファイナンス委員会では、それらで培ったノウハウを発展途上国の再生可能エネルギー事業の推進に活用し、地球環境の保全に貢献することが役割と考えています。

とは言ってらっしゃいますが、それにしても、CDM事業は単に排出権をバーチャルにトレードするのと違って、実際に対象となるプロジェクトの事業化をする必要があるので、非常に大変そうです。
うーん、
「途上国で発電事業をやっている証券会社がある」 93へえ
という感じですね。
(ではまた。)

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池田信夫氏、blog開始

「切込隊長BLOG」で知ったのですが、8月上旬から「あの」池田信夫氏がblogを開始されてます。
「池田信夫 blog」:http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/
CNETなどにも寄稿されてますが、hotwiredの連載終了後、氏のホームページ
「池田信夫の著作物」:http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/
以外でネット上で読めるものとして貴重な情報源になる可能性があります。(本日現在、まだ、under constructionと書いてあって、「まだテストなので、そう頻繁に更新するつもりはない」とのことですが、、)
池田さんが書かれることに対しては、嫌悪感を感じたり、大きくうなずいたりと、人によって反応は様々ですし、私も100%氏の意見に賛同するものではまったくありませんが、他の人からは得られない意見を伺えるという点は間違いないかと思います。
直接お話させていただくと、深い見識をお持ちで非常に常識的な感じを受ける方なのですが、文章となるとちょっとトゲを感じる方も多いようですし、なぜか(つまり、経緯はよく存じませんが)、行く先々で(山形浩生氏とのやりとり(残念ながら主要な部分は削除されてますが)、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)を相手取った訴訟など)、次々に「事件」が起こるのも事実。
そういう意味では、(ご本人のお気に召す表現かどうか存じませんが・・・)、「日本の情報通信産業政策界のマイケル・ムーア」という感じもいたします。
一ファンとして、blog、期待しております。
(ではまた。)

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社外取締役の調査結果に愕然・・・

22日の日経朝刊の記事に、上場企業での社外取締役の起用が増えているという話が載ってました。

社外取締役、3社に1社が起用——上場企業、経営監視を強化。
 社外取締役を起用する上場企業が急増し、三社に一社にあたる六百三十社に上ることが日本経済新聞社の調べで明らかになった。(略)社外取締役の設置が義務付けられる委員会等設置会社への移行が増えたうえ、従来の監査役制度をとる会社でも、積極的に社外取締役を導入する動きが目立つ。(略)
 全国の証券取引所(東証マザーズ、大証ヘラクレスを含む)に上場する三月期決算の二千百八社を対象に、六月の株主総会後の状況を調査した。社外取締役を導入している企業は昨年(四百九十三社)より二八%増え全体の三割を占める。人数も千百六十五人と昨年(九百十八人)から二七%増えた。導入企業では取締役の五人に一人が社外取締役だ。
 取締役会で社外取締役が半数以上を占めるのは三十社と四割増。このうちエーザイやHOYAなどは社外取締役の人数が社内取締役を上回る。

「委員会等設置会社」では社外取締役を置くことを義務づけているので、委員会等設置会社に移行したところは当然、社外取締役を置いているということになります。
コーポレート・ガバナンスが成功するかどうかの一つの鍵は、「その会社の業務をよく理解して前向きなアドバイスをくれる独立した立場の社外取締役がいるかどうか」だと思いますので、委員会等設置会社になるかどうかにかかわらず、社外取締役を設置するのはいいことではないかと思います。
が。
公開を目指すベンチャー企業だと、VC等から資金を取っている関係もあり、社外取締役がいない会社の方が珍しいのではないかと思いますが、公開企業全体では、まだ3社に2社もが社外取締役がいない会社だったとは・・・。全公開企業の取締役会の2/3以上が社外取締役になる、というような姿は、まだ当面先のこととなりそうです。
(かなりびっくり。では。)

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