以前は、一般の人は、証券取引法というものが存在することくらいは知っていても、まああまり興味のわく対象ではなかったと思いますが、最近は、西武や日本テレビ、メディア・リンクスの架空取引にライブドアなども関与?というようなことで、証券取引法関連の事件が連日、マスコミの紙面に踊っているので、結構、関心が高まってきているのではないかと思われる(?)今日この頃ですが、
そんな中、昨日(平成16年11月12日)付で金融庁から、「証券取引法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案に対するパブリックコメントの結果について」
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/syouken/f-20041112-2.html
が公表されました。
平成16年10月7日の「証券取引法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(案)の公表について」
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/syouken/f-20041007-2.html
(1) 目論見書制度の合理化
(2) 公開買付制度の改正
� 公開買付制度への投資証券の導入
� 「3分の1ルール(強制的公開買付制度)」の適用除外要件の拡大等
(3) 投資事業有限責任組合等の出資持分の証取法上の有価証券への追加
等)
を受けたもの。
具体的な、証券取引法施行令の改正案は、以下の通り。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/syouken/f-20041007-2/02.pdf
以下、提出されたコメントの概要と、コメントに対する金融庁のコメントが書かれてましたので、これらのコメントやコメントに対するコメントに対するコメントを書いておきます。
【令第1条の4】
みなし有価証券化される投資事業有限責任組合法第3条所定の事業を営む組合の出資持分に関しては、現行の投資事業有限責任組合契約に関する法律施行令第13条で定める者を、(1)定義府令第4条の適格機関投資家の範囲に追加するか、(2)証券取引法施行令第1条の4第1項の場合における人数計算から除外するか、のいずれかの方法をとることが実務上必要かつ適切である。
(考え方)
適格機関投資家は、証券取引法において「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者」とされ、投資事業有限責任組合契約に関する法律施行令第13条で定める者(適格機関投資家を除く。)をそのまま証券取引法上の適格機関投資家とすることは困難である。
「令第1条の4」は、証券取引法第2条第3項第1号の「有価証券の募集」の定義で、「勧誘の相手方が多数の場合」の定義を原則として「50名以上」とし、この人数計算等について細かく定めている規定。
「投資事業有限責任組合契約に関する法律施行令第13条」というのは、
「投資事業有限責任組合契約に関する法律」第六条の二第一項、
(特定組合の組合員の資格等)
第六条の二 特定組合(組合のうち、特定中小企業等に該当する株式会社の発行する未公開株式(証券取引法第二条第十六項に規定する証券取引所に上場されておらず、かつ、同法第七十五条第一項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されていない株式をいう。)の取得及び保有その他の政令で定める事業(以下「中小未公開企業株式取得等事業」という。)の全部又は一部のみを営むことをその組合契約において約した組合以外のものをいう。以下同じ。)の有限責任組合員たる資格を有する者は、同法第二条第三項第一号に規定する適格機関投資家その他の政令で定める者とする。
で定められる「特定組合」の投資家になるための要件として、
(特定組合の組合員の資格を有する者)
第十三条 法第六条の二第一項 の政令で定める者は、次のいずれかに該当する者とする。
一 適格機関投資家
二 資本の額又は出資の総額が一億円以上の会社
三 民法第六百六十七条第一項 に規定する組合契約で投資事業を営むことを約するものによって成立する組合(その組合員のすべてが前二号又は次号から第七号までに掲げる者であるものに限る。)及び匿名組合契約に係る営業者(投資事業を営む者であって、当該営業者を相手方としてその投資事業のために匿名組合契約に基づく出資をする者のすべてが前二号又は次号から第七号までに掲げる者であるものに限る。)
四 私立学校法 (昭和二十四年法律第二百七十号)第四条第三号 及び第五号 に掲げる学校法人
五 外国の法令上前各号に掲げるものに相当する者
六 外国に所在する投資事業有限責任組合に類似する団体
七 中小企業総合事業団
八 当該特定組合の無限責任組合員が法人である場合におけるその役員及び使用人
等があげられているので、この条文の(適格機関投資家以外の)投資家も、「証券取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」第4条に定める適格機関投資家、つまり、
(適格機関投資家の範囲)
第四条 法第二条第三項第一号 に規定する内閣府令で定める者(以下この条において「適格機関投資家」という。)は、次に掲げるものとする。ただし、第一号から第十四号の二まで、第十六号、第十八号、第二十号、第二十号の二及び第二十二号から第二十四号までに掲げる者については金融庁長官が指定する者を除き、第十五号に掲げる者については金融庁長官が指定する者に限る。
一 証券会社
二 外国証券業者に関する法律 (昭和四十六年法律第五号)第二条第二号 に規定する外国証券会社(第八条の二において「外国証券会社」という。)の同法第二条第八号 に規定する支店
三 投資信託及び投資法人に関する法律 (昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十八項 に規定する投資信託委託業者
三の二 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十九項 に規定する投資法人
三の三 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第二十九項 に規定する外国投資法人
四 銀行
五 保険会社
六 保険業法 (平成七年法律第百五号)第二条第七項 に規定する外国保険会社等
七 信用金庫及び信用金庫連合会並びに労働金庫及び労働金庫連合会
八 農林中央金庫及び商工組合中央金庫
九 信用協同組合及び信用協同組合連合会並びに業として預金若しくは貯金の受入れ又は共済に関する施設の事業をすることができる農業協同組合連合会
十 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律 (昭和六十一年法律第七十四号)第二十四条第一項 の認可を受けた業者
十一 日本郵政公社法 (平成十四年法律第九十七号)第二十四条第三項第四号 に規定する郵便貯金資金又は同項第五号 に規定する簡易生命保険資金の管理及び運用をする者
十二 財政融資資金の管理及び運用をする者
十三 年金資金運用基金
十四 国際協力銀行
十四の二 日本政策投資銀行
十五 業として預金又は貯金の受入れをすることができる農業協同組合及び漁業協同組合連合会
十六 令第一条の九第四号 に掲げる者(法第六十五条の二第一項 の規定により登録を受けたものに限る。)
十七 銀行法施行規則 (昭和五十七年大蔵省令第十号)第十七条の三第二項第十二号 に掲げる業務を行う株式会社(当該業務を行う旨が定款において定められ、かつ、最近事業年度の末日における資本の額が五億円以上である場合に限る。)のうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)
十八 投資事業有限責任組合契約に関する法律 (平成十年法律第九十号)第二条第二項 に規定する投資事業有限責任組合
十九 厚生年金基金(最近事業年度に係る年金経理に係る貸借対照表(厚生年金基金令 (昭和四十一年政令第三百二十四号)第三十九条第一項 の規定により提出されたものに限る。)における流動資産の金額及び固定資産の金額の合計額から流動負債の金額、支払備金の金額及び過剰積立金残高の金額の合計額を控除した額が百億円以上であるものに限る。)のうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)及び厚生年金基金連合会
二十 都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第二十九条第一項第二号に掲げる業務を行うものとして同項の承認を受けた者(同項第二号に掲げる業務を行う場合に限る。)
二十の二 株式会社産業再生機構
二十一 有価証券報告書(法第二十四条第一項 に規定する有価証券報告書をいう。以下この号、第二十四号及び第三項において同じ。)を提出している者(企業内容等の開示に関する内閣府令 (昭和四十八年大蔵省令第五号)第一条第二十号の二 に規定する内国会社に限る。)で、毎年七月一日におけるその者の最近事業年度及び当該事業年度の直前事業年度に係る有価証券報告書に記載された貸借対照表における有価証券(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 (昭和三十八年大蔵省令第五十九号。以下この号及び第二十四号において「財務諸表等規則」という。)第十七条第一項第四号 に掲げるものをいう。第二十四号において同じ。)の金額及び投資有価証券(財務諸表等規則第三十二条第一項第一号 に掲げるものをいう。第二十四号において同じ。)の金額の合計額が百億円以上であるもののうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)
二十二 外国の法令に準拠して外国において次に掲げる業を行う者(個人を除く。)で、この号の届出の時における資本若しくは出資の額又は基金の総額がそれぞれ次に定める金額以上であるもののうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)
イ 証券業 一億円
ロ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十六項 に規定する投資信託委託業又は同条第十七項 に規定する投資法人資産運用業 一億円
ハ 銀行法 (昭和五十六年法律第五十九号)第二条第二項 に規定する銀行業 二十億円
ニ 保険業法第二条第一項 に規定する保険業 十億円
ホ 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律第二条第二項 に規定する投資顧問業(同条第四項 に規定する投資一任契約に係る業務に限る。) 一億円
二十三 外国政府、外国の政府機関、外国の地方公共団体、外国の中央銀行及び日本国が加盟している国際機関のうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)
二十四 有価証券報告書を提出している者(企業内容等の開示に関する内閣府令第一条第二十号の三 に規定する外国会社に限る。)で、毎年七月一日におけるその者の最近事業年度及び当該事業年度の直前事業年度に係る有価証券報告書に記載された財務書類(財務諸表等規則第一条第一項 に規定する財務書類をいう。)における有価証券に相当するものの金額及び投資有価証券に相当するものの金額の合計額が百億円以上であるもののうち金融庁長官に届出を行った者(当該届出が行われた日の属する年の九月一日から一年を経過する日までの間に限る。)
の中に入れてくれ、ということを言っているわけですが、それに対して金融庁側は、「学校法人や投資組合だからといって必ずしも「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者」というわけじゃないだろうから、(「適合性の原則」的に考えて)、「ダメ」、とおっしゃってるということですね。
パブコメを出した方は、恐らくVC等の「資金を調達する側」の方ではないかと思いますが、金融庁側としては、証券取引法にそれを入れてしまうと、他の私募等にも全部、(よく投資とかがわかっていない)学校法人等も入って来ちゃうので、やめてくれ、ということかと思います。
「なるべくベンチャー投資や企業再生を促進したい」という「経済産業省的観点」の有限責任組合法 vs 証券取引法、という構図とも言えます。
【令第1条の5第1号】
外国投資法人について、その設立準拠法ではなく、日本の証券取引法により、投資主の平等原則である強制公開買付けの規定の適用を及ぼすという政策は正しいのか。外国株については適用されているので、同じということなのか。
外国投資法人については強制公開買付け制度の適用除外とし、他方、外国法で公開買付けが必要である場合又は当事者が必要であると判断した場合には公開買付けを選択できるようにし、選択した場合には日本の証券取引法を適用するということはできないのか。
(考え方)
外国株券等と同様、外国投資証券であっても有価証券報告書を提出しなければならない投資法人が発行するものであれば日本国内に多数の投資者が存在すると考えられるため、投資者の平等原則及び投資者保護の観点から、公開買付制度の適用対象とするもの。
「令第1条の5第1号」は、「適格機関投資家向け勧誘に該当する場合」について定めたもの。
これらは、外国投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律第220条)に関して日本国内で募集を行う方が、何か不便を感じてらっしゃるのではないかと思いますが、よくわかりません。
【令第7条第3項第2号】
外国投資法人の投資主としての議決権行使の権限は、「公開買付者の所有」に含まれていないと理解して良いか。
(考え方)
外国投資法人の投資主(=社員)も含まれるよう措置したもの。
(参考)投資信託及び投資法人に関する法律上「投資主」は投資法人の社員と定義されているため、外国投資法人の投資主に当たる者を「社員」としたもの。
「令第7条第3項第2号」は、公開買付けの適用除外となる買付け等のうち買付後でも5%以下の所有割合になる証券取引法第27条の2第1項第3号の規定で、所有と同等の定義となるケースを定めた規定。
【令第7条第5項第1号】
公開買付けの適用除外となる買付け等には、特別関係者のみならず同項第2号及び第3号に掲げる「他の法人等」及び「当該他の関係法人等」が保有しているものも加えるべきだと思われる。20%の資本関係と兄弟会社とで前者の方が結びつきが強いとは思えないのが理由である。
(考え方)
これまでは、自己名義で総株主の議決権の100分の50以上を所有している会社の株券等を著しく少数の者から買い付ける場合は公開買付けの適用除外とされていた。これに対し、強制公開買付制度については、公開買付者とその特別関係者の株券等の買付け後の株券等所有割合が3分の1を超える場合は公開買付制度が適用されている。
このこととのバランスを考慮し、機動的な企業組織の再編等を可能とする観点から、「総株主の議決権の100分の50以上」についても、公開買付者とその特別関係者が所有する株券等に係る議決権により判断することとしたもの。
「令第7条第5項第1号」は、公開買付けの適用除外となる議決権の50%以上を持っている者が「特定買付け等」をする場合について定めたもの。
【令第7条第5項第2号】
現行の第2号ロ(祖父母会社からの買付け等)は削除されているが、特別関係者に祖父母会社が含まれるので、不必要であるから削除したのか。
(考え方)
貴見のとおりである。
【令第7条第5項第3号】
投資口の定義に外国投資法人の投資証券も入れるべきである。
(考え方)
貴見のとおりであり、外国投資法人の投資証券も含まれるよう措置した。
(注)「投資口」は証券取引法施行令第7条第5項第1号において外国投資法人の社員の地位を含めて定義している。
【令第7条第5項第6号】
営業譲渡が強制的公開買付けの規定の適用除外として明記される一方で現物出資が明記されていないのは、現物出資が合併や株式交換と同様「有償の譲受け」に該当しないとされているという趣旨か、それとも合併や株式交換と異なり「有償の譲受け」に該当するという趣旨か。
(考え方)
証券取引法上、現物出資による買付けは「有償の譲受け」に該当するものと解されており、公開買付けの対象となる。同法第27条の2第3項及び同令第8条第2項では、公開買付けが金銭以外のものをもって対価とする場合について規定している。
営業譲渡される「営業」が公開株式を保有していてそれがくっついて来ちゃう場合、ということでしょうか。
現物出資ならダメで、営業譲渡ならいいんですね・・・。
【令第7条第5項第7号】
現行の第6号は、売出しに応じて買う場合、届出又は発行登録した場合にのみ強制公開買付けの適用が除外されているが、通常、強制公開買付けの適用のある有価証券については、開示されている有価証券の売出しとなり、届出義務が免除されている。有価証券通知書が提出されるこのようなケースも適用除外すべきだと思われる。ディスクロージャーという観点では目論見書の作成・交付は義務付けられているので、差はないと思われる。
(考え方)
有価証券届出書又は発行登録追補書類が提出されている株券等の売出しに応じて行う株券等の買付け等が公開買付けの適用除外とされている理由は、既に有価証券届出書又は発行登録追補書類が提出され、当該株券等の買付け等の情報が当該株券等の株主を含む広く一般に開示されているからであり、その情報が広く開示されない有価証券通知書が提出されている株券等の買付け等を公開買付けの適用除外とすることは、目論見書の作成義務がかかっていても適切ではないと考える。
「令第7条第5項第7号」は、現行の第6号で、売出しに応じて行う場合には、届け出等が行われている場合に限りOKというもの。(番号ズレだけで、今回中身は変更無し。)
(以 上)
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