タイガース上場(等)と種類株式の活用(「多様なガバナンス」の可能性)

(以下、私個人として阪神タイガースを公開した方がいいとか悪いとかいう意見があるわけでなく、仮に公開するとしたら技術的にはこういう方法も考えられるのでは?というお話で、ビジネスモデル上、公開した方がうまくいくかどうかという検討もしてませんので、公開の是非についての「ワレ、何考えとんのじゃ!」といった熱烈タイガースファンの方々等のご批判はご容赦願います。<(_ _)>)
昨日の、「公開前ベンチャーの種類株活用(議決権比率の調整)」の続きですが、昨日のお話が「安定株主比率対策」的なお話だったのに対し、本日のお話は、より前向きに、
「今まで株式公開に向かないと考えられてきた企業に、株式公開による多様な資金調達手段を提供することはできないか」
「”会社=100%株主のもの”という単純なモデルではなく、より多様なコーポレート・ガバナンスの形に、種類株式が使えないか?」

といった観点から。
「カネ以外」の価値
第三者から見ても、「この会社の価値は単なる短期的な株価だけでは計れない」というのが明らかなケースには、公開時に種類株式を使った複数階層構造を取る意義が認められやすいかも知れません。
例えば、Googleのように研究開発型の企業で当面安定した環境で研究を行う必要性が高いとか、すごくブランドが浸透している老舗とか、ファンの多いコンテンツやコミュニティを抱えていたりする場合など。
つまり、当該ビジネスに「思い入れの強い」存在が不可分にくっついているケースは、単なる普通株式の公開というのが難しいケースも多いかと思います。
そうしたケースの最も典型的な例の一つとして、村上ファンドが主張している阪神タイガースの株式公開があるんじゃないでしょうか。この場合に、単純に普通株式を公開するのではなく、「経済的な持分」と、ファンクラブ向け種類株や経営陣向け種類株などを適当な比率で組み合わせることで、阪神電鉄は経済的価値を譲渡してキャッシュインするとともに、資産の時価評価も高め、しかも、ファンの意向も経営に反映されるようにできる可能性があるかと思います。
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上記のように、(例えば)ファンクラブが普通株式より強い議決権を持つ種類株式を保有し、ファンクラブで1人一票で投票して、その比率で、保有している議決権を不統一行使することにします。
「タイガース=阪神」でないとダメという場合には、阪神電鉄が、やはり経済的価値の割に強い議決権を持つ種類株式を持つとか、そんなもんいらん、とか。
普通株式だけの構造で公開すると、「金を持っている人=でかい発言権」であり、「口出ししたければ金持ってこい」ということになるわけですが、そうでない方法も理屈としては存在するわけです。
公開企業は必ず買収される可能性を開放しなければならないのか?
世間では「公開してるんだから、買収されるのは当たり前だ」というような議論も行われてますが、公開企業になるからには必ず他者から買収される可能性を解放しないといけないでしょうか?
必ずしもそうでもないと思うんですが。
証券化っぽい考え方でいくと、上記でいう普通株式は(経済的特性でなく議決権の面で)「メザニン」っぽい部分とも見れますが、そういった特性やリスクが適切に開示されて投資家がそれを正しく判断できれば、そういう証券が公開されてもいいと思います。
つまり、未公開なら他者から買収される可能性はゼロで、公開すれば100%オープンという「二者択一」ではなく、中間の選択肢がいろいろあってもいいんじゃないでしょうか
そういうケースを許容する方が、例えば、(今後の法律の改正や税制の変化にもよりますが、ことによると株式会社化された有名私大とか大規模医療法人とか農業法人とか)、今までは公開とは相容れないようなビジネスまで含めて、莫大なビジネスチャンスが生まれるポテンシャルを秘めているかも知れないですし。
「資本と経営の分離」と言いますが、一歩進めて、「資本とガバナンスと経営の分離」を考えた方がいいケースもあるのではないかと。効率的な市場の下で、多様な企業がすべて、「資本の論理」の一次元的linearな関数で最もうまく機能するという仮定の方が非現実的な気がします。
以上、冒頭にも述べましたが、タイガース(他)が公開や資金調達する必要があるかどうかは全く考えてませんので、悪しからず。「経営陣の悪口を言えるのもタイガースの魅力」という人が多くて収益性がそれほどはあがらず、valuationもあまり高くつかなくても、未公開時よりはそこそこ経営にもプレッシャーがかかるものの敵対的買収までは気にせず、「らしさ」を残して、といった微妙なバランスが設計できる可能性があるのではないか、ということです。
ビジネス上のより本質的なお話は、47thさんのこちら↓のエントリをご参照ください。
http://www.ny47th.com/fallin_attorney/archives/2005/10/post_83.html
(ではまた。)

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公開前ベンチャーの種類株活用(議決権比率の調整)

未公開企業の種類株の活用は、DES(債務の株式化、デット・エクイティ・スワップ [Debt Equity Swap])の他に、今後、議決権の調整にも活用されるかも知れませんね。
10月26日の日本経済新聞朝刊13面に、「買収には特殊株で備え、グーグル会長に聞く——買規模より技術革新重要」という記事が、種類株式の活用として非常に印象的かつ象徴的な記事だったと思います。

インターネット検索世界最大手、米グーグルのエリック・シュミット会長兼最高経営責任者(CEO)は二十五日、日本経済新聞記者とのインタビューで、「ネットの世界ではマイクロソフト参入の影響は全くない」と述べ、IT(情報技術)の巨人との競争に自信を見せた。(中略)
 ——資本が二重構造で株主による統治が効かないという批判もある。
 「株式公開する際、長期的利益のために短期的利益を犠牲にすることもあると宣言した。それを実現するために二種類の株式に分かれており、敵対的買収にも心配ない仕組みになっている。投資家がこれを支持しているのは株価が証明している」

実際、株価は公開以来、以下のような感じで推移。
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(「Googleほどの企業だから」ということで、「dual class」方式が一般に認められたということでは全くないとは思いますが。)
このGoogleのIPOで一躍注目を浴びたdual class型の資本政策ですが、GoogleのようにMicrosoftやYahoo!等のコンペティターにすぐにでも買収される可能性があるというような場合でなくても、「創業時にお金がなくて、お金を集めるために安いvaluationでたくさん株式を発行しすぎた」等の理由により経営陣など安定株主の持株比率が低くて、このまま公開するとすぐに買収の危険があるような企業では活用の可能性があるかも知れません。
こういうベンチャー企業は非常に多い・・・というか、創業時から利益が出る運のいい企業以外は、ほとんどのベンチャー企業が多かれ少なかれこうした問題を抱えているケースが多いかと思います。
(会社のvalueをうまく説明できなかったり創業者が「いい人」だったりすると、知り合いやベンチャーキャピタル等にどんどんequityを放出して、結果として公開前に頭を抱える、というパターン。)

「プチMBO」で調整
ということで、公開前に安定株主対策として取られる手段の一つとして、「プチMBO」というか、経営陣などがキャッシュで他の株主から株式を買い集める、という策が取られることがあります。
ただ、資産に含みがあったりキャッシュフローが安定している企業のMBOと違って、ほとんどのベンチャー企業では、企業を担保にした借り入れは難しいことがほとんど。つまり、LBO的なスキームでのMBOは困難なことが多い。公開前で公開時の時価総額が見えてくると、既存株主もそう安い価格では株式を手放してくれなくなります。また仮に借り入れが行えたとしても、借り入れをする経営陣のリスクが大きくなったりすると、経営陣が破産するリスクも大きくなりますし、(公開を急ぐ誘因があったり、公開後も中長期的に経営陣から株式が放出される可能性が高いと、)結果として公開審査上いやがられることが多いです。

ストックオプションでの調整
経営陣等の資金負担なしに実質的な安定株主比率を高める手段として、新株予約権などを発行する方法もあります。
ただ、これも、あまり高い(発行済株式総数の10〜20%を超える)潜在株式があると、公開審査上もいやがられるのが普通。
それ以前に、既存株主の保有する株式の経済的価値がdiluteする可能性が高いので、発行決議が事実上できない場合も多いかと思います。

有利発行による調整
このほか、経営陣に株を有利発行する方法も考えられますが、やはり他の株主の反発を買いますし、税務上の問題も発生しかねないので、特に公開が見えてきている段階では、現実的ではない場合がほとんどでしょう。

種類株式を使う方法
というわけで、第4の方法として、種類株式を使う方法が考えられます。
以前のエントリでも書きましたが、新会社法(来年4月以降)には、

第百九十一条 株式会社は、次のいずれにも該当する場合には、第四百六十六条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、単元株式数(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式の単元株式数。以下この条において同じ。)を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設ける定款の変更をすることができる。
一 株式の分割と同時に単元株式数を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設けるものであること。
二 イに掲げる数がロに掲げる数を下回るものでないこと。
イ 当該定款の変更後において各株主がそれぞれ有する株式の数を単元株式数で除して得た数
ロ 当該定款の変更前において各株主がそれぞれ有する株式の数(単元株式数を定めている場合にあっては、当該株式の数を単元株式数で除して得た数)

という規定があり、分割数と単元のくくりを同じ(以上)にすれば、株主総会の決議なしで定款変更できるので、そうした後に、その後に、株主総会で1単元1株(=1議決権)という、種類株式を定款に入れ、種類株式を発行することが考えられます。
つまり、経済的持分は(ほぼ)今のままでいいから、経営権だけは確保させてくれ、ということですね。経営陣以外の株主が、ベンチャーキャピタル等、経済的な側面だけに興味がある人たちであれば、(公開審査上どうかということはともかく、少なくとも株主総会の決議では)賛成してもらえる可能性が高いかと思います。
逆に言えば、関係の深い取引先など、事業上のメリットや「あわよくば経営権を」ということを見越して出資をした株主や、経営陣の独立性が高まることを望んでない株主の比率が高い場合には、賛成してもらえない可能性が大きくなるかと思います。
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(続く。次回は「タイガース等の上場への種類株式の活用」案・・・の予定。)

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からしれんこんチップ

奥さんがコンビニで買ってきて食べてた残りをもらったんですが、これはちょっとうまいかも。
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どこの会社だろうと思って袋の裏を見ると、「株式会社壮関」という栃木県矢板市の会社の製品。
webでも会社のホームページは見あたらないんですが、信用情報を見ると、ここ数年、97%〜25%くらいまですごい勢いで売り上げを伸ばしてまして、昨決算期(2004.12)は売上高約21億円。
販売先として、「カンロ、なとり」等とあるので、OEMでコンビニ向け商品などを製造していたけど直販をはじめた、ということでしょうか。
(ちょっと注目)

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ハチノミ

子供の小学校が開校記念日だったということで、(オヤジが一所懸命働いているというのに)、奥さんと息子たちだけで三崎までふらっとドライブにでかけて、港で「ハチノミ」を買ってきてました。
これが、んまいのなんの!
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マグロのおでこの部分の身で1匹から2〜3人前しかとれないとのことで、そもそも寿司屋でも出てくることはほとんど無いようですが、1匹分?が閉店間際でなんと1000円。
赤身よりも味がすっきりしていながら、身はちょっとモチモチして、内側からものすごく濃いうまみがこみ上げてくる・・・という感じでしょうか。今まで食ったマグロの中で一番うまかったかも。
−−−
昨日ごちそうになった新橋のガード下のイタリアンレストランも、むちゃくちゃおいしかった・・・。元メリルリンチ?の方が経営されてらっしゃるとのことですが、あまりにも安い・・・。
もったいないので場所は教えません。:-)

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ベアハグ

赤坂の街を歩いていたら「ベアハグ」という名のマッサージ店を発見。
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本店がTBSさんのとなりというのが、かなりおもしろいです。

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キングダム・オブ・ヘブン (Kingdom of Heaven)

週末にDVDで見ました。
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「防衛策」を考えるのに役に立・・・たないこともないかも知れないですね。
その前の週には、こんなのも。
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監督メル・ギブソンですが、全編、当時使われていたアラム語やヘブライ語でしゃべっているという、商業主義だけからは考えられない作りになってます。
−−−
10年ちょっと前にイスラエルに旅行したことがあるんですが、とにかくエルサレムは「濃い」。街中で、地層の断面を見られるところがあるんですが、何千年も前からの遺物が十メートル以上にわたって何十という(つまり、その時々の民族や文明の)「層」になっていて、「地面を工事したら何か出てきちゃう」系としても、とても京都や奈良の比じゃないなあ、と。
名前の通り街は一見平和そのものでしたが、ユダヤ系のガイドのおじさんが「昨日は、この教会の中庭で子供が二人射殺されました」と言い放つところも何とも。
ちなみにそのときは、うちの奥さんの仕事でイスラエル美術館の人と打ち合わせするのについてったんですが、すでに閉館後だったにも関わらず、美術館の人が打ち合わせの前に「死海文書」を見せてくれました。(もちろん「裏死海文書」じゃなくて、(ただの)死海文書。)
その旅にパソコンを持っていって、イスラエルの見たこともない形のモジュラーと格闘しながら、Niftyのパソコン通信で会社の同僚数人に旅行記を同時中継で送りつけたんですが、それが意外に面白くて、その後メーリングリストに発展、今のブログにつながっているので、「私のネットによる情報発信もエルサレムから始まった」、ということですね。今にして思えば。
(ではまた。)

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アルファブロガー本、出ました

本日(20日)、翔泳社さんより「アルファブロガー 11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから」という本が出版されました。
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コグレマサト氏(ネタフル)、田口元氏(百式)、finalvent氏(極東ブログ)、織田浩一氏(Ad Innovator)、R30氏(マーケティング社会時評)、渡辺千賀氏(On Off and Beyond)、伊藤直也氏(NDO::Weblog)、橋本大也氏(Passion For The Future)、山本一郎氏(切込隊長Blog)、梅田望夫氏(英語で読むITトレンド)などのソウソウたる方々が並ぶ中、畏れ多くも、私めもインタビューしていただいております。
(百式の田口さんとR30さん以外はすべて[つまり私も]写真入り。)
私が書いた本、というわけではないんですが、取り急ぎご紹介まで。
(ではまた。)

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ジェット・ストリーム・アタック(その2)

「TBSの例に学ぶ買収防衛策は機能するか?(その2)」に対して、47thさんから「『ジェット・ストリーム・アタック』はworkableか?」というトラックバックをいただきました。
たしかに全くバラバラの企業が打ち合わせ無しに「ジェット・ストリーム・アタック」を行う(ゲーム理論的)インセンティブは無いでしょうし、完全に合意した上で行うのもまずい面があるのでしょうけど、「競輪型社会」の日本やコルシカ島(まさに囚人のジレンマが想定するような人間関係だと思いますが)とかでは、そんなことも起こりうるのかな、という気もします。
日本だと、まだ、とても経済合理性があると思えない行動をする方も多いですし。(苦笑)

ひとりジェット・ストリーム・アタック
数社(者)が協調して動くよりも、もっと可能性のあるのは、たびたび引用させていただいている葉玉さんの商事法務No.1742(05年9月15日号)の論文にあった、「ひとりジェット・ストリーム・アタック」?のケースかと思います。

たとえば、ポイズン・ピルは、その発動により買収者が取得した株式の保有割合を低下させるだけでなく、経済的損失を恐れる買収者が株式の取得を躊躇するという効果をも生じさせる点で強力な防衛策であるが、買収者の資金が豊富な場合には、少々の経済的損失を顧みることなく株式の取得を推し進めることもありうるし、当初からポイズン・ピルが発動されることを織り込んで、公開買付けにおける買付け条件を設定することにより、その効果が減殺される可能性もある。実際、会社の発行可能株式数は発行済株式総数の四倍以下であることが多いため、そのような場合、ポイズン・ピルは最高でも買収者が取得した株式を四分の一に希釈する効果しかない。とすると、買収者としては、たとえば、第一弾の公開買付けで、ポイズン・ピルが発動する比率(たとえば、二〇%)を買い付けて、いったんポイズン・ピルを発動させ、その後、第二弾として全株式を買付目標とする公開買付けを行えば、全体としてみれば十数%のプレミアムで全株式を取得することができてしまう。

つまり、
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といった感じで、2段階で買収するわけですが。
これを数字で掘り下げて見ますと、下記のように発行済株式総数が1000万株の会社があるとして、
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買収者の保有比率20%で発動し、買収者以外の株主の株式数が4倍になるような買収防衛策だとして、2回に分けることでTOBの価格をあげなくていいとしたら上記(グレー部分)の通り、だいたいもとの時価総額の14%増を覚悟すれば取得できてしまうわけです。
1回目のTOBで20%、2回目のTOBでさらに20%プレミアムを付けないと全株が取得できないとして、1回のTOBで済んだ場合(20%プレミアムを付けて時価総額120億円)と比べた場合、上記(グレー部分)の通り、33%程度のプレミアム(全体では60%程度のプレミアム)が必要になります。
(追記:ただし、1回目のTOBにプレミアムが必要だというのはまだしも、これを2回に分けると、さらにプレミアムの上乗せが必要、というのは、あまり理論的に出てくるお話ではないかも知れません。)
それでも割安だと買収者が判断すれば、授権枠の「弾切れ」対策をしておかないと、買収防衛策を強行突破されてしまう可能性がある、ということですね。

株主総会での「停止条件付」決議はアリかナシか

この枠の制約をいかに回避して、「第二波、来ます!」というのに対応するか、ですが。

ここで、(例えば条件決議型ワクチン・プランを採用するとして)新株予約権の発行を「停止条件付」で決議するのにあわせて、株主総会でも、
「(このプランの新株予約権が行使等されて発行済株式数が増加した場合に限って)、定款記載の発行可能株式総数を行使等前と後の発行済株式数の比を乗じて得た数に増加する」
というような「停止条件付」決議をしておくというのは、上記の規定に照らしてどうでしょうか?

という私の疑問に関して、47thさんには、

この磯崎さんのアイディアには、コメント欄で葉玉氏が「会社法でも認められないと思います」と仰っているんですが、授権枠の停止条件付拡大決議は現行法の下でも、しばしば使われる手段ですし、条件の客観性や明白性(更に妥当性も?)という「解釈論上」の問題は残るものの、きちんと株主が情報を開示された上で、そうした定款変更を承認するのであれば、ア・プリ・オリにできないということにはならないような気もします。

と言っていただいております。
法律の解釈論としてどうなのかはよく存じませんが、素朴な疑問として、なぜ株主総会決議で停止条件付決議をしちゃいけないのか、禁止する必要があるのか、は、よく理解できないところです。

種類株も組み合わせた買収防衛策
47th氏さらに曰く;

もっとも、どうせ定款変更をするんであれば、2発目、3発目用の種類株(1単元1株)発行のための定款変更決議をとっておくという手もあるんですが・・・まあ、マニアックな話なんで、こんなところで。

なーるほど。
「こんなところで」とおっしゃってるにも関わらず、掘り下げさせていただきます、が。
ベンチャー系の企業など、もともと「1単元1株」の企業はどうするんじゃい?と一瞬思いましたが、新会社法には、こんな規定が。

第百九十一条 株式会社は、次のいずれにも該当する場合には、第四百六十六条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、単元株式数(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式の単元株式数。以下この条において同じ。)を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設ける定款の変更をすることができる。
一 株式の分割と同時に単元株式数を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設けるものであること。
二 イに掲げる数がロに掲げる数を下回るものでないこと。
イ 当該定款の変更後において各株主がそれぞれ有する株式の数を単元株式数で除して得た数
ロ 当該定款の変更前において各株主がそれぞれ有する株式の数(単元株式数を定めている場合にあっては、当該株式の数を単元株式数で除して得た数)

つまり、普通株式を(例えば)1000分割して1単元(=1議決権)を1000株とする場合には、株主総会の決議なしで定款変更できちゃうわけですね。
その後に、株主総会で、1単元1株(=1議決権)という、(この例では普通株の1000倍強力な)必殺種類株式を定款に入れておく、と。(あ・・・悪魔のような・・・。)
これだと、ちょっとでも残枠があれば、「株式数」としては授権枠の規定(新会社法113条)にも引っかからないにも関わらず、議決権は圧倒的に買収者以外の一般株主が持つことになるようにもできます。
(GoogleのclassA株、classB株と同様)
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また、こうしたアイデアを使えば、「議決権」か「希薄化による経済的損失」のどちらか、でなく、両方をうまくコントロールしながら交渉のツールに使えるようなスキームも作れそうですね。
−−−
議決権や経済的価値ではなく株式数のみを縛る「授権枠(=発行可能株式総数)」ってのの意味はなんだろうなあ、という気もしてくるお話でした。
(ではまた。)

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TBSの例で考える「特別委員会はどこまで責任があるのか」

14日のエントリに、葉玉さんからコメントいただきました。(その他の方々も含め)コメントありがとうございます。

ところで、TBSの成り行きは私も関心をもって見ていますが、特別委員会がどのような判断をするか興味あるところです。

同じく、です。

訴訟に耐えうる判断が要請されるでしょう。
敵対的買収だと認定することは、株主に財産的損害を与える決定になりますから、新株予約権の発行を決議した取締役だけでなく、特別委員会の委員自身が不法行為責任を問われるおそれがあります。敵対的買収だと認定することは、株主に財産的損害を与える決定になりますから、新株予約権の発行を決議した取締役だけでなく、特別委員会の委員自身が不法行為責任を問われるおそれがあります。訴訟に耐えうる判断が要請されるでしょう。
関連者の判断も含め、「あいまいさ」を残すことにより、抜け道を封ずる必要があるのはよく分かるのですが、反面、買収者が現れたときに取締役会や特別委員会が判断をする余地を残せば、取締役や委員が多額の賠償責任を問われる可能性があるという点がいつも気になるところです。アメリカではポイズンピルが発動したことがない(一度だけ間違って発動しただけと言われています)ので顕在化していませんが、これから先は、その点をどのように回避するかが防衛策に求められるのではないかと思っています。
アメリカより企業防衛策について保守的な日本の裁判所が、ポイズンピルの発動により一般株主に多額の財産的損害が生じさせた取締役らの責任をどのように考えるのか?新株予約権が有効であるということと、取締役らの損害賠償責任の問題は、全く別なので、個人的には、相当リスクを含んでいるように思います。

TBSの特別委員会の概要
さて、特別委員会(TBSさんでの名称は「企業価値評価特別委員会」)ですが、これはもちろん商法上の機関ではなく、TBSさんのリリースによると、「�社外取締役2名、�社外監査役2名および�社外の有識者3名(弁護士、会計士および学識者等)の社外委員のみによって構成される。」とのこと。
16日の日経朝刊によると、メンバーは、以下のような(かなりの)方々です。
諸井  虔(委員長) 社外取締役 太平洋セメント相談役
北村 正任  社外取締役 毎日新聞社社長
岡部敬一郎  社外監査役 コスモ石油会長
西川 善文  社外監査役 三井住友銀行特別顧問
岩倉 正和  顧問弁護士 弁護士(西村ときわ法律事務所)
竹原 相光  会計士(ZECOOパートナーズ)
宍戸 善一  成蹊大法科大学院教授
ちなみに、特別委員会の役目はプレスリリースによると、以下の通り。

事前対応の進行および各プランの発動の是非に関する最終的判断は当社取締役会が行うことから、その判断の公正を担保するため、当社は、社外取締役、社外監査役および弁護士、会計士、その他の外部有識者といった社外の構成員からなる企業価値評価特別委員会(以下「特別委員会」という)を設置いたしました。その概要は、別紙�−1記載のとおりです。
同委員会は、当社取締役会から諮問を受けた各事項および特別委員会が必要と判断する事項について当社取締役会に勧告を行います。特別委員会の勧告に法的拘束力はないものの、取締役会の決定に際しては勧告を最大限尊重し、かつ必ずこのような特別委員会の勧告手続を経なければならないものとすることにより、取締役会の判断の公正を確保する手段として実質的に機能するよう位置づけています。また、特別委員会の招集権限は、当社代表取締役のほか、監査役および各委員も有し、その招集が確実に行われるよう配慮しています。

免責条項は?(特別委員会がどこまで判断するのか)
特別委員会のレポートには、どのようなdisclaimer(免責条項)が付くんでしょうね?
社外取締役や社外監査役の方々は、以前から定期的に取締役会には出てらっしゃるでしょうから、それなりに会社のことは理解されていると思いますが、その他の方々は、「今回の騒動」がはじまってから、会社から渡された資料(+一般的なTBSに関する知識や学識)で判断するしかない方もいらっしゃると思います。
また、社外取締役にしても社外監査役にしても、ご自分でExcelをはじいたり、事業計画の分析をしたりすることはあり得なさそうな方々ですから、実際には、「現場」が作ったレポートと判断に従って、「overview型」の判断をされるということになるんでしょう。ですから(例えば)
「株式会社東京放送が作成した楽天株式会社と経営統合を行った場合の経営計画および経営統合を行わなかった場合の経営計画その他の資料をもとに、それが現時点における会社の最も合理的であり、説明可能な経営に関する予測であることを前提として」
とか
「経営計画において前提としている事態や環境が前提通りにならず、予測と実際の結果に差異が生じることは通常発生することであるが」
とか、
(ことによると)「本勧告は、本統合案が当社の企業価値に与える影響についての判断を示すものであり、買収防衛策の発動を行うかどうか自体の判断を負うものではない」(買収防衛策の妥当性とか適法性については判断を下さない)
とか、
いろいろ、ただし書きが付けられるはずだと思います。
(そうそうたるメンバーの方々だからといって、「男らしく、細かい言い訳はしない」・・・というものでもないと思います。)
書きっぷりにもよりますが、こういった「免責条項」が不法行為責任に対して「効く」のか、それとも、「引き金を引いた」という事実には変わりないので、損害賠償責任を負う可能性も高いんでしょうか。
TBSさんはともかく、他の企業では社外役員でない有識者等のみが特別委員会委員、という会社もありますが、いつもは取締役会にも出席してないそういう方々の判断というのは、外部の意見書と同じで、意見書を書いた人が訴えられたという話もあまり聞きません。ですから逆にそうした「責任のない」立場の人が下した判断に従うというスキームっていうのも、どうなのかなあ、と思ってる次第です。
委員の社外監査役は何をするのか?
委員には社外監査役の方もいらっしゃいますが、この方々は、どこまで何をされるんでしょうか?
TBSさんに限らず、日本の会社には社外取締役がいないことも多いので、買収防衛策を導入する企業さんには監査役の方が委員になっているケースも見受けられるのですが、そもそも監査役が経営の判断とか業務執行の一部を担うわけにはいかないはず。とすると、委員の社外監査役の方が担う役割は、あくまで、プロセスの妥当性の監査を行ったり、適法性についてウォッチしたり、といった役割のはずで。そういった他の委員が下した判断に対して「相当である」という見解は発しても、「買収防衛策を発動すべきだ」といったことを積極的に主張する立場には無いんじゃないでしょうか。
とすると、特別委員会が訴えられたとしても、それぞれの委員の資格や特別委員会での役割で、損害賠償の可能性というのも違ってくるんでしょうね。
委員の太っ腹度
こうしてみると、社外取締役とか特別委員会委員の人格とかお金持ち度、というのは非常に重要ですよね。TBSさんの委員の場合であれば、楽天さんから社会的圧力をかけられるということもなさそうですし、「訴えられて負けると損害賠償ですよ」てなことを言われてビビる、というようなこともあまりなさそうですが、世の中こういったメンバーを委員に据えられる企業ばかりではないはず。
ある会社の特別委員会委員の方に伺ったところ、「平時は無報酬で、有事にもわずかばかりの謝礼が出るだけ(とほほ)」とのことで、そんなんで何百億円の「損害」の賠償責任を負わされるとしたら、なり手は非常に限られちゃいますね。
経営判断原則と買収防衛策の発動
取締役会は

(1)事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと
(2)意思決定過程が合理的であること
(3)意思決定内容が法令又は定款に違反していないこと
(4)意思決定内容が通常の企業経営者として明らかに不合理ではないこと
(5)意思決定が会社の利益を第一に考えてなされていること
監査役監査基準第14条)

といった点に注意して経営判断を行う必要があると思いますが、経営判断にリスクがあるのは当然であって、適切なプロセスに従って意思決定が行われた場合に、それが株主に損害を発生させることになっても、必ずしも損害賠償の対象となるものではないと思いますが、買収防衛策の発動にも、こうした経営判断原則が適用されると考えていいのかどうか。
TBSの買収防衛策の引き金を引くか
以上は、TBSさんの買収防衛策のスキーム自体の問題とは切り離された話ですが、私がTBSさんの特別委員会委員だとしたら、(経営陣から出てくるレポートにもよりますが)、今の状況で、買収防衛策発動にGOを出すのは、ちょっと躊躇します。(もし、買収者以外の一般の株主にまで損害を与える可能性が高いという、スキームの妥当性にまで言及するのであれば、特に。)
というか、そもそもまだトリガーの要件に該当してませんしね。
(取り急ぎ。)

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TBSの例に学ぶ買収防衛策は機能するか?(その2)

toshiさんと47thさんにコメントいただきました。
toshiさん曰く;

ご指摘の点、たいへん参考になります。
スキームを考える立場でなく、企業の役員として買収防衛策導入を検討している立場としましては、以前同様のことを検討した経験があります。たとえば西濃運輸のライツプランにつきましては、15ページあたりで、「特定大量保有者」とか「関連者」の定義を広範かつ不明瞭に規定して、さらに「そのように取締役会が判断したもの」と規定することで、ともかく「共謀、共同に関する」確実な証拠はないけれども、合理的かつ客観的な資料があれば一方的に発動できるようなシステムになっているものと認識しております。http://www.seino.co.jp/seino/news/pdf/20050517_news_lights.pdf

あ、ほんとですね。昨日見たんですが、見逃してました。

(P15の下の方)ある者の「関連者」とは、実質的に、その者が支配し、その者に支配されもしくはその者と共同の支配下にある者として当社取締役会が認めた者、またはその者と協調して行動する者として当社取締役会が認めた者をいう。

これに比べると、TBSさんの定義は、かなり「明瞭」ですね。
「客観的な」判断条項は機能するのか?
(ちょっと今回の話からは直接はそれますが、)
経済産業省の企業価値研究会の報告書でも、買収防衛策の類型の一つとして、「客観的な買収防衛策廃止条項を設定する」というのがあるわけですが、私、前からこれって、よっぽどきっちりといろんな状況を想定してスキマ無くプランが設計されているか、または100%現金買収に限るといった非常に高いハードルを設定して、しかも「その場合は、どんなやつに買われてもしゃーないね」とあきらめるのでなければ、かえってその「客観性」を逆手に取られて、買収者に有利になるんじゃないかという気がしています。
「あいまいさ」を残しつつ経営者の裁量権の濫用を防ぐためには、社外取締役が中心になって判断するという方式でないと難しいと思うんですが、そうすると、「今の役員構成、ガラガラポンにしないとダメじゃん」という会社が日本の上場企業の大半なので、これまた難しいところ。
買収がかかって応戦して結果として上記のような点の不備で裁判で負ける企業が出てくると、中長期的に(かなりゆっくり)社外取締役を入れようという方向にシフトしていくことになるんじゃないかとも思います。
「引き金を引ける」のか?

防衛側に「共謀、共同」の詳細まで立証せよ、というのは悪魔の立証になるでしょうから、発動要件としての立証の程度は、「合理的、客観的に、つるんでいると疑わせる程度」であれば違法性はないものと判断しております。

ただ、アメリカでも実際に買収防衛策が発動されたケースはほとんどない、ということになると、ましてや日本で発動ということになると非常に躊躇するでしょうね。
仮に、今のTBSのケースで村上ファンドや楽天さんが経営に関わるようになると企業価値が損われるだろうとTBSの経営陣が判断したとして、希薄化を実行できるのか?
村上ファンドさんも楽天さんも、もしそうなったら、希薄化によって発生した損害を賠償しろと取締役に対して訴訟するに決まってます(し、買収者側の方が、圧倒的に戦い慣れしてそうな)ので、取締役としても意思決定に際して、かなりビビるはずです。
先日ご紹介した法務省の葉玉さんが商事法務に書かれた議決権制限株式を使った買収防衛策についての論文でもご指摘がありましたが、確かにこういう場合には、とりあえず議決権だけ制限しておいて経済的損害を与えないというのは、積極的には買収者を追い払えないけど膠着状態には持ち込めるわけで、(例えば、他の希薄化を伴う買収防衛策と組み合わせて使ったりすると)、取締役としてはより安心感があるかも知れません。
一社にだけ割り当てる問題点
加えて、今回のTBSさんの買収防衛策(「新株予約権プラン」の方)は、日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社が持っている新株予約権の公使価格が、「かかる事由の発生日に先立つ6ヶ月間の各取引日における当社普通株式の終値の平均値に0.9を乗じた額に修正される。」ということになってます。
TBS20051014.GIF
この条件だと、上のチャートのとおり現在の時価に対してめちゃくちゃ低い行使価額になっちゃうわけで、ニッポン放送の時と同様、多くの一般株主(今度は機関投資家もまだ大量に保有してますし)を敵に回すことになります。
「ジェットストリームアタック」対策

あと、共同ではないけれども、15パーセント保有者のうしろで、二人目が15パーセントを保有して「待っている」ようなケース、ライツプランだとどうやって防衛するのでしょうか。二人目には丸腰で戦えというも問題じゃないか、とたしか東大の神田教授が夏ころに発売された「商事法務」の座談会で発言されていたように思います。(ちょっと記憶があいまいですが。間違いがございましたら、またどなたかご指摘ください)

「黒い三連星によるジェットストリームアタック」対策をどうするかですね。(「マチルダさーん!」)
要するに、新株予約権という弾を撃った後に、授権枠の「弾切れ」が発生しちゃうということですよね?
ちなみに、新会社法における授権枠(発行可能株式総数)についての規定ですが、

(発行可能株式総数)
第百十三条 株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない。
2 定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない。
3 定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合には、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。
4 新株予約権(第二百三十六条第一項第四号の期間の初日が到来していないものを除く。)の新株予約権者が第二百八十二条の規定により取得することとなる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式(株式会社が有する自己の株式をいう。以下同じ。)を除く。)の総数を控除して得た数を超えてはならない。

ここで、(例えば条件決議型ワクチン・プランを採用するとして)新株予約権の発行を「停止条件付」で決議するのにあわせて、株主総会でも、
「(このプランの新株予約権が行使等されて発行済株式数が増加した場合に限って)、定款記載の発行可能株式総数を行使等前と後の発行済株式数の比を乗じて得た数に増加する」
というような「停止条件付」決議をしておくというのは、上記の規定に照らしてどうでしょうか?
この決議自体では定款が実際に変更されたわけではなく、「変更」はプランの発動後に発生しますので、その「変更後」の発行可能株式総数は、「当該定款の変更が効力を生じた時」における発行済株式の総数の四倍を超えてはいません・・・が、株主総会での停止条件付決議というようなもんが有効なのかどうか。
(備忘メモ:→登記実務も要チェック。)
「競輪型社会」と囚人のジレンマ
47thさん曰く;

ご指摘の点は本当に悩ましいところで、お会いしたときにお話したかも知れませんが、いろいろと腹案はあります。

(酔っぱらってて忘れている部分もあるかと思いますが、アレをアレしてもらうときにアレを求める、というような手のことでしたっけ?)
いずれにせよ、多民族国家で資本市場のプレイヤーも多いアメリカと違って、日本は「it’s a small world」で、投資や買収などの世界で活躍するプレイヤーが限られますので、たとえホントに当該案件について個別に接触や打ち合わせをしてなくても、同じ目的のために行動する、ということは十分ありえます。
出身地や先輩後輩の関係が影響するような「競輪」てなギャンブルは、アメリカじゃ絶対成立しないと思いますが、日本では成立するんですね。
だから、「囚人のジレンマ」と同じで、前回ご紹介したように、連動して動こうというインセンティブを絶つ設計というのができないかな、と思うわけですが。
例えば、
「一定期間内に5%超を取得した者が複数現れた場合、それらの者を共同保有者とみなした場合に検討開始事由に該当する場合、10%超を保有する株主(10%を超す株主が存在しない場合には、当該一定期間内に5%超を取得した株主の中で最も株式等保有割合が高い株主)に対して発動する。」
というような条件を付けることによって、例えば今回のケースで楽天さんと村上ファンドさんの利害を一致させなくするようなことができないでしょうか。

あとは、適法性とfeasibilityのバランスというところですが、やっかいなのは防衛策の仕組みそのものというよりは、虚偽開示に対するenforcementの弱さではないかというのが、本音だったりします。

そうですね。
特許の世界で、あえて米国で訴訟を起こして日本企業に対してdiscoveryを使うという話を聞いて、おもしろいなーと思ったんですが、会社法の世界だと難しそうですが・・・、という前に、そもそもホントに打ち合わせや合意の事実がない「競輪型の協調関係」にどう対抗するのか。例えば「同じ大学の先輩後輩」というだけで「クロ」として希薄化を発生させるというのは、取締役としてもちょっと気が引けると思います。
交渉のネタが次々繰り出せるか?
これもいつも47thさんが強調される点でありますが、買収防衛策を設定したら終わりではなくて、具体的にどういうネタを使ってどういう交渉プロセスを踏むのか、というところが非常に重要かと思います。
今回も楽天さんから具体的な提案が出てきてますが、準備期間もあったので、その中にはそれなりにいいことがいろいろ書いてあるはず。
それを「ふーん」と見て、「結構な内容なようですのでさあお入りください」と鍵を開けるだけでは困るわけで。
共同で持株会社を作るんであれば、その統合比率を交渉するということが一つあるかと思います。楽天側がTBSに非常に高い魅力を抱いているんであれば、今日現在の両社の株価の比率とかではなく、もっとずっと高い企業価値評価をもとに統合比率を計算してくれ、とか、そこまで出すと株主の了解がとても得られないから、もっと低いはずだ、とか、じゃ買収防衛策は解除しませんよ、とか、こっちは訴えてもいいんですよ、とか、いろいろやるんでしょうね。
また、そういう具体的な「数字の話」に行く前に、そもそも、ビジネスモデルがどうこうというような検討もするんでしょうけど、その筋が一通り通っていて数字もこれ以上はつり上げられないということになったら、必ず買収に応じないといけないんでしょうか?
つまり、親戚のおばさんが「ハンサムで釣書も勤め先も申し分ない性格もよさそうな金もそこそこ持ってる男」の見合い写真を持ってきたら、企業の場合、必ず「結婚」しないといけないのかどうか。
今回も、テレビ局はネット対応をするのが急務であることは間違いないところであり、組む相手のネット企業として最も財務内容がいい会社の一つが楽天でしょうから、形式的チェックや消去法だけだと、日本では楽天さんからそこそこのオファーをもらったら必ず買収に応じないといけないということになっちゃいますが、それもヘンな話。
「なんとなくイヤ」というのでは許されないでしょうから、数字でもスペックでもない定性的なお話で、いかに客観的に(たとえ裁判になっても経営者の裁量権の濫用とは取られないように、また相手が怒って裁判に持ち込んだりしないように相手のメンツも立てながら)、「お断り」ができるのか、というのも、具体的に今回のTBSの取締役になったつもりで想像してみると、非常に高度なワザが要求される気がいたします。
(「企業風土が」というような話は、実際には非常に重要かも知れませんが、客観性を高めるのが難しそう・・。)
(ではまた。)

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