初の単著:「起業のファイナンス」出ました!

私の初めての単著で「起業のファイナンス」という本を書きました。

 

起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと
磯崎 哲也
日本実業出版社
売り上げランキング: 514

(楽天ブックスのリンクは→こちら。)

 

本日(30日)よりアマゾンで発売開始し、明日より書店店頭にも並ぶようになります。
(すでに一部書店では店頭に並んでいます。)

 

今までも起業に関連する本はたくさんあったと思うのですが、起業してから上場(またはバイアウト)するまでに、投資家とどういった交渉をしながら、どのように資金を調達するかといった全体像「お金」の面からイメージがわくように解説した本というのは、あまりなかったんではないかと思います。

 

この本で最も述べたかったことは、(個別のベンチャー企業の方の役に立つことはもちろんですが)、日本のベンチャーの「生態系」をもっと発達させる必要がある、ということです。

日本は戦後、銀行の融資(間接金融)で急速に復興を遂げましたので、社会の体質やモノの考え方が全体的に「銀行っぽく」なっちゃってます。
つまり、銀行の資金は基本的には「まず絶対に潰れない」対象にしか融資できませんが、高度成長時代はとっくに終わり、時代は「今まで誰もやったことが無いようなこと」にチャレンジすることが求められています。
そして、優秀な人々をそこに呼び込むには、失敗しても経営者が個人保証で立ちいかなくなるといったことが無い「リスクマネー」が必要になります。

しかし、銀行1行の「ワンストップ」で済む融資と異なり、株式で資金調達するには、起業家の他、投資家(ベンチャーキャピタル・エンジェル、事業会社等)、弁護士、公認会計士(監査法人)、税理士、司法書士、証券会社、証券取引所等、実に様々な人のサポートが必要になってきます。

ウサギとライオン2種類だけで自然界が回っているのではないのと同様、「自然な」ビジネスの世界も極めて多くの主体が関与しているわけです。

そして、起業しようという人やベンチャーに就職しようという人が増えないと、そうした専門家やサポーターなども食っていけませんし、そうしたサポーターがいないとベンチャー企業も成長できません。

このように「卵とニワトリ」なところがあるので、「それ、即効性のある景気刺激策なの?」と聞かれればそうではないと思います。
しかし、停滞する日本経済を再び活気のある社会に戻すためには、まさにこのベンチャーが重要。
ベンチャーというと「何か特殊な会社」と思われるかもしれませんが、ベンチャーというのはつまりは、社会の中で新しい需要や供給が自発的に生み出されるしくみのことであり、ベンチャーがうまくいく社会は、つまりは経済が活性化し成長できる社会だと考えられるわけです。

新しいことは既存企業の中でやってもいいわけですが、例えば、今なら世界的にはとても通用しないような生ぬるい企画書が会議で通っているといった領域の大企業が、そうした新興企業達からの猛烈なチャレンジを受ければ、それがその企業にも刺激になり、経済全体が活発になっていくはずです。

 

というわけで、この本は、これから起業を考えている方、資金調達して急成長しようとしている方だけでなく、ベンチャー企業をサポートできる専門家の方々や政治家や官僚の方々等にも幅広く読んでいただければと思います。
学生や専門家の卵の方にも、 社会の動きや会社法、税務などの全体像をつかんでいただく役に立つのではないかと思います。

 

ご興味を持っていただけましたら、下記のリンクからどうぞ。

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【目次】
第1章 ベンチャーファイナンスの全体像
第2章 会社の始め方
第3章 事業計画の作り方
第4章 企業価値とは何か
第5章 ストックオプションを活用する
第6章 資本政策の作り方
第7章 投資契約と投資家との交渉
第8章 種類株式のすすめ

 

【内容と構成】
第1章「ベンチャーファイナンスの全体像」
ベンチャー企業とは何か、なぜ株式で資金調達をするのか、日本のベンチャーの資金に関連する全体像、など。

第2章「会社の始め方」
起業をするのにスタート時の設計が最も重要であること、どんなゴールを目指すかを考えること、など会社設立の基本的なことに加え、会社設立の実際や現物出資などについて。

第3章「事業計画の作り方」
事業計画とはどういったものかについて説明。
事業計画は分厚いものを作れば作るほどいいわけではありません。事業計画を通じて、ベンチャー企業が成功するというのは、そもそもどういうことか、についても考えてみます。

第4章 「企業価値とは何か」
ベンチャーファイナンスにおいて核となる概念「企業価値」。
「企業価値とは何か」についてイメージが持てれば、ベンチャーのファイナンスもわかるし、ファイナンス全体が理解できるといってもいいかもしれません。

第5章「ストックオプションを活用する」
ベンチャー企業の最大の武器の1つである「ストックオプション」について。
ストックオプションとは何なのか、ストックオプションをどう使えば効果的なのか、ストックオプションで陥りやすいミスは何か、などについて考えます。

第6章 は「資本政策の作り方」
ベンチャー企業は、資本政策で失敗する例が多いので、非常にもったいないのです。
ベンチャーにおける資本政策がなぜ重要なのか、資本政策はどうやって策定すればいいのか、どういう失敗が多いのか、いい資本政策とはどのようなものか、などについて考えてみましょう。

第7章「投資契約と投資家との交渉」
投資家は、株主となって一緒に会社を経営する「仲間」になる人ですが、投資してもらう過程では経営者と利益が相反しますので、交渉が必要になります。投資を受けるまでのプロセスがどのようになっているか、投資契約のどんなところに気をつけなければならないか、などについて考えます。

第8章 「種類株式のすすめ」
アメリカでは「優先株(Preferred Stock)」としてベンチャー投資の常識になっているのに、日本ではまだ活用が進んでいない「種類株式」について、どういった場合に役に立つのか、なぜ それが必要になるのか、について考えてみます。

 

(ではまた。)

 

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週刊isologue(第78号)「イケてない」例から考えるベンチャー企業の資本政策

よく、
「イケてる資本政策とはどういうものですか?」
とか
「イケてる資本政策の立て方を教えてください」
というご質問をいただきます。

しかし、これはちょっと答えにくい質問です。

資本政策というのは、株式やストックオプションの発行、公開等を考慮して、必要な金額が調達できるか、公開時の持株比率は妥当な水準か?等を考慮する戦略、またはそのアウトプットのことです。

資本政策は、資本政策だけを考えて導出できるものではありません。
下図のように、事業がどういったビジネスモデルなのか、最初から売上や利益が十分得られるのか/時間がかかるのか、先行投資が大量に必要なのか/そうではないのか、リスクがどの程度あるか、初期から高い企業価値で評価してもらえるのか、といった様々な点が関わってきます。

 

201009271628.jpg
図表.事業計画と事業(企業)価値、資本政策

 

はじめから利益がどんどん出て、設備投資もその他の先行投資も不要な事業であれば、必要な資金が少なくなりますから、自ずと無理の無い資本政策になる可能性が高くなります。
一方、大量の資金を必要とする事業であれば、かなり投資家とハードにネゴしないと、望ましい資本構成にはならないかも知れません。

このため、資本政策だけを見て「これがイケてる資本政策だ!」というのは難しいわけですね。

 

ただし、イケてない資本政策の「フラグ」(サイン)というのはいくつかあります。

今回は、上場前の粉飾決算が明らかになって破産、上場廃止となり、今月15日に社長の奥村裕氏が金融商品取引法違反で逮捕された「株式会社エフオーアイ」の例を取り上げ、上場時に提出された有価証券届出書等から資本政策を考えていきたいと思います。

 

今週の目次&キーワード:

  • エフオーアイの概要
  • 「株主の状況」からスタート
  • 資本政策表を推定する
  • 「イケてない」フラグ(徴候)
  • 資本政策とモニタリング
  • まとめ

 

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週刊isologue(第77号)ベンチャー企業の監査役(小さい会社編)

非上場会社の社長や経営陣の方に「ここだけの話、監査役って何する人なのかイマイチよくわかんないです」と告白いただくことがよくあります。

また、社長ならまだしも、やってる監査役自身が監査役が何をするかわかっていないケースも実は非常に多いのではないかと思います。

 

上場企業などの大きな企業の場合には、「理想的なコーポレートガバナンスのあり方は?」といった観点から理論的に機関の形を考えて行けばいいですが、小さな企業の場合には「どのくらいのコストがかかるのか」「監査役になってくれる人が見つかるのか?」といった点も非常に重要です。

こうした小さい会社のコーポレートガバナンスや監査役をどうすればいいのかという資料や書籍は、不勉強であまり存じません。

このため今回は、非上場企業の中でも小さめの会社、すなわち、

  • 会計監査人を置いてない(資本金が5億円未満で負債も200億円未満)
  • もちろん会計参与も置いていない

という会社を中心に、「監査役」という存在をどう考えればいいのかを考えてみます。

 

今週の目次とキーワード:

  • そもそも今や監査役は必須じゃない
  • 取締役会も必須ではない
  • 取締役1人で会社を始めればいいか?
  • 監査役の業務をイメージする方法
  • 機関設計が「取締役会+監査役」の会社
  • 監査役が行う会計監査
  • 会計監査権限の監査役の仕事
  • 監査役がいる会社は「監査役設置会社」か?
  • 監査役の権限は意外に強い
  • 監査役の限定を外す場合に注意

 

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週刊isologue(第76号)ベンチャー企業としての日本振興銀行

日本振興銀行が先週金曜日2010年9月10日に、金融庁に対し、預金保険法第 74条第5項に基づき、「その財産をもって債務を完済することができない」旨の申出を行い、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分(「管理を命ずる処分」)を受けました。(つまり平たく言うと破綻しました。)

今週はこの日本振興銀行について取り上げたいと思います。

いろいろ解説記事も出てきていますので、今回は、開示されていることから何が言えるのかということと、そもそもの根源に立ち返って、日本振興銀行のビジネスモデルやモニタリングの構造からして、最初からこうなる運命だったのかどうか、といった点を考えてみたいと思います。

 

今週の目次とキーワード

  • 日本振興銀行の経営状況
  • EDINETでの大量保有報告書等の開示
  • EDINETでの親会社等状況報告書の開示
  • 親子会社関係の解消の経緯
  • 株主の状況(垣間見えた株主数と大株主の推移)
  • 財務内容
  • 日本振興銀行のビジネスモデル
  • 「銀行という名の(儲からない)商工ローン業者」
  • 「B/S貸方小口モデル」とモニタリング
  • 誕生時からそもそもうまく行かない事が運命づけられていた?

 

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「本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み」(+スキャン[自炊]による速読法)

ツイッター等で盛り上がっていた佐々木さんの新著、「本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み

 

本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み
佐々木 俊尚
日本経済新聞出版社
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おすすめ度の平均: 5.0

5 単なる人気サイトの紹介に
留まらないまさに「仕組み」の話

 

を出版元の日本経済新聞社出版社さんから送っていただきました。

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書評:「変わる会計、変わる日本経済」 石川純治著 日本評論社

「週刊経営財務」の2010年6月21日(No.2971)号に掲載していたただいた駒澤大学経済学部 石川純治教授のご著書「変わる会計、変わる日本経済」著 日本評論社

 

201009121647.jpg
石川 純治
日本評論社
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おすすめ度の平均: 5.0

5 会計批判として、
引き続き秀作

 

に関する書評です。
(3ヶ月弱経ちましたので、そろそろWebにも載せさせていただきます。)

 

石川教授については、このブログでも何度かご紹介させていただきましたが、表層的な会計の規則を負うのではなく、「会計の本質」とは何かを考えてらっしゃるところが非常に引きつけられるところではないかと思いますし、そういう本質を考える能力や態度というのは、まさに今後のIFRS時代に必要とされるものじゃないかと思っております。

 

以下、掲載した書評を引用いたします。

 

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週刊isologue(第75号)「死なない時代」をファイナンス的に考える(試論)

このところ100歳を超える高齢者の所在不明問題が話題になっています。
戸籍上約200歳になる方まで「発見」されていますが、もちろん、現代の環境下ではそんな方が存在すると考えられるわけがありません。

一方で、遠い未来を考えてみると、「人間」の寿命はどこまで伸びるのでしょうか。

 

今週は、いつもの週刊isologueとはちょっと趣を変えて、こうした人間の生命の長さを飛躍的に伸ばす技術革新が起こるような、超長期の未来を考えてみたいと思います。
ただし、対象は 「死なないこと」を実現するための技術的な考察というよりは、「死なないこと」が個人の人生設計や、社会全体の年金問題等にどのような影響を与えるのか、社会的・ファイナンス的な側面としたいと思います。

 

目次とキーワード:

  • 想定する技術的変化
  • 死因順位統計から考える
  • 遠い未来には「すごい」ことが起こってもおかしくない
  • 今後100年の方が技術革新が速い理由
  • 世代別に見た「死なない」世界への到達の可能性
  • 「死」の効用
  • 「死なない」関連事業のビジネスモデル
  • 社会的影響・倫理観

 

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