この仕事をしていると、「ストックオプションって、何%くらいが適正量なんですかね?」という質問をいただくことがよくあります。
ストックオプションは、「役職員に共に企業価値を上げる中長期的なインセンティブを持ってもらおう」という目的のものですので、付与する量は、
- 役職員が何人になるビジネスモデルなのか?(数百人規模?数万人規模?)
- 株式インセンティブをどのくらい付与すると、どのくらいやる気になってくれるのか(付与した場合に想定される企業価値の弾力性(elasticity))
- 事業の労働集約性、資本集約性、知識集約性
- ストックオプション以外のインセンティブ(現金の給与や賞与・歩合給、単なる生株、リストリクテッド・ストック、従業員持株会等)との効果の比較
- その産業・地域ごとの労働需給の逼迫度合い
- 役職員間の、持株比率のバランス
等、いろんな要因に左右され得ます。
シリコンバレーには年間数兆円規模の資金が投下されて、世界規模の人材の争奪戦が行われており、「給与が非常に高く、その上にカフェテリアでメシもタダなどの福利厚生もあって、ストックオプションをもらえるのも当たり前」という状態が普通のものとして浸透しています。日本でも、ベンチャーがいい人材を調達することはどの会社も苦労していますが、投下される資金量がまだ数十分の一ということもあり、中長期的なインセンティブであるストックオプションもさることながら、まずは転職前の生活を維持できるようにキャッシュの給与水準を上げる(もっと赤字を掘る)必要があるんじゃないの?というベンチャーも、まだまだ多いと思います。
過去の例をいくら見ても「適正な量」がわかるとは限りませんが、現状を踏まえずに一般論で適正な量を語っても仕方がありません。以前「週刊isologue 第354号)ストックオプションの「適正量」を考える(データ編)、第355号(VC比率編)で、2015年に上場した企業のストックオプションの比率のデータを見てみましたが、今週は、2016年から2017年上半期までに上場した企業のデータを整理するところまでをやってみたいと思います。
(上記の要因から考えると、「設立から何十年も経っている企業、ストックオプションの概念が到達していなかったり、雇用が逼迫していない地域や業種、銀行・鉄道など資本集約的な産業、MBOや子会社上場で、経営陣からしてほとんど株式を保有していない企業(つまり「ベンチャー」っぽくない企業)ほど、ストックオプションの比率は低」く、「創業からの年数が浅く、知識集約型のビジネスモデルで人材の需給が逼迫している領域で、従業員数が多く、創業メンバーが十分な比率の株式を持っている会社ほど、ストックオプションの量が多い」という仮説が成り立ちますが、実際はどうでしょうか?)
目次とキーワード
- 2016年-2017年上期IPO企業の潜在株式割合データ
- 「潜在込み」に対する比率と「発行済」に対する比率
- 2016年-2017年上半期IPO企業の潜在株式割合データ
- 設立年数、潜在割合での並べ替え結果
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