昨日は大阪の方で講演会の講師としてお呼ばれして日帰りで行って参りましたが、帰りの新幹線で「WEDGE」の今月号を読んでいたときに出会った記事がこれ。
■ 企業を振り回す ギャンブル化進む個人マネー
大流行の投信、先物、為替取引 ツケを払うのは誰か
「貯蓄から投資へ」–。官民を挙げたキャンペーンの末に現れたのは、堅実な投資とは似ても似つかない“丁半博打”に狂奔する主婦やサラリーマンの姿。
かねてより人気の新興国株投信やFX(外国為替証拠金取引)だけではなく、日経平均先物を小口化した「ミニ日経」も大流行だ。ギャンブル化した個人マネーが、市場の変動を激しくし、企業経営に悪影響を及ぼすなど実体経済をも振り回しはじめている。バブルが崩壊すれば、そのツケを払わされるのは個人投資家にほかならない。
例えば個人が取引するFX(外国為替証拠金取引)が外国為替市場にも影響を与えて、価格変動を増幅させ、それによって企業が迷惑している、というようなことが書かれてますが、ホントかしらん?
もちろん「個人投資家がよくリスクを理解しないで投資すると危険ですよ」というのには大賛成ですし、現在、個人投資家が行っている取引が倫理的に「悪い」というのであれば主観の問題ですので横に置いておくとしても、「企業を振り回している」かどうかとなると客観的な事実のお話。
FXは証拠金に対してレバがかかる(多ければ数十倍以上な)のでその分影響がでかくなるにしても、為替市場のような巨大な市場に、果たして個人投資家の影響力が及ぶのかというと、すんなりとは納得できないところです。
「ファンドによる投機的資金が企業を振り回している」というならわかるんですが、個人投資家ってのはどうなんでしょうか。レバなら、ファンド等もかけてるでしょうし・・・。
今現在、きちっとした反証ができるだけの知識を持ち合わせていないので、今後、以下のような点を注視したいなと思います。(文献、データ等、ご存知の方は教えていただければ幸いです。)
- そもそも、FXで投資する投資家からFX業者や証券会社を通じて為替市場に影響を与える経路とメカニズムを私自身がよく理解していない。(株式であれば取引所があるのでわかりやすいが、FXは(取引所もあるが)単一の場所で「板」的なもので価格形成が行われているわけではないと理解しているので、「影響」を与えるプロセスのイメージが今ひとつわかない。)
- 為替取引の全体像とFXの取引、個人投資家の取引の量の統計的データ
- 個人投資家の行動パターンとボラティリティへの影響。(機関投資家等と考え方の異なる個人投資家が参入することは、むしろ、市場の触れ幅を滑らかにし、ボラティリティを下げる効果があるんじゃないかと想像してました。時価総額わずか数億円の小型株なら、個人投資家の大口の売買で「振り回される」かも知れませんが、はたして、為替市場を振り回す力があるのか??)
(ではまた。)
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WEDGEですから(笑)、っていうのはダメ?
結論から申し上げると、ウソだと思います。
現在、FXの証拠金残高は恐らく6,000〜7,000億円程度のようです。これにレバがかかっているわけですが、どんなに高くても平均5倍がせいぜいでしょう。そうなると、FXによる為替市場へのインパクトは3兆5,000億程度になります。
金額的には大きいように思えますが、これは数年間に亘って積みあがったストックの数字であり、一ヶ月あたりのフローの数字に直せばかなり小さくなります。例えば、3年で3兆5,000億になったとすると、一ヶ月では約1,000億円ずつ積み上がっているに過ぎません。
ちょっと前に東洋○済で「FXの証拠金6,000億、業者によってはレバが200倍まであるので、最大120兆円の円安圧力!毎月10兆円の円安圧力!」という記事を見たことがありますが、平均的なレバが200倍なんて有り得ないし、ストックとフローを混同した「煽り記事」に過ぎないと思いました(しかもこれがあるシンクタンクの研究員のコメントと知って更にビックリ)。
私はマクロ経済の担当で、FXについて100%の自信を持っているわけではありませんが、聞かれたときはこのように答えています。
そもそも金融市場のような『複雑系』(古い?)の場合、cause-effectを議論すること自体が難しい(というか無意味)なのでは? バタフライ効果のように、個人投資家セクターどころか、たった一人の個人投資家のワントレードですら、市場全体を大きく動かしてしまうことも理論的にはあり得るわけでしょう。
私も正確なところは分からないというのが結論なんですが、ちなみに先日某PBから自己資金1億円用意したら、9億をLIBOR+25bpで貸付ますんで、外貨購入くださいってオファーがありました。私は断りましたがFX以外にも個人にこういった円キャリの提案がされているのが現状です。
積みあがりはeco氏がおっしゃるように徐々に積みあがっていたとしても、巻き戻しは半ばヒステリックに一気に来る可能性があります。
個人の円売りの規模、「東京の主婦が市場の安定化に寄与してる」説、など。
ttp://www.boj.or.jp/en/type/press/koen07/ko0707a.htm#03
有名な講演ですが、一応…。
こんばんは。私もEcoさんの意見に近いです。証拠金取引はレバがかかった分、残高は膨らみますが、これはデリバティブの想定元本のようなもので、そのうち実弾として為替市場に出てくる分はかなり小さい、と言われております。個人投資家の動向が為替相場に影響はあることはあるのでしょうが、変動の主因とまでは言えないと思われます。個人投資家の動向としては、外貨建て投信ルートのマネーフローも多少影響はあるでしょう。いずれにせよ、個人が注目を浴びるのは、マスコミ的に説明しやすいネタ(某経済新聞も円安要因を『円借り取引』に直結させたり)であるからだと思います。某日銀審議委員もウケ狙いで、東京の主婦を持ち出したりしますからね(日銀内ではやや顰蹙買っておりましたが・笑)。
みなさん、コメントありがとうございます。
大変勉強になります。
別エントリを立てさせていただきました。
http://www.tez.com/blog/archives/001026.html
よろしくお願いいたします。
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