リリース、出てますね。
http://www.bulldog.co.jp/company/pdf/070711_IR1.pdf
マスコミではおそらく、「世界初の買収防衛策発動!」というように取り上げられるのではないかと思いますが、これは「確かに、とんでもないことだ!」ともいえますし、「別に、それほど大したことないじゃん」、ともいえるかと思います。
「別に、それほど大したことないじゃん」という視点は、以前のエントリでも申しましたとおり、これが、買収防衛策とは言っても、株主に「損害を与えない」ということにかなり注意が払われたスキームであり、弾があたってもスティール側としてはあまり困らないはずだからであります。
つまり、買収防衛策とはいっても「麻酔銃」みたいなもんで、襲い掛かってくる買収者を「殺す」殺傷能力があるものではない。
会社側が本当にライフル(スティール側の株式の経済的価値が希薄化するような買収防衛策)を持って構えているのであれば、スティール側は、撃たれた場合、肩から下が吹っ飛んで、「ウギャーッ、腕がっ、腕がーっ!」とのたうち回る自分の姿を想像せざるをえないので、「止まれ!」と言われれば、まずは、「止まります。止まりますから、まずはその物騒な銃口を下に向けてもらって、話し合いましょうよ、へへへ・・・」ということにならざるを得ない。
しかし、はたして、「絶対安全です。」とプラカードに書いてある麻酔銃を向けられて、立ち止まる襲撃者がいますかね?麻酔銃というのは、眠らせている間に縄で縛りあげるとか、檻に入れることができる場合に初めて意味を持つものであるのに、今回、ブルドックがスティールを縛り上げるわけにはいかないし、そもそもちょっと動きがにぶくなる程度の麻酔量でしかなく、完全に動きを止めることもできないしろものなわけで。
おまけに、この麻酔銃は「火縄銃」です。つまり、弾込めは1発づつで、二の矢がすぐには継げない。買収防衛策は総会決議にします、と定款変更して、今後も火縄銃を使い続ける宣言をしちゃっております。
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一方、「えらいこっちゃ!」というのは、麻酔弾とはいえ、株主様に向けて世界ではじめて弾を発射しちゃった、という点かと思います。
なぜ発射しちゃったかというと、襲撃者側が止まらなかったからで、なぜ止まらなかったかというと麻酔銃だからです。(卵とニワトリ。)
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海外には、こういう「麻酔銃型」の買収防衛策ってのはあるんでしょうか。無いと思うんですが。
アメリカでは、何千社も買収防衛策が入っている企業があるのに、一回も発動されたことがないというのは、「アメリカ人が単一民族で、みな一様なものの考え方をするから」ではありえないわけで、買収防衛策を行使されると買収者側は絶対的に困るから、というゲーム理論的にきちっとした合理的な設計になっているから、でしょう。
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なんでこういうことになっちゃったかというと、銃を構えている方がアホだったから・・・ではないと思います。
日本では「銃」というのは非常に物騒なものとされてきたので、仮に(本当の)ライフルを構えたとしたら、襲撃者側に、「そいつ、銃持ってます!取り押さえてください!」といわれて、周りから取り押さえられてしまう可能性がかなり高かったから・・・ではないかと。
(つまり、「主要目的ルール」をはじめとする学説とか、裁判所で差し止めをくらう可能性とか、「原則、株主総会での決議でないとダメ」などとおっしゃる取引所やマスコミ、機関投資家、等の話です。もちろん、経営者も銃を使いこなせなさそうな人がほとんどだから、極力、銃を触らせないようにしよう、という卵とニワトリでもありますが・・・。)
ですから、(もろもろの大人の事情も差し置いて申し上げれば)、私の率直な希望としては、スティールさんは、麻酔銃にめげずに、ぜひ、ガンガンTOBで買い集めて、50%超の株式を取得していただきたい。
それによって、「麻酔銃では襲撃者を立ち止まらせることはできないんだ・・・」という、当たり前の常識が日本にも生まれるので、(ブルドックさんは尊い犠牲になるとしても)、マクロ的・長期的には、日本のためになるかと思います。
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ソース会社なら、他にオタフクソースもあるので代えもききます。これが、憲法9条とか、核弾頭を積んだテポドンだったら、代わりがきかなかったかも知れない。
でも、テポドンの場合でも同じようなことが起こるんでしょうね、おそらく。(ブルブル)
なんか、日本人の「セキュリティ」に関する意識の根本的なところに、非常に美しい相似形を見る思いがして、恐ろしいことこの上ないです。
(ではまた。)
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王様は裸だといいたくてもいえない人がどのぐらいおられるのかわからないのですが、この磯崎さんのエントリーに快哉を叫んでいる方もおられると思います。
木陰でかもしれませんけど(苦笑)。
しばらくまた読ませていただきたいと存じます。
相手には麻酔銃(もしかすれば空砲?)を発射したつもりが後ろのネジが緩んでいたため、その反動で自分の方の怪我が大きかった。こんな風なスキーム設計だったようで残念でした。防衛策を発動してしまうと、防衛側の株主資本は確実に毀損してしまうという点の事前説明がどうも不足していたようですね。犠牲者が出ないと本当のことが理解されないとしたら・・・これ以上のコメントはし難いですね。
いつも楽しく拝見させていただいております。
非常に共感できる記事でした。クソの役にもたたない防衛策を、導入したり、差し止め請求したり、そしてろくに理解していないマスコミや中途半端な識者があーだこーだ言ったり。そしてはたまた高裁は判断に必要のないことにまで触れて、そこでは「経営能力のない株主はだめだ」とか「資産処分まで視野に入れて」とか訳のわからないことをいったり。ホント茶番劇ですね。M&Aはまだまだ経済合理性では分析できないですね。
スティールは金さえ手に入れたら用はないと思いますけどね。50%取らないでしょ。
理屈でしか動かない外人が入ってきたら
怖くなった経営能力のない日本人が
使い方もよくわからない外人の武器手に入れて
怖くなってぶっぱなしちゃった。
そのあたえる影響もわからないでね。
磯崎です。
>木陰でかもしれませんけど(苦笑)。
星明子さんですか?:)
みなさん、あんまり今回の買収防衛策を評価されてないようですけど、私は確かにあまりパッと効く「薬」にもならないけど、少なくとも毒にもならない気がしてます。
>使い方もよくわからない外人の武器
というよりは、良くも悪くも、「漢方風の東洋的pill」だなあ、と。
少なくとも、今のところ(理論上の)時価総額は上がってるし、ものすごいIR効果もありました。
私についていえば、申し訳ないですが、この出来事まで、ブルドックソースという会社が上場してるのかどうかも存じ上げませんでしたし、他の皆さんも、この機会に、この会社に大変興味を持たれたんじゃないでしょうか。
ニレコや新日鉄が買収防衛策入れても一般消費者にはあまり関係ないけど、ブルドックソースの場合、スーパーで、オタフクソースとブルドックソースが並んでたら、応援の意味も込めてブルドックソース買ったりするかも。(・・・しないか。)
ではまた。
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