今週の週刊ダイヤモンド誌が「新聞没落」という特集を組んでますが、その中で、以前取り上げた「日刊新聞法」について触れられていたので、改めて、新聞各社の有価証券報告書や登記簿などを詳細に読んでみましたところ、ダイヤモンド誌の当該記事は、ちょっと誤解を招く面が多いんじゃないかと思われましたので、以下、検討していきたいと思います。
まず、日刊新聞法(日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26HO212.html
の第一条を再掲しておきます。
(株式の譲渡制限等)
第一条 一定の題号を用い時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社にあつては、定款をもつて、株式の譲受人を、その株式会社の事業に関係のある者に限ることができる。この場合には、株主が株式会社の事業に関係のない者であることとなつたときは、その株式を株式会社の事業に関係のある者に譲渡しなければならない旨をあわせて定めることができる。
この「事業に関係のある者」という表現が何やら曖昧だなあ、と思っていたんですが、案の定、ダイヤモンド誌によると、日本経済新聞社では揉めているようです。
日経は、社員やOBなどを対象に、社員持株制度を運用しているが、持株界では譲渡先を日経の事業関係者に限ったうえに、一株一〇〇円で譲渡すると定めている。(中略)
ところが、OB間で四〇〇株を一株一〇〇〇円で売買し、また別のOBが高杉氏に株式を譲渡したことで、日経が譲渡の無効を求めており、判断が法廷の場に移されている。
(中略)
とりわけ高杉氏との裁判の争点は「事業関係者」の解釈。(中略)
高杉氏は日経ウォッチャーとして経営に提言したり、日経から著作を出していることなどを楯に、自らも事業関係者に該当すると主張している。
この記事だと、すでに株式は高杉氏に譲渡済みであり日経側がその無効を訴えているかのように読めるので、「そもそも譲渡制限が付いているのに何で?」と頭がちょっと混乱しますよね。
過去の新聞記事を見てみると、案の定、
高杉良氏と日経、法廷闘争 株購入めぐり
(2006/08/15、朝日新聞 朝刊34面)
経済・企業小説で知られる作家の高杉良さんが14日、日本経済新聞社を相手取り、自らが同社の株主であることの確認などを求める訴訟を東京地裁に起こした。
訴状などによると、高杉さんは日経の元社員から7月4日、同社株1千株を計736万円で購入する契約を結んだ。ところが日経は同13日、売買を無効と通告した。
日経の定款は「株式の譲り受け人は、本会社の事業に関係のある者に限る」と定めている。高杉さん側は「日経から著書を何冊も出版したうえ、『日経新聞ウオッチャー』として経営改革について提言しており、事業に深く関係している」と主張している。
元社員は、株主になれる「社友」の資格を同24日に取り消されたため、社友の地位の確認などを求め、高杉さんと共に提訴した。高杉さんに売った1千株と元社員の保有株4590株の計5590株は、日経株の流通機構である「日本経済新聞共栄会」が1株100円で取得した。
(以下略)
と、「高杉氏と旧株主は、譲渡する旨の契約は結んだけれど、日経側が譲渡を承認しなかった」というだけの話のようで、これならよくわかります。
日刊新聞法の存在意義は?(その1)
ここで原点に立ち返って、日刊新聞法というのは法律的にどのような効果を持つのか?について考えてみたいと思います。
そもそも会社法では、一般の株式会社であっても譲渡制限を付けることができるわけです。つまり、一般の非公開会社であっても、取締役会が「高杉氏への譲渡は認めない」といったら譲渡は認められないし、譲渡を認めないことについては「なんらの理由も要求されない」と解されているはずです。
日刊新聞法では、「株主になる者は事業関係者だけ」と定款で定めることができるわけですが、上記のように考えてくると、法律によるこの制限は、「株主に対する制約」というよりは、「取締役会の裁量権に対する制約」なんではないでしょうか?
つまり、日刊新聞法で認められた規定を定款に入れていると、たとえ取締役会が「OK」と言ったとしても、高杉氏がもし「事業関係者」に該当すると解されないのであれば高杉氏は株主になれないはずです。
逆に日刊新聞法の下で定款に規定を入れているからといって、取締役会は事業関係者に該当すれば必ず譲渡を承認しなければならないということでもないはずかと。
もっとも、「社友」の資格を取り消した場合に、事業関係者でなくなり株主ではいられなくなるのかどうか、については争う余地があるのかも知れません。実際、2007年3月29日付日経新聞朝刊38面の「東京地裁、仮処分決定、本社元社員の総会出席容認。」という記事をみると、
日本経済新聞社の元社員、(略)氏が「株主なのに今月二十九日開催の株主総会への出席を妨げられている」などとして、株主としての地位確認と議決権行使の妨害禁止を求めた仮処分で、東京地裁(高山崇彦裁判官)は二十八日、申し立てを認める決定をした。
(中略)
日経新聞社は言論報道機関としての独立性を保つため、日刊新聞法に基づき、定款で事業関係者以外の株式の所有を認めていない。大竹氏はこれに反し昨年七月、作家の高杉良氏に自分が所有する株式の一部を譲渡する契約を結んだ。同社は「重大な定款違反」として大竹氏の社友資格を取り消し、同氏は事業関係者ではなくなったため株主総会での議決権行使は認められないと主張してきた。
という決定がおりてます。
以上のように考えてくると、ダイヤモンド誌が、
仮にこれが認められれば日経だけでなく、朝日への影響は甚大である。
てなことを書いてらっしゃる部分も、あまりピンと来ませんね。
「事業関係者」の定義が法律にない以上、ある株主(または候補)が事業関係者に該当するかどうかの判断は、ある程度、会社の裁量で行えるはずですし。
また、どこの新聞社でも経営陣は基本的には事業関係者以外に譲渡を認めないのが普通でしょうから、やっぱり日刊新聞法というのは(会社法になってからだけでなく商法時代からも)実質的には、あまり意味の無い法律なんではないでしょうか。
もちろん、取締役会が勝手に「事業関係者」の解釈を広げてしまう危険がある場合とか、議決権の過半数がそうした解釈をする取締役の選任に賛成する可能性がある場合には、日刊新聞法の制限を定款に入れておいた方が(3分の2の賛成が無いと定款が変更できないので)、より強力になる、ということが言えるかも知れませんが、(試験の答案ではない)現実問題としてはあまりどちらでも変わらないかと。
前述のエントリに、「日刊新聞法なんかなくても、ただの会社法でいいんじゃないか?」と書いたところ、「通りすがりのもの」さんから、
株式会社法では、投下資本回収の機会の保障には敏感です。
(中略)
法の認める譲渡制限の態様を超えた制限は、定款で定めても無効です。
というコメントをいただきましたが(ありがとうございました)、上記のように、事業関係者に限るという定款の規定は、投下資本回収の機会を一般の会社法を超えて制限するものではなく、取締役会の権限を縛るものでしかないとしたら、一般の会社が日刊新聞法的な事業関係者にしか譲渡できないという規定を定款に置いたとしても有効な気もしますが、どうでしょうか?
各社の定款における譲渡制限の定めの実例
ここで、各社が実際にどういう具体的な譲渡制限の文言を定款で定めているか、有価証券報告書等から見てみましょう。
株式会社日本経済新聞社
第9条 (株式の譲渡制限)
本会社の発行するすべての株式の譲渡による取得については、取締役会の承認を要するとともに、株式の譲受人は本会社の事業に関係のある者に限る。
第1 0 条 (事業関係者への株式譲渡)
本会社の株主が本会社の事業に関係のない者となったときは、遅滞なく本会社の事業に関係ある者にその株式を譲渡しなければならない。
これは、日刊新聞法の規定に沿った書きっぷりかと思います。
株式会社朝日新聞社
第九条 (株式譲渡等の制限) 本会社の発行する株式はすべて譲渡制限株式とし、本会社の事業に関係のある者で、代表取締役の承認した者に限りこれを所有することができる。
2 本会社の株式を譲渡、質入又は信託しようとするときは、代表取締役の承認を得なければならない。
とあります。
(「ん?」)
登記簿を見てみると、
(旧)当会社の株式は、本会社の事業に関係あるもので取締役会の承認したものに限りそれを所有することができる。本会社の株式を譲渡しようとするときは取締役会の承認を得なければならない。
(新) 本会社の発行する株式はすべて譲渡制限株式とし、本会社の事業に関係のある者で、代表取締役の承認した者に限りこれを所有することができる。本会社の株式を譲渡しようとするときは、代表取締役の承認を得なければならない。
と、昨年平成18年6月23日に、承認者を取締役会から代表取締役にする変更を行っています。
通常の取締役会設置会社では、株式の譲渡は社長だけでは承認できず取締役会で行わなければならないわけですが(会社法139条1項かっこ書)、朝日新聞社では、代表取締役が承認するように、会社法で決まっている原則規定を(都合のいいように)緩めているわけです。役員の変更登記は7月中に行われているのに、譲渡制限の登記は法定の2週間を大きく超えて8月3日に登記されてます
これが許されるなら、これぞまさに「日刊新聞法ならではの特典」ということになります。(が、条文を素直に読むだけでは、そうは読めないですよねえ・・・。)
その定款変更を決議した株主総会までは、早稲田の奥島孝康総長が社外監査役で、総会に提出される議案の適法性も当然、監査されてらっしゃったでしょうから、かなり強力な「お墨付き」が付いているとも思われますが、ただ、ので、法務局でも、この定款の定めの適法性についてモメたのかも知れません。
(「ただの登記し忘れ」(登記義務違反)、かも知れませんが。)
(追記9/25:コメント欄でご指摘いただきましたが、これは会社法139条1項ただし書で可能と読めるかと思います。レベルの低い間違いで申し訳ありません。ということは、1ヶ月も経って登記しているというのは、単なる登記し忘れ、でしょうか?)
株式会社産業経済新聞社
(株式の譲渡制限)
第8条 当会社の株式は取締役会の承認をえないで譲渡することができない。
ダイヤモンド誌の記事では、日本新聞協会に加盟する九割以上の新聞社が日刊新聞法の譲渡制限を定めているように書かれていますが、産経新聞社は普通の会社法の譲渡制限しかつけてないわけです。
(というか、産経新聞の大株主は、フジテレビなど、ほとんど新聞事業に直接関係しなさそうな法人ばかり。)
株式会社毎日新聞社
第10条(株式の譲渡制限に関する規定)
当会社の株式の譲渡または取得については、株主または取得者は取締役会の承認を受けなければならない。
毎日新聞社も普通の譲渡制限ですね。
ダイヤモンド誌には、「そもそも毎日の大株主には銀行も名を連ねている。誰にでも株式譲渡できるわけではないだろうが、外資系メディアやIT系企業が名乗りを上げても不思議ではない。」とありますが、そもそも毎日新聞社は日刊新聞法を利用していないので、銀行だろうがIT企業だろうが、取締役会が決めれば株主になれるということではないかと思います。
読売新聞グループ本社は有価証券報告書が見当たらないので、登記簿を見てみると、
株式会社読売新聞グループ本社
1 .当会社の株式を譲渡するときは、取締役会の承認を得なければならない。この場合において、取締役会は、譲受人が当会社の事業に関係のある者であるときに限り、承認することができる。
2 .前項の譲受人が当会社の事業に関係のない者となったときは、すみやかにその株式を当会社の指定する当会社の事業に関係のある者に譲渡しなければならない。
と、日経と同じく、「会社法の譲渡制限の要件に加えて、取締役会の判断の制約を加重するもの」という位置づけにされてらっしゃるようです。
日刊新聞法の存在意義は?(その2)
朝日新聞は、「日刊新聞法は、会社法の(取締役会でなければ譲渡承認が行えないという)制約を取り払うものだ。」と解釈されているということでしょうから、日刊新聞法の存在意義を一番感じてらっしゃるのは朝日新聞さんでしょうね。
(9/25削除)
以上のように考えてくると、定款で経営陣の判断を縛るというのは、新聞の中立性を保つ効果があるんでしょうか?経営陣が中立性を保つために株主を選ぶ判断能力があると信頼するならば、普通の譲渡制限で十分だという気がします。
別の観点から見れば、、日刊新聞法というのは、「中立性」という美しい名の下に、経営に関与しない創業家が経営陣を拘束し、支配権を維持するための規定のように見えます。
(授権枠の範囲内であっても、第三者からのファイナンス等も禁止される。)
「事業関係者」といった獏とした文言で譲渡を制限しようというのは難しい面がありそうですが、
朝日新聞社の定款を見てみると、第一条には、
第一条 (理念) 本会社は村山龍平、上野理一創業の精神に基いて、新聞の公器としての性格を高揚し、その社会的、文化的使命の達成をめざす。
と書いてあります。
個人名が定款の主要部分に書いてある会社というのは非常に珍しいですね。
そもそも、普通の日本語で考えた場合、創業家だからといって「事業に関係ある」かというと、必ずしも関係あるとは言えないのではないかと。うがった見方をすれば、この第一条に個人名が記載されているというのは、「創業家の株主は事業関係者に該当」し、ある日突然、経営陣の気まぐれで、「あんた株主やめてね」と言われないように、日刊新聞法の下での法的安定性を高めるための規定にも見えます。
また、(「社主」というのは、当然、会社法上の概念ではないので)、かねてから、「社主って何じゃろ?」と不思議に思っていたんですが、朝日新聞社の定款には、株主総会や監査役会といった機関とは別に章を立てて、社主について規定しています。
第六章 社 主
第三十四条(社主の数)本会社に社主二名を置く。
第三十五条(社主の地位)本会社は村山龍平、上野理一創業の栄誉並に創業者と本会社との関係を保持するため村山長挙、上野精一を社主と定め、爾後その相続人よりそれぞれ一名その地位を継承する。
第一条だけでは、経営者に「創業者の子孫だからといって事業関係者とは限らない」とされてしまう危険が無きにしもあらずですが、この第六章の規定があれば、少なくとも大株主2名は、「あんた事業関係者に該当しないから株主やめてね」と突然言われる法的リスクは無くなる、という効果があるかと思います。
逆に言うと、この規定には、「社主はどういう権利義務を持つか」ということは一切書かれていないので、社主を置くことの法的効果というのは、日刊新聞法上の「事業関係者」であることの明確化、という意味しかないようにも見えます。
(支配権の維持という目的を考えなければ、日刊新聞法なんか使わないで普通の会社法の譲渡制限だけにすれば、「あんた株主やめて」と突然言われるリスクがなくなってすっきり、じゃないかと思いますけど。)
朝日新聞社の相続税問題
各社の大株主構成を見ると、(読売新聞は有価証券報告書も帝国データ等にも大株主を開示されてないようで不明ですが)、創業家の個人株主の大株主に最も株が集中しているのが朝日新聞ということになるかと思います。
ダイヤモンド誌では、
注目は、八六歳の高齢である社主の村山美知子氏の保有分の行方。甥っ子の村山恭平氏が相続する事態ともなれば、株式を時価評価して相続税を試算すると、その額は数千億円にも上るとされている。こんな金額を捻出できるはずはなく、そうなれば株式を物納するしか方法はない。
と書いてありますが、「ほんとかしらん?」という感じ。
試しに、朝日新聞社の相続税法上の株価をざっくり試算してみました。
類似業種比準方式の要素のうち、含み益を含めた1株あたり純資産価額を連結の1株あたり純資産のさらに倍程度(不動産等で3000億円規模の含みがある)と仮定しても、村山美知子氏持分は500億円前後にしかならないので、その5割を相続税でもっていかれるとしても、とても、ダイヤモンド誌が言う「数千億円」まではいかない気がします。
朝日新聞社の収益力とキャッシュポジションを考えれば、「こんな金額を捻出できるはずはなく」ということもないし、「物納するしか方法はない」こともなく、いかようにでも相続対策スキームは組めるかと。
つまり、創業家の相続のみの要因で朝日新聞社が苦境に陥るとか、「事業関係者」の範囲を広げないと資本政策が組めない、ということにはならないのではないかと思われます。
(注:比準要素のうち、1株あたり純資産が類似業種比で異様にデカいわけですが、それに比べると、利益や配当の類似業種比はかなり低いので、その分が”食われ”て、一般的な時価の算定方法であるDCF法や純資産価額方式等よりはかなり株価が下がると考えられます。検算もしてないので、間違っていたらすみません。
有価証券報告書によると、朝日新聞社の平成19年3月末の数値は、
資本金 6.5億円
株式数 3,200,000株
1株あたり配当 60円(中間+期末)
1株あたり利益 1,217.17円(単体)
1株あたり純資産 95,291.28円(連結)
[配当、利益、純資産はいずれも、資本金等の額を50円換算する前の値]
村山美知子氏の保有分は1,166千株(36.46%)
ですので、お手すきの方は検算いただければ幸いです。)
日経新聞の持株会規定の有効性
高杉良氏が日経新聞社株を1株7360円で譲り受けようとしたのに、結局、持株会に1株100円で譲渡させられた、とのことで、これもダイヤモンド誌によると、「持株会では、一株一〇〇円で譲渡すると定めている。」とのこと。
相続税は、税負担力も考えたマイルドな評価額になるように配慮されているわけですが、連結一株あたり純資産が10,226円、一株利益が1,056円もある株式が、たった100円(昔で言うところの”額面”)で召し上げられる、というのは、あまりにムゴくないでしょうか?
実は、これは類似のケースの最高裁の判例(平成7.4.25)が存在します。
譲渡制限会社において、従業員持株制度に基づいて取得した株式を退職時に額面額で取締役会の指定する者に譲渡する旨の会社と従業員間の合意は、従業員が、右制度の趣旨、内容を了解したうえで株式を額面額で取得し、毎年八ないし三〇パーセントの割合による配当を受けていた等の事実関係の下では商法204条1項に違反するものでもなく、公序良俗にも反しない。
日経新聞の持株会でも、100円で譲り受けた株から毎年約20円も配当を受けていたわけですから、それを7千円で売却しようというのは、確かにオコガマシイかも知れませんね。
贈与税はかからないのか?
一方、税務上は、個人が個人株主から低額譲渡を受けた場合、時価と譲受額の差に対して贈与税が課せられるはずです。
ただし、時価と100倍(1株あたり1万円)くらい差があっても、社員数が多いため1人あたりが譲り受ける株数が少なければ、贈与税の基礎控除額110万円に達しないから申告不要なことがほとんど、なのかも知れません。
(ただし、今後、団塊のおじさまたちが大量に退職しはじめると、申告が必要になるケースが生まれる可能性も増えるのではないかと思います。)
所得税はかからないのか?
所得税法上、個人が個人に譲渡した場合は、単純に譲渡額と取得額の差に所得税が課せられますので、買値も売値も「額面」であれば、差額はゼロとなり課税されないのではないかと思います。
まとめ
今後、(「勝ち組3社」はともかく)、一般の新聞社の収益が不安定化してくると、日刊新聞法の規定は、部外者からのファイナンスの機会を失わせたり、(経営陣が「事業関係者」の範囲を緩めに解釈しなおしたりすると)株式の譲渡の法的安定性を損なう可能性があり、かえって新聞社の足かせになってくるんじゃないでしょうか。
前述のとおり、この法律で、新聞社の中立性が保たれるということは、あまり無いように思えますので。
(ではまた。)
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新聞没落
『週刊ダイヤモンド』の特集、『新聞没落』を読みました。
インターネットの普及で、若い人を中心に新聞を購入しない人が増えているそうです。
日本だけが、そうだ…
私も最近、日刊新聞法という特別法が存在することを知りました。
この法律や、日経新聞の株式問題については、
「新聞の時代錯誤—朽ちる第四権力」(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492222774/)という本に、詳しく書かれています。
この本の著者は、日経新聞元記者で、株主として経営陣の責任追及などをした方だそうです。
ご紹介ありがとうございます。
早速、Amazonで購入してみました。
取り急ぎ、御礼まで。
> 通常の取締役会設置会社では、株式の譲渡は社長だけでは承認できず取締役会で行わなければならないわけですが(会社法139条1項かっこ書)、朝日新聞社では、代表取締役が承認するように、会社法で決まっている原則規定を(都合のいいように)緩めているわけです。
>
> これが許されるなら、これぞまさに「日刊新聞法ならではの特典」ということになります。(が、条文を素直に読むだけでは、そうは読めないですよねえ・・・。)
これって単に会社法139条1項但書でいける話じゃないんでしょうか。
(あら、ほんとだ。)
レベルの低い勘違いで、大変失礼いたしました。
自分の使っている@nifty“ココログ”がトラックバックにトラブルを抱えているようで、isologueに受け付けてもらえなかったようです。(SPAM扱いで弾かれたのかも?)
それはさておき、週刊ダイヤモンド誌の「新聞没落」が地方紙「中国新聞」のブログでチラッと触れられていたのとisologueで取り上げられていたので、
中国新聞「朝刊探索」2007-09-18
http://blog.chugoku-np.co.jp/fureai3/?date=20070918
にネタとして投稿できました。ありがとうございます。
たびたびお邪魔します。
>投下資本回収の機会を一般の会社法を超えて制限する
ものではなく、取締役会の権限を縛るものでしかない
としたら、一般の会社が日刊新聞法的な事業関係者に
しか譲渡できないという規定を定款に置いたとしても
有効な気もしますが、どうでしょうか?
取締役会の権限を縛る(『たとえ取締役会が「OK」と
言ったとしても、高杉氏がもし「事業関係者」に該当する
と解されないのであれば高杉氏は株主になれないはず
で。』)となると、単に株式譲渡を会社(取会、代取等)の
承認に服させる会社法(108条2項4号)に比べると、
株式を譲渡できる相手が減ってしまう可能性があります。
取締役会がO.K.といっても、ダメ、なわけですから。
これは、会社法規制より、投下資本回収の途を狭める
可能性があり、日刊新聞法1条という特則があって初めて
認められる株式譲渡制限のあり方と思われます。
ただ実際には、会社法(108条2項4号)の会社の承認は非常に
排他的に運用されるという前提に立てば、少なくとも
「事業に関係がある者」への譲渡は、経営陣が気に食わ
ない譲渡先であっても否定できないことになる日刊新聞法
1条の方が緩い規制、ということになりそうです。
この実情を重視すれば、『一般の会社が日刊新聞法的な事
業関係者にしか譲渡できないという規定を定款に置いたと
しても有効』という考え方もありかなとも思います。
>逆に日刊新聞法の下で定款に規定を入れているからとい
って、取締役会は事業関係者に該当すれば必ず譲渡を承
認しなければならないということでもないはずかと。
日刊新聞法1条による定款の定めだけの場合は、会社に
裁量の余地は無く、会社は株式譲渡の効果を否定できない
と思われます。
実際には、どの新聞社も会社法108条2項4号と併用か、
会社法のみ、のようですので、問題になりませんが。
日刊新聞法1条の趣旨は何なのでしょうか。経営陣を
縛って何をしたいのでしょうか。言論支配や統制に
つながる譲渡を防ぐ、ということにあるのでしょうか。
日刊新聞法1条の特則のような規定を、新聞社に限らず
認める立法措置が講じられれば、敵対的買収防衛策もやり
やすくなりそうですが。逆に言えば、新聞社に限って
立法措置が講じられているということは、敵対的買収防衛
策が容易ではないことに通じそうです。
コメントありがとうございます。
>単に株式譲渡を会社(取会、代取等)の承認に服させる会社法(108条2項4号)に比べると、
なるほど、日刊新聞法1条は「公開会社」であっても使えると読むんですね。これは「譲渡の制限」ではあるけど、108条の意味における、いわゆる「譲渡制限」ではないわけですね。
>新聞社に限って立法措置が講じられているということは、敵対的買収防衛策が容易ではないことに通じそうです。
ま、戦後すぐにできた法律ですから、そこまで(現在の意味での買収防衛策まで)は考えていなかったのではないかと。
確か、いわゆる「譲渡制限」も、昭和40年代に入ってから導入された(比較的新しい?)規定だったかと思います。
(ではまた。)
>なるほど、日刊新聞法1条は「公開会社」であっても使えると読むんですね。
すいません、上の私のコメントは混乱してますね。
公開会社があっても使えるという前提を暗黙に置きながら、磯崎さんの非公開会社の事例を引用していますし。
>これは「譲渡の制限」ではあるけど、108条の意味における、いわゆる「譲渡制限」ではないわけですね。
確かに会社法は承認機関を置くという制限態様で、日刊新聞法は有無を言わさぬ「譲渡の制限」で、異質な態様の規制であり、どちらが厳しいか緩いのかの比較は難しそうです。そういう視点に気付かせ頂きありがとうございました。
非公開化してしまった会社(107条1項1号)が、
さらに日刊新聞法1条の内容の規定を置くと、上のコメントのように、取締役会がO.K.といっても、ダメ、なケースが出てくるので、より譲渡を困難にしまうので、日刊新聞法があって始めて許されるのかと思います。
公開会社が、
日刊新聞法1条に基づく定めを置く場合はどうかというと、会社法の譲渡制限と日刊新聞法1条の譲渡の制限の厳緩の比較が直接問われることになりますが、
旧商法の注釈会社法を見ると、「株主の資格を、日本人、会社の従業員など一定の者に限定したり…法定の方法によらないで株式譲渡を困難にする定款の定めも無効である」とあり、
やはり日刊新聞法の制定があって初めて可能になる定款規定のようです。
お邪魔しました。
[ニュース][日記・コラム・つぶやき]“週刊ダイヤモンド”「新聞没落」を読む
時間が取れたらブログ担当者さんの課題図書(?)“週刊ビジネス誌”「新聞没落」を入手できたので記事について何か書ければいいなと思い…